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ライセンスとイノベーション(岡本清秀 氏 / 日本ライセンス協会 会長)

2007.07.19

岡本清秀 氏 / 日本ライセンス協会 会長

日本ライセンス協会 会長 岡本清秀 氏
岡本清秀 氏

 20世紀後半の日本は、イノベーションそのものであったといえる。戦後、欧米の新しい技術をライセンスにより導入し、その導入技術に触発されて日本独自の革新的な技術を創出し、産業界は驚異的な成長を遂げた。しかし、近年のアジア諸国の台頭により、日本には新たな選択が求められている。

 アジアでは特に中国の成長は顕著である。中国の技術、産業、経済におけるいくつかの成長指数は世界一を示すまでになり、産学官連携は、知的財産を活用して極めて実利的になされている。米国は、革新的技術を創出することに関しては世界一の地位を失っていない。異文化、異業種、異分野との交流を受け入れてきた米国には、イノベーションを創出するシステムが整っており、イノベーションを速やかに事業化する仕組みがあり、産学官連携にスピードがある。

 産業界の大競争時代、日本の人口減少を背景に、国は知的財産を国家戦略に位置付け、産学官連携、イノベーション強化の政策を取っている。

 企業がグローバル市場で生き残るには、戦後から培ってきた世界に誇れる優れた技術はさらに強く、また、日本独自の優れた高品質の組織力を活かしながら、イノベーションの強化を図ることが要である。イノベーションの創出には、縦割りの組織の壁を破って横通しの連携を深めるとともに、国内外の組織との交流を深めることが望まれる。

 科学理論から商品技術までの研究・開発プロセスにおいて、どのプロセスで日本のイノベーション創出の強みを発揮できるかを見極め、技術移転のライセンスを通じて諸外国の機関と交流を深めてグローバルなイノベーションを創出し、共存共栄の戦略を取ることが産学官ともに必要ではないかと思う。

 日本ライセンス協会(LES Japan)は、知的財産のライセンス、技術協力等全般に関与している企業のトップマネージャー、弁護士、弁理士などの法律専門家に加えて、学界や官界などでこの分野に知識を持った650人以上の有識者などから構成され、広く世界各国で活躍する31の地域協会(85カ国)と1万人以上の会員を擁する国際ライセンス協会(LES International) の下部団体である。当協会には、世界中の主な企業や法律事務所などに所属するライセンスのプロやキーマンとのネットワークがあり、世界の技術移転がスムーズに行われるように法律、判例、実務の研究活動や教育、人的ネットワークの構築をしている。

 このように当協会は、知的財産を介して異文化、異業種、異分野の人たちとの交流を図っており、まさにイノベーションの創出や事業化に通じる国際的な組織であり、これからも日本のイノベーションの発展に少しでも貢献できれば幸いと考える。

本記事は、科学技術振興機構のオンラインジャーナル「産学官連携ジャーナル」7月号巻頭言から転載

日本ライセンス協会 会長 岡本清秀 氏
岡本清秀 氏
(おかもと きよひで)

岡本清秀(おかもと きよひで)氏のプロフィール
大阪市立大学工学部電気工学科卒業。立石電機(株)(現オムロン(株))制御本部営業を担当後、1973年から76年まで米国カリフォルニア研究開発子会社OMRON R&D Inc.で特許業務を統括。帰国後、国内外の知的財産の全ての業務を歴任。知的財産部長を経て、2006年7月から知的財産担当顧問を務めている。同年2月に日本ライセンス協会会長に就任し、現在に至る。

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