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今ほどICカード式乗車券が浸透していなかったころ、電車に乗るときは切符を購入する必要があった。そこに印字された4けたの数字が、ぞろ目であったり、区切りのよいものであったりすると、うれしい気持ちになる。ましてや誕生日と同じであれば、ついつい人に見せたくなってしまうものだ。四則演算(+−×÷)でぴったり「10」にするという“勝負”をしながら、目的の駅までの時間をつぶす人もいただろう。
ある数を思い浮かべてほしい。そして次の2つのルールを繰り返し当てはめていく。
- 偶数なら2で割る。
- 奇数なら3を掛けて1を足す。
初めにどんな数を思いついたとしても「1」にたどり着くようである。「ようである」と歯切れの悪い表現になるのは、「きっとそうなのだろう」と多くの数学者は考えているものの、その証明はまだなされていないからだ。
これは「コラッツ=シラキュース=ウラム問題」と呼ばれていて、問題が簡単でも解くのが簡単だとは限らない良い例といえる。あっという間に1に収束する数もあれば、100ステップ以上が必要なものもある。ちなみに、「63,728,127」をためしてほしい。949回もの計算でようやく1なる。
気候を研究する科学者は「この先、地球の気温はどうなるのか」という問いに対して、数学的な解析を行っている。それを受け、人間の活動によって生じた二酸化炭素の量が増加することによって、気温が上昇していると考えられる、との見通しが報じられた。
しかし、その“結論”を否定する科学者が全くいないわけではなく、彼らの意見に耳を傾けた英国のドキュメンタリー番組『地球温暖化詐欺』についての考察も取り上げられている。
二酸化炭素の増減と、気温の上昇・下降のグラフは、微妙にずれている。そして、常に気温の方が先に変化しているように見える。「地球温暖化の原因は何か」という、おそらく複合的な要因を挙げざるを得ないと想像できる命題に対する考察の難しさを、著者は冷静に述べている。それは、時に分析は人間の直感に反することもあるため「言葉を使った幼稚な議論ではなく、数学を使わなければならない」という表現で締めくくられる。
本書に収められている数学トピックスは実に170話以上。定番のマッチ棒パズルや、日本で発展した「そろばん」、そして小川洋子氏のベストセラー小説『博士の愛した数式』にも登場した「友愛数」もある。気軽にどこからでも読める、まさにお楽しみの詰まった数学の宝箱である。
そうは言われても、数学には馴染めないなあ…という方には、アインシュタインのつぶやきを贈りたい。
「数学が苦手でも心配するな。きっと私の方がもっと苦手だ」