レポート

科学のおすすめ本ー 「理科力をきたえるQ&A」-きちんと答えられる大人になるための基礎知識

2010.01.08

推薦者/サイエンスポータル編集

『理科力をきたえるQ&A』-きちんと答えられる大人になるための基礎知識
 ISBN: 978-4-7973-4987-0
 定 価: 952円+税
 著 者: 佐藤勝昭 氏
 発 行: ソフトバンククリエイティブ
 頁: 222頁
 出版日: 2009年12月24日

 「子どもあるいは若者の理科離れ」が叫ばれているが、いい年をした大人の科学知識の欠如の方が問題ではないか、という指摘がある。科学技術立国を掲げるにはまず大人が子どもたちの手本にならなければ。そんな“日本の課題”にぴったりの本と言えそうだ。

 本の作り方からしてユニークである。約110の問いは、子どもたちから実際に寄せられた386もの質問からを選ばれた。それらの答えを直接、子どもたちに返すのではなく、大人たちに答え方を教えるという目的で書かれている。筆者が1人で質問の選択をして、ひとりで答えを書いた。さらにイラストもすべて筆者の手になるという同種の本は前例がないか、極めて珍しいのではないだろうか。工学者であると共に洋画家でもある筆者ならではの仕事といえる。

 もともと質問の数が少なかったということだが、宇宙や地球についての項目が最小限でそれも最後に置かれているのも構成としては、よかったのではないか。同じように工学に比べ明快な説明が難しいところのある医学や生物関係の問いがばっさり削られているのも、本の目的を考えると一つの方法だろう。何でもかんでも名快かつ分かりやすく答えられる大人など研究者でもほとんどいないわけだから。

 第1章を「キッチンのふしぎ」として、電子レンジや冷蔵庫の仕組みの解説から、燃焼という現象について説明している。これなら家庭で親子の会話も弾みそうだ。次に身近にたくさんあり、歴史的にも古くから人間の生活に欠かせない金属を取り上げているのも納得できる。使い捨てカイロは金属がさびるという現象を利用しているといったコラムが、さりげなく挟んであるのも巧みな構成だ。

 その後、磁気、光と色、電気と抽象的でなかなか手強い物理、化学現象に進み、最近、急激に職場、家庭に入り込んできたデジタル映像機器、携帯電話、パソコン、ICカードの便利さの秘密が分かりやすく説明されている。毎日のように世話になっている電子機器に一層親近感を抱く読者も多いのではないだろうか。

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