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温暖化対策へ期待大きい日本の科学技術(山内順一 氏 / 電子技術コンサルタント)

2009.07.22

山内順一 氏 / 電子技術コンサルタント

電子技術コンサルタント 山内順一 氏
山内順一 氏

 イタリア・ラクイラで開かれた主要8カ国(G8)首脳会議では、地球温暖化対策が予想通り大きなテーマとなった。日本政府の姿勢は不十分と受け取られているような報道も見られた。しかしながら、二酸化炭素(CO2)削減の技術的な貢献で、これまで日本の果たしてきた役割は大きく、また今後、ますます大きくなる。CO2削減を解決する技術については、21世紀の文化と技術の進歩を停滞させることなく、人類が平和で幸せになるような偉大な3大発明がこの国にあることを若い世代に知らせていきたい。

 まず、照明分野について見ると赤・青・緑色の半導体レーザーでは、かの中村修二博士が先頭を走っている。文明社会、先進国社会では、家庭とあらゆる事務所で夕方・夜間に室内で照明が点灯され、その大本の発電所では大量のCO2が排出されている。本来自然体の人間は太陽光の下で発生し、発達し、生存して来た。しかし現代社会では書物や細かい構成物を見るためにどうしても照明が必要である。見る対象物は文明社会の生成物・人工物であるが、照明には太陽光に近い光源を使用している。これがCO2の増大と省エネの困難をもたらしている。

 今、ここに波長620ナノメートル(nm)の赤色半導体レーザーがあり、単三電池1個で十分明るく発光する、この光線をガラス玉などで乱反射させると暗闇で新聞が読める。いつまでたっても電池は劣化せず、交換の必要がない。白熱灯の豆電球でも照明機能は同様であるが、電池の寿命ははるかに短くなる。太陽光では、100nm以下の超紫外線から480nmの青色、530nmの緑色、620nmの赤色、さらに赤外線と光の波長が、ほぼ連続している。これに対し人工のレーザー光線は、480nmの青紫、530nmの緑、620nmの赤など波長はほぼ一定(精密にはわずかな帯域を持つ)である。自然物としての人間の目(網膜)は人工のレーザー光線には極めて高い感度で反応し、低い輝度の明るさでも字が読める。

 さらに光の波動では、その振動方向が太陽光は進行方向に対して直角、すべての方向に振動しているが、人工のレーザー光線では垂直または水平の限られた方向のみに振動(偏光)し、これも太陽光に育てられた人間の目には刺激が強くなっている。従って輝度の低い照明でも、書物や構造物がはっきり見え、結果的にCO2排出量の削減が可能になる。文明社会、先進国社会が見ることを必要とする対象物、人工物は、人工の半導体レーザーで観察する方がよい。

 中村修二博士は今、赤・青・緑色の半導体レーザーを完成して、レーザー光による人工白色光を実現しようとしている。人工白色光を世界中で使用すれば、大雑把に計算しても、現在世界が照明に消費している化石燃料(発電所換算電気量)は3分の1で済ますことができる。先進各国がCO2削減と温暖化防止にやっきになっている目標達成は一気に可能となり、余りを発展途上国に分配できる。

 次に、発電機と電動モーターについて言えば、ネオジウム永久磁石は発明者の佐川眞人博士が世界のトップである。鉄を主材料とする永久磁石はおおよそ比重が7.85であるのに対し、ネオジウム永久磁石は7.00。鉄の磁束本数(密度)が鉛筆程度の太さの鉄棒で10本と仮定すると、大まかに言えばネオジウム永久磁石の磁束本数(密度)は鉄の3倍の30本となる。発電機が発生する電圧(電気量としてもいい)は、発電用コイル(細い銅線の束)を単位時間に横切る磁束本数(密度)に比例する。従ってネオジウム永久磁石を使用する発電機では、鉄が主材料の永久磁石に比べて大きな電力を発生できる。世界にあるすべての発電機 (化石燃料からの熱力で駆動される) の永久磁石をネオジウム永久磁石に変更すればそのままの構成で、同じ量の化石燃料でも、これらが加算されて発電能力を大幅に向上させることができる。逆に同一発電量を得るためには、現在消費している化石燃料を大幅に削減した量で済ますことができる。

 また電動モーターに使用される永久磁石では、回転反発力を得るために強い磁場が必要だが、鉄主材料の永久磁石をネオジウム永久磁石と交換すれば、同じ大きさで3倍の反発力を得ることができる。同じ反発力を得るためには、現在の体積の3分の1で済む。

 この軽量化をパソコン用、家電用、産業用、自動車、電車、船、航空機など世界のすべての電動モーターに適応すれば、先進各国がやっきになっているCO2削減目標は、同様に一気に達成可能となり、余りを発展途上国に分配できる。

 さらに、今後あらゆる電動モーター駆動に必須となるリチウムイオン2次電池の発明者は、吉野彰博士である。世界各国は、特に交通手段の主流である自動車を電気自動車に変換することで、化石燃料の消費量を大幅に減少しようとしている。電気自動車の電源となる電池には、リチウムイオン2次電池が軽くて、小型で起電力も大きく、かつ安全と最適である。

 電気自動車については、世界同時の技術革新が始動しているが、車の照明には中村発明の赤・青・緑色の半導体レーザーを、駆動モーターと発電機には佐川発明のネオジウム永久磁石を、これらの電源には吉野発明のリチウムイオン2次電池使用することで、日本はこの宇宙船地球号を、住みよい世界であり続けることに大いに貢献できる。

電子技術コンサルタント 山内順一 氏
山内順一 氏
(やまうち じゅんいち)

山内順一(やまうち じゅんいち) 氏のプロフィール
1965年神戸大学理学部卒、印刷企業で多色印刷技術に従事、69年多色印刷系国際企業で米ニューヨークに勤務、71年帰国後、精密機械輸入商社に勤務、86年から電子技術コンサルタント業に。画像解析機装置開発、電子制御・インターネット系特許出願多数、立体映像を共同開発して商品化、03年知的財産部・開発顧問(オリンパス系企業)、東京電機大学、千葉大学のTLOなどを経て、09年からデジタルハリウッド大学産学官連携センターコーディネーター

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