レポート

科学のおすすめ本ー 光できらめく理系女性たち-理想のワークライフバランスを目指して-

2007.09.19

島田純子 / 推薦者/科学技術振興機構)

光できらめく理系女性たち-理想のワークライフバランスを目指して-
 ISBN: ISBN978-4-902312-24-9
 定 価: 本体 1,800円+税
 監 修: 小舘香椎子 氏
 発 行: オプトロニクス社
 頁: 350頁
 出版日: 2007年8月12日

 ここ数年、日本の科学技術の将来の発展や、国際競争力の維持・強化には、女性の研究者、若い研究者などの、多様な人材が育ち活躍できる社会を創ることが重要であるということが、行政においても産業界や学界においても、認識されてきている。

 そして、多様な人材が活躍できる社会をつくることの、キーワードの1つが、「ワークライフバランス(仕事と家庭の調査)」である。ワークライフバランスとは、「男女ともに人生の各段階において、仕事、家庭生活、個人の自己啓発等、様々な活動を自らの希望に沿って展開できること」である。

 本書の副題には「理想のワークライフバランスを目指して」と掲げられている。ある人にとって理想とするワークライフバランスは、その個人の価値観によるが、本書には多くの理系女性のキャリア形成過程が紹介されており、自らのキャリアと生活について考える際の参考となるであろう。

 理系女性の国や企業の女性研究者支援策の現状紹介、理系でキャリアを積んできた、もしくは積みつつある女性のキャリア形成過程の紹介、女子大学で学んだ理系女性のアンケート調査結果など、幅広く理系女性を巡る状況の紹介が記載されているが、多くの執筆者によりいろいろな視点から記述されているのも特徴である。

 全体は、4部構成。
第1部では、理系女性が活躍するよう支援を行っている、行政、産業界、学界の人々から、それぞれが関与している施策について紹介されている。

 第2部では、理系に進み、理系分野で活躍している女性たち自身から、どのようなきっかけで理系に進んだか、研究・仕事・私生活においてどのような生活を送っているか、育児・介護との両立にいかに取り組んでいるか、取り組んできたかが書かれている。研究者になった人だけでなく、理系の知識を生かした仕事に就いている人からの紹介もあり、大学で理系を学んだとしても、将来の道は研究者のみではなく、多様なキャリアパスがあることも示されている。

 第3部は、女性研究者・技術者の育成や支援を進めてきている、行政、産業界、学界の男性有識者からの応援メッセージである。

 第4部は、本書の監修者である小舘香椎子教授が主催している、日本女子大学の小舘研究室卒業生(1963年〜2006年)を対象としたアンケート調査結果が掲載されている。女子大学および理系研究室で学んだ意味、大学卒業後の進路、私生活と仕事との両立の状況などについて、データが示されている。このアンケート調査結果からは、女性が多様な価値観を持って、様々なキャリアを経験し、多様な働き方をしていることが伺える。

 理系で学ぶことや理系のキャリアについて興味を持つ人に、特に高校生や大学生、さらにすでに社会で活躍している人に、ぜひ一読をお薦めしたい。情報は多いが読みやすく、興味をもつ部分を拾い読みするだけでも役立つと思われる。

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