レポート

「総合科学技術会議 第7回基本政策推進専門調査会」

2008.01.31

立花浩司 氏 / NPO法人サイエンス・コミュニケーション会員

立花浩司 氏

 総合科学技術会議「第7回基本政策推進専門調査会」が、1月29日、東京霞が関の中央合同庁舎4号館で開催されました。今回の主な議題は、来年度の科学技術関連施策について。さらに来年度科学技術関連施策に関連した話題として、基本政策推進専門調査会の下に設置された地域科学技術施策ワーキンググループおよびiPS細胞研究ワーキンググループについて、さらに科学技術外交の強化に関する中間とりまとめについても議論されました。

 来年度の科学技術関連施策は、以下の3つがポイントとして挙げられました。

社会還元加速プロジェクトの開始

 社会還元加速プロジェクトとは、「官民の協力の下、異分野の技術を融合し、かつ、システム改革を伴う実証研究として総合科学技術会議が主体的に進めていく先駆的モデル」と定義されているもので、「イノベーション25」に掲げられている社会を実現していくために組まれるプロジェクトです。失われた人体機能を再生する医療の実現(文科省「再生医療の実現化プロジェクト」ほか)、きめ細かい災害情報を国民一人ひとりに届けるとともに災害対応に役立つ情報通信システムの構築(文科省「地震・津波観測監視システム」ほか)など、計6つの施策が選定されています。

未来を担う若手研究者の育成

 文科省「グローバルCOEプログラム」による、世界最高水準の研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材の育成、学振「特別研究員」事業による、優れた研究能力を有する博士課程学生やポスドクに対する能力支援などを挙げています。先般、京大に設置されたiPS細胞研究センターにおいても、埋もれた若手人材の発掘・育成が謳われていますし、JSTさきがけなどとも合わせ、さまざまな形で支援をしていくことが強調されていました。

科学技術外交の強化

 これまで、外交における科学技術の果たす役割が必ずしも明確でなかったとともに、科学技術を推進するための外交についても十分な取組みが行われてきたとは言いがたいという現状認識のもと、「人」を中心に相手国と一緒に考える科学技術外交を具体的かつ戦略的に進めていこうとするものです。今回示された「中間とりまとめ(案)」では、新型インフルエンザの発生のように、世界から非難されないような対応を講じるべきことや、希少金属の確保のように、産業競争力を他国に締め付けられる方向にあるものについて、積極的に進める方向と守らなければならない方向の両方の視点から考えるべきことなど、さまざまな意見交換がなされました。

 地域科学技術施策ワーキンググループは、地域のイノベーション創出のために戦略を策定することをミッションに掲げて設置されました。また、iPS細胞研究ワーキンググループは、包括的なiPS細胞研究の進め方や研究体制の整備について等、iPS細胞研究を円滑に進めるための環境づくりを行っていくことをミッションとしています。

 わずか2時間の間に、非常に盛りだくさんの重要な議題が詰め込まれただけに、参加された専門委員の方々が発言し、議論するには必ずしも時間は十分とはいえなかったようです。タイムスケジュールの都合で発言できなかった意見等については追って会長あてメールで、という話でした。最終的には会長が意見を取りまとめ、本会議に諮るというフローになっています。

 出席者は、以下のとおりでした。

<総合科学技術会議議員>
相澤益男(会長)、薬師寺泰蔵、本庶佑、奥村直樹、石倉洋子
<専門委員>
青木初男、荒川泰彦、貝沼圭二、垣添忠生、北城恪太郎、小舘香椎子、桜井正光、田中明彦、田中耕一、谷口一郎、戸塚洋二、中西重忠、中西準子、中西友子、原早苗、毛利衛、森重文、若杉隆平(敬称略)
※その他、大臣官房審議官、内閣府政策統括官および内閣府参事官が出席されています。

  • イノベーション25(内閣府)
  • 再生医療の実現化プロジェクト(文部科学省)
  • グローバルCOEプログラム(日本学術振興会)
  • 特別研究員(日本学術振興会)
  • 総合科学技術会議 基本政策推進専門調査会(内閣府)
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立花浩司 氏
(たちばな こうじ)

立花浩司(たちばな こうじ) 氏 プロフィール
大学卒業後、食品会社を経て研究支援企業に勤務。バックグラウンドは生物化学。現在の担当業務は新事業開発。
最近のもっぱらの関心事は、サイエンスカフェ(とくに非研究者の市民が主体となって運営しているものに対する関心が高い)。一般市民と研究者とのコミュニケーションに関心をもった動機は、今までの職務経験が強く影響している。
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット2期修了生
「科学ひろば」サイエンスカフェ運営メンバー
「サイエンスカフェを考える会」発起人
NPO法人サイエンス・コミュニケーション会員

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