「研究者、技術者育てるシステムを」

科学技術を語ることのできる文部科学大臣として、渡海紀三朗氏(衆議院議員)が就任した。日本の政治の世界では「票にも金にもならない」科学技術に、本気で取り組む政治家は少ない。そうした状況の中、渡海氏は科学技術をライフワークとしてきた珍しい政治家だ。最近の科学技術政策課題について、渡海大臣に話を聞いた。波大学の渡海紀三朗学長に、このプロジェクトとその基盤となる計算科学の重要性と、目指す新しい筑波大学像について聞いた。
―文部科学大臣に就任されて、まず考えられたことから聞かせてください。
科学技術は、私のライフワークと自ら言っておりまして、科学技術庁(当時)で政務次官と総括政務次官を経験し、前回の文部科学省でも科学技術とスポーツ担当の副大臣でした。またこの間まで、自民党科学技術創造立国推進調査会長をやっております。そういう意味で、自分の得意分野というよりも、テーマにしてきた分野であるだけに、この職について、より一層今まで自分がやってきたことが、またやりたいことが、この日本の将来にとって重要なことになるように頑張りたいと思っています。
―満を持しての登板ですが、これから特に取り組みたいテーマは何でしょう。
大臣になったから特に何かに取り組むということでなく、これまでやってきたことをしっかりとやれるように努力してことが大事なことです。
いろいろなことがあると思いますが、一つは人間。研究者、技術者をしっかり育てるシステムをどうやって作っていくか。米国は必死になって、インドや中国に追い越されないように、全米科学アカデミーが『Rising Above the Gathering Storm』というレポートを出し、一般教書の中にも盛り込んでいます。しっかり対抗できる人間を作らなければいけない。
また研究環境を良くしていくこと。とかく日本の研究環境はある部分、制約が非常に多いので、そういった部分をどのように変えて、自由な発想を活かしていくシステムを作っていくか。国の研究機関もせっかく独立行政法人になったわけですから、良い意味でもっといろいろな研究をやっていける制度を作っていく必要があります。
これは文部科学省だけの問題ではないのですが、研究開発の拠点というのは大学にもありますし、独立行政法人も世界のCOEといわれる研究をやっているわけです。そういったものが、無駄なく総合してやれる研究体制を作りたいですね。
霞が関は縦割りだということは良く言われます。研究も場合によっては縦割りの部分もずいぶんありますから、そういった情報をどうやったら共有できるか、いま、政府研究開発データベースを作って無駄を排そうということをやっています。これは来年の初めからスタートする予定です。これをしっかりやっていく必要があります。厚生労働省と文部科学省で同じことをやっているなど、以前は、バブルの時代もありました。そういうことは絶対に避けたいと思いますし、そういった党でやってきたことを、今度は行政側から進めていきます。
(科学新聞 中村 直樹)
(続く)

(とかい きさぶろう)
渡海紀三朗(とかい きさぶろう)氏のプロフィール
1948年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、設計事務所で働いていたが、父渡海元三郎氏が急逝し、その後を継ぐため約15年勤めた設計事務所を退職。安倍晋太郎外相の秘書を経て、86年7月初当選。現在では当選7回のベテラン。自民党では科学技術創造立国調査会会長などを務める。一級建築士。趣味は、映画・音楽鑑賞・読書・家庭菜園。座右の銘は「最善を尽くす」。