インタビュー

第2回「研究開発意欲高めるには」(渡海紀三朗 氏 / 文部科学大臣)

2007.11.05

渡海紀三朗 氏 / 文部科学大臣

「研究者、技術者育てるシステムを」

渡海紀三朗 氏
渡海紀三朗 氏

科学技術を語ることのできる文部科学大臣として、渡海紀三朗氏(衆議院議員)が就任した。日本の政治の世界では「票にも金にもならない」科学技術に、本気で取り組む政治家は少ない。そうした状況の中、渡海氏は科学技術をライフワークとしてきた珍しい政治家だ。最近の科学技術政策課題について、渡海大臣に話を聞いた。波大学の渡海紀三朗学長に、このプロジェクトとその基盤となる計算科学の重要性と、目指す新しい筑波大学像について聞いた。

―前政権がまとめた来年度予算の概算要求について、特にこうした方が良かったということはありますか。

党で自分がやってきたことですからね。第3期科学技術基本計画の数値目標の達成が非常に厳しくなっていますから、希望としては、少しでも予算を増やしてくれというのはあります。だけれども、歳入・歳出一体改革の中で、唯一自然増以外で伸びたのは科振費(科学技術振興費)だけです。そういったことを考えれば、まあまあ、良くやっているかなというのが正直な気持ちです。

ただ、最近、中国が購買力平価でいうと研究開発費で日本を越えているとか、EU(欧州連合)が2010年にGDP(国内総生産)の1%に研究開発費を伸ばすということを科学技術部会で決めたりと、世界が大競争になっています。日本が遅れをとらないように常にウォッチしていくことが大事なことです。

イノベーション25もありますから。特に黒川清先生(内閣特別顧問)も、大学もこのままでいいのかなという意識は持っておられるようですし、そういうことをできるだけ具体化して着実にやっていくということが、いま一番大事だと思っています。

また、これは昨年から1年間ずっとやってきた課題ですが、独立行政法人のあり方をきちんとしなければなりません。単なる行革という観点だけで、今まで来ていますから。しかし、研究開発というのは特殊な部分があると思うんですね。そういったことについて、研究開発に適した独立行政法人というのはどうあるべきか、一律にバサッと網をかぶせると力を発揮できないよ、という問題についてはしっかりやっていきたい。科学技術創造立国調査会の中で、小坂憲次先生(元文部科学大臣)に小委員長になってやっていただいています。

―その研究開発独法の改革ですが、どのような方向で進めていくべきでしょうか。

実態に応じた一律でないやり方をどうやって作るかが大事なことです。

2つ方法があると思います。要するに事務費と研究開発費を別にする。大きなプロジェクトが来たら、これを運営費交付金でやるということにはなかなかならないですね。補助金が来ても人間のキャップはかかっているので、研究者を増やせないとか、増やしても任期付きの任用しかできないとか、いろいろな問題が出てきています。そこで、事務費と研究開発費を別にするというのが1つのアイデアです。

もう一つは、独立行政法人になったのだから、民間資金を導入して、これからいろいろやっていこうと考えたときに、そこで次の研究のための資金を独自に増やすと全部取られてしまうんですね。もちろん目的積立金という制度はありますが、それでは中期計画を越えてジャンプできないからインセンティブが働かない。みんな持って行かれてしまう。もともとが運営費交付金という税金ですから財務省の言い分も分からないでもないですけど、それじゃあ一生懸命やろうという気持ちにならないだろうと。そういうところをもっと工夫できないか、とか。

そして、結果的に外部資金が増えてくれば、研究費を独自の努力で増やしていくことも可能になります。せっかくエージェンシーを作ったのだから、もう少し弾力的な運用をしたらいいのではないかというのが、われわれのアイデアです。まだ、固めきってないですけれど。

(科学新聞 中村 直樹)

(続く)

渡海紀三朗 氏
(とかい きさぶろう)
渡海紀三朗 氏
(とかい きさぶろう)

渡海紀三朗(とかい きさぶろう)氏のプロフィール
1948年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、設計事務所で働いていたが、父渡海元三郎氏が急逝し、その後を継ぐため約15年勤めた設計事務所を退職。安倍晋太郎外相の秘書を経て、86年7月初当選。現在では当選7回のベテラン。自民党では科学技術創造立国調査会会長などを務める。一級建築士。趣味は、映画・音楽鑑賞・読書・家庭菜園。座右の銘は「最善を尽くす」。

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