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国際基督教大学(ICU)の教学改革(日比谷潤子 氏 / 国際基督教大学・教学改革本部長)

2007.11.14

日比谷潤子 氏 / 国際基督教大学・教学改革本部長

国際基督教大学・教学改革本部長 日比谷潤子 氏
日比谷潤子 氏

 ICUは日本で唯一の本格的リベラルアーツ大学として、1953年の開学以来、「神と人に奉仕する」人材を育成することを使命に、2万人近い卒業生を送り出してきた。その教育目標は、学問分野間の境界を超えた知識の修得、思考力・判断力の体得、一般的及び専門的能力の統合的発展にある。学生が広い視野に立ち、自立的に学修の方向を選択することを重視する教育により、どちらかと言うと専門教育に重きを置く傾向の強い日本の高等教育界にあって、独自の立場を維持してきたと言えよう。その取り組みは幸いなことに、学生からも支持され、ベネッセ教育総研による「全国大学満足度調査」では、1997年、2001年、2004年の3回連続して総合満足度1位となった。本学では、このような特色をより一層深化させるため、2008年4月から教学改革を実施することになった。ここではその概要を述べ、リベラルアーツ教育のこれからを展望する。

 2007年度までのICU教養学部は6つの学科(人文科学科・社会科学科・理学科・語学科・教育学科・国際関係学科)に分かれ、受験生は入学試験出願時に第1志望、第2志望の学科をあらかじめ選択していた。今回の改革では、620名という教養学部全体の入学定員は変えずに、これらの学科を廃止する。したがって、1年生はすべて教養学部に入学することになる。

 大学進学者は誰しも、大学ではこの分野を専攻したい、あの分野にも触れてみたい、といった希望を抱いている。これらの分野の中には、高校までには学ぶ機会のないものも少なくない。数学や歴史などは同じ名前の科目を勉強してはいるが、高校と大学では切り口がかなり異なる。個々の分野の現実を知らずに分野を選んだ結果、折角希望の大学、学部、学科に入学したにもかかわらず、勉学を続ける意欲を失ってしまうこともあるだろう。

 今回の改革は、特定領域の専修を早期に固定せず、ゆとりを持って分野を選択するというリベラルアーツの特性を生かすことを目的としている。入学者は、まず英語教育プログラム(4月入学生)あるいは日本語教育プログラム(9月入学生)を通して、学術基礎力を身につけつつ、さまざまな分野の基礎科目を履修することになる。専門的に勉強してみたいと考える分野が複数ある場合には、いくつかの科目を受けた後に、分野の実態を知ったうえで、専修分野(メジャーと呼ばれる)を決めることができる。あらかじめ学びたいことがはっきり決まっている学生は、まずその分野の基礎科目を履修し、そこで自らの適性や興味が確認されれば、早い時期から専攻科目に進んでいくことも可能である。どのようなメジャーが用意されているかは、大学公式ウェブサイトの教学改革に関するページを参照されたい。現在は31のメジャーがあるが、個々の学生がその中からどれを専門とするかを正式に決定するのは、2年次の終わりである。

 専修分野は一つとは限らない。二つの分野を同等に組み合わせて専門として学ぶダブルメジャー、組み合わせる際に単位数の比率を変えたメジャー、マイナーという履修方法に挑戦する道も用意されている。どちらの場合も、経済学と文学、宗教学と数学といった、多くの大学では異なる学部で勉強することの多い分野を組み合わせることも可能である。

 卒業研究が必修として課されることは変わらない。1年次から積み上げてきたさまざまなスキルを生かして、メジャーの分野で(ダブルメジャーの場合はどちらか一つで)テーマを選び、大学生活最後の1年をかけて、卒業論文を作成する。

 ICUがこの教学改革を通して強化したいのは、学生一人ひとりが自分でつくるリベラルアーツカリキュラムという方向である。メジャーの選択から卒業研究のテーマ決定に至るまで、学びのプロセスを自発的・主体的に、自らの手でデザインしていくことにより、リベラルアーツのよいところが最大限に発揮されることが期待される。

国際基督教大学・教学改革本部長 日比谷潤子 氏
日比谷潤子 氏
(ひびや じゅんこ)

日比谷潤子(ひびや じゅんこ)氏のプロフィール
1980年上智大学外国語学部フランス語学科卒業、82年上智大学外国語学研究科言語学専攻修了、88年ペンシルベニア大学大学院言語学科博士課程修了、慶應義塾大学国際センター助教授を経て、2002年国際基督教大学語学科準教授、04年同教授、日本語教育課程主任、05年語学科長、06年から教学改革本部長に。94年ダートマス大学アジア研究プログラム訪問準教授、04年コロンビア大学東アジア言語・文明学科訪問教授も。専門は言語学。著書に「多言語社会と外国人の学習支援」(編著)など。

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