レポート

科学のおすすめ本ー 研究資金獲得法

2009.04.23

推薦者/サイエンスポータル編集

研究資金獲得法
 ISBN: 978-4-621-08050-4
 定 価: 1,900円+税
 著 者: 塩満典子、室伏きみ子
 発 行: 丸善
 頁: 167頁
 発行日: 2008年11月30日

研究者は研究資金がなければ成り立たない職業だ。平成20年版科学技術白書によると、2006年の日本の研究費総額は18兆5,000億円。米国の42兆8,000億円には水を開けられているものの欧州各国や、最近、伸びが著しい中国を上回る。日本の研究費総額のうち政府の負担分は3兆5,000億円だが、近年の特徴的なことの一つが、競争的研究資金の占める割合が年々伸びていることだ。

この競争的研究資金は2008年度予算で約4,800億円。100年に一度という経済危機の中で、各国とも研究開発重視の動きが目立っており、日本の競争的研究資金も今年度、さらに伸びることが必至の情勢だ。政府にとって応募の中から将来、大きな成果を生み出す可能性のある研究計画を選び出し、研究資金を投じるかが大きな課題となっている。研究者から見れば、競争的資金を得ることのできた研究者とそうでない研究者との差がますます顕著になるということだ。

本書の著者は、科学技術振興事業団(現・科学技術振興機構)国際室調査役として競争的研究資金の研究計画を採択する仕事を経験したことがある塩満典子・お茶の水女子大学教授・学長特別補佐と、競争的資金を得ることで「遺伝カウンセリングコース」という新しい分野の人材育成プログラムなどを築き上げた実績を持つ室伏きみ子・お茶の水女子大学大学院教授の2人。これまで競争的研究資金に応募したことがない研究者や、応募したことがあってもやりかたがまずく採択されなかった研究者たちを想定して書かれているだけに、「どのような資金がいくらあるか」など親切でわかりやすい内容となっている。

ただし、研究資金を得るためにやるべきことを挙げた助言は、決してやさしいとは言えない。「自分の研究業績と分野内の位置づけを考える」「研究構想・計画のビジョンを明確にする」といった基本的事柄から、「過去の審査委員構成と先行例を分析する」「審査委員をイメージしながら、ビジュアルに応募書類を書く」など、普通の研究者ではなかなか気が回らないと思われることまで子細に提言している。

一方、「コネがないと採択されにくいのか」「面接の時の服装は」といった“素朴”な質問に答えるコラム欄や、競争的研究資金を得たことでいろいろな成果を挙げることができた企業や大学の経験者たちのインタビューを随所に織り込み、これまで競争的研究資金に縁の薄かった人たちを勇気づけ、具体的なイメージを植え付ける工夫も凝らしている。

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