インタビュー

第3回「医療用ロボットの時代に」(田邉一成 氏 / 東京女子医科大学 教授、同病院 副院長)

2013.03.27

田邉一成 氏 / 東京女子医科大学 教授、同病院 副院長

「大きく変わる医療の姿」

田邉一成 氏(東京女子医科大学 教授、同病院 副院長)
田邉一成 氏(東京女子医科大学 教授、同病院 副院長)

国民皆保険や国民一人当たりの医療費の安さなど日本の医療の実態には優れた面が少なくない。一方、基礎研究成果を医薬品や医療機器といった実用につなげることに関しては欧米の主要国に明らかに見劣りする。IT(情報技術)やロボット技術の急速な進歩で医療の形が急速に変化すると予測する東京女子医科大学 教授、同病院 副院長 田邉一成 氏に、医療の近未来像と対応を迫られている課題について聞いた。

―外科医による開腹手術が激減するというのは、ほとんどの手術はロボットの手を借りてできるようになるということですね。

私は、なんとか日本のロボット技術を用いて、電子メーカーや大学のロボット研究者たちと一緒に国産の医療用ロボットを作ろうとしています。

―外科医による開腹手術が激減するというのは、ほとんどの手術はロボットの手を借りてできるようになるということですね。

基本的には大きな問題はないと考えています。東京工業大学精密工学研究所の 川嶋 健嗣准教授(現・東京医科歯科大学教授)が開発し、私も改良に協力している手術支援ロボット「IBIS」は、画期的な駆動システムを用いたものであり、特許の面からもほぼ問題ないと考えられます。

IBISの駆動システムは基本的には空気圧による駆動メカニズムを利用しており、基本的に小型化がかなり容易にできるシステムとなっています。企業と共同で製品化を進め何とか5年以内での実用化に向けて努力しているところです。私たち泌尿器科チームは、川嶋先生チーム、東京女子医大・早稲田大学連携大学院(Twins)チームと協力しながら実用化への研究を進めています。何しろ駆動システムが非常に小型化、簡素化できる可能性が高いため、製品化できればダヴィンチに比べて10分の1くらいの低価格で実用化し販売できるのではないかと考えています。

さらに日本を代表する電機メーカーが、医療用ロボット製造分野に参入しようとしています。現在運用されているダヴィンチも含めて、手術支援ロボットではいろいろな改良すべき点がまだまだ多いのですが、例えば3D画像などはさまざまな工夫により、より自然に見えるように試作品の改造を重ねてきています。国際医療機器見本市では3D画像について反響が大きく、既に引き合いが来ているそうです。東京工業大学の手術支援ロボット「IBIS」にこのカメラを組み合わせると、画像のゆがみがなくなり非常に良好な視野が確保できるものと考えています。

また、現在使用されている手術支援ロボットの問題点は、機器全体が非常に大型ということです。機器の駆動システムなどから、小型化はかなり困難であろうと推察されます。さらに手術ロボットの滅菌も大きな問題となります。ダヴィンチは非常に巧妙に滅菌できるような工夫がなされています。すなわち、大きな手術用アームを減菌したビニール袋で覆うという工夫をしています。

これに対し、日本で製品化が進んでいる支援手術ロボットは小型ですから、機械をそのまま滅菌器に入れ滅菌することも可能になると思われます。小型化を可能にしたのは、ダヴィンチとは違い空気圧を利用するという方式を採用しているためです。滅菌の方法も、電機メーカーが薄型テレビの開発中に得られた最新の技術を応用する予定です 。

―ダヴィンチの製造会社は特許もたくさん押さえているのでしょうね。特許の観点からも新規に開発するというのは難しくはありませんか。

基本的には大きな問題はないと考えています。東京工業大学精密工学研究所の 川嶋 健嗣准教授(現・東京医科歯科大学教授)が開発し、私も改良に協力している手術支援ロボット「IBIS」は、画期的な駆動システムを用いたものであり、特許の面からもほぼ問題ないと考えられます。

IBISの駆動システムは基本的には空気圧による駆動メカニズムを利用しており、基本的に小型化がかなり容易にできるシステムとなっています。企業と共同で製品化を進め何とか5年以内での実用化に向けて努力しているところです。私たち泌尿器科チームは、川嶋先生チーム、東京女子医大・早稲田大学連携大学院(Twins)チームと協力しながら実用化への研究を進めています。何しろ駆動システムが非常に小型化、簡素化できる可能性が高いため、製品化できればダヴィンチに比べて10分の1くらいの低価格で実用化し販売できるのではないかと考えています。

さらに日本を代表する電機メーカーが、医療用ロボット製造分野に参入しようとしています。現在運用されているダヴィンチも含めて、手術支援ロボットではいろいろな改良すべき点がまだまだ多いのですが、例えば3D画像などはさまざまな工夫により、より自然に見えるように試作品の改造を重ねてきています。国際医療機器見本市では3D画像について反響が大きく、既に引き合いが来ているそうです。東京工業大学の手術支援ロボット「IBIS」にこのカメラを組み合わせると、画像のゆがみがなくなり非常に良好な視野が確保できるものと考えています。

また、現在使用されている手術支援ロボットの問題点は、機器全体が非常に大型ということです。機器の駆動システムなどから、小型化はかなり困難であろうと推察されます。さらに手術ロボットの滅菌も大きな問題となります。ダヴィンチは非常に巧妙に滅菌できるような工夫がなされています。すなわち、大きな手術用アームを減菌したビニール袋で覆うという工夫をしています。

これに対し、日本で製品化が進んでいる支援手術ロボットは小型ですから、機械をそのまま滅菌器に入れ滅菌することも可能になると思われます。小型化を可能にしたのは、ダヴィンチとは違い空気圧を利用するという方式を採用しているためです。滅菌の方法も、電機メーカーが薄型テレビの開発中に得られた最新の技術を応用する予定です 。

―国産の手術支援ロボットが日本の病院で普通に使われるのは何年後、と期待できますか。

手術支援ロボットは5年以内の実用化を目指して鋭意、努力中です。できたら3年ぐらいの間に手術ではなく、もっと開発が容易な用途でのロボットの応用を考えています。といいますのは、手術支援だけを目的にしていると、手術ということに使用範囲が限られてしまい、販売台数にも限りがあります。なかなか採算ベースにするのは難しいかと思いますので、手術以外の他の医療目的にも使用できる汎用ロボットを作るべきではないか、とメーカーの人たちと話しています。

例えば、病室で人の代わりに患者さんの状態を観察したり、看護師がナースセンターにいてもロボットを通じてコミュニケーションをとったりするといったものです。また、ベッドの上にアームを下げておき、呼吸しているかどうかをチェックしたり、赤外線カメラで体温を測る、といったことをロボットにやらせられないか、考えています。

また、これから高齢人口は増える一方です。こうした技術を病院以外でも利用し、独居老人が自宅で倒れたり、心拍がおかしいということをモニターしている病院などが遠隔で検知できるようにすれば、未然に危機が回避できることが期待できます。医師や介護、福祉に関わる人たちの仕事量を減らすことも可能になるのではないか、と考えています

さらに新型インフルエンザとか重症急性呼吸器症候群(SARS)といった新しい感染症対策が問題になっています。こうした感染力が強い病気が発生すると、まず危険にさらされるのが医療従事者です。多くの患者に接することが多い医療従事者の感染をいかに防ぐかが、新型感染症対策でもロボットの応用は極めて有効であると考えています。

重症感染症で感染力が強い患者に対してのさまざまな医療行為、医療処置などこれまで人が行っていたことを、可能な限りロボットで代替すれば、新型感染症の発生時、平常時のいずれにおいても医療従事者の感染の危険を大幅に減らすことができます。

(続く)

田邉一成 氏
(たなべ かずなり)
田邉一成 氏
(たなべ かずなり)

田邉一成(たなべ かずなり) 氏のプロフィール
福岡県うきは市生まれ。福岡県立浮羽高校卒。1982年九州大学医学部卒、九州大学医学部泌尿器科入局、84年東京女子医科大学腎臓病総合医療センター入局、戸田中央総合病院泌尿器科部長、米国クリーブランド・クリニック泌尿器科 泌尿器腫瘍学研究室リサーチフェローを経て、2004年東京女子医科大学 泌尿器科大学院医学研究科、腎尿路機能置換治療学分野教授。06 年から東京女子医科大学 泌尿器科主任教授、診療部長。08年から東京女子医科大学病院副院長も。腎臓移植、泌尿器科ロボット手術、移植免疫、腎血血管性高血圧、腎血管外科、泌尿器腹腔鏡手術、腎がん、慢性腎不全、一般泌尿器科など基礎から応用まで専門分野は広い。医学博士。

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