ハイライト

目的意識の共有で人文系と理科系の連携を(小長谷有紀 氏 / 国立民族学博物館 研究戦略センター 教授)

2007.03.06

小長谷有紀 氏 / 国立民族学博物館 研究戦略センター 教授

GEOSS(全球地球観測システム)シンポジウム(2007年3月2日、地球科学技術総合推進機構、文部科学省 主催)講演から

国立民族学博物館 研究戦略センター 教授 小長谷有紀 氏
小長谷有紀 氏

 人文社会分野から地球観測への期待ということになると、文系と理系が目的意識を共有することではないか。理系の研究者の観測したことと、地べたをはってきた人文系の研究が、うまくかみ合ったのを一度も見たことがない。

 地球観測の分野別推進戦略の中に「土地利用および人間活動に関する地理情報」というのがある。この中に「都市・集落分布データの整備」とあって、さらにその中に「衛星観測で得られる高分解画像の分類・判読」と「人口統計データ等との統合」が挙げられている。

 人口統計データが真実であれば、苦労はない。現地調査がどうしても必要になる。ところがこの現地調査というのは、人がやるわけだから限界がある。その時点についてのみにすぎないという時間的限界、その場所についてのみにすぎないという空間的限界、さらに文化的な限界がある。誤解があるということが前提となる。

 例えば私の研究対象であるモンゴルについて言えば、家畜の統計は、本当は群れ単位で見なければならないのだが、そんな統計はない。あっても自己申告であてにならない。

 遠隔的にとられたデータは価値があるということになるのだが、例えば緑地を上から(衛星で)観測した論文は、緑地の量だけを見ており質は見ていない。緑地といっても実際は、家畜も入れないような荒れた土地ということがある。

 地球観測における文系、理系の融合に関して、人文社会分野からの期待は、現実に行われている現地調査によるバラバラな研究をつなぐ、グローバルとローカルをつなぐ別の評価軸を設定し、多様から連携へつなげることではないだろうか。

国立民族学博物館 研究戦略センター 教授 小長谷有紀 氏
小長谷有紀 氏
(こながや ゆき)

小長谷有紀(こながや ゆき)氏のプロフィール
1981年京都大学文学部史学科卒、86年京都大学大学院博士課程満期退学、93年国立民族学博物館助教授、2003年同民族社会研究部教授、04年から現職、05年から総合研究大学院大学地域文化学専攻長を併任、モンゴルを研究対象に『モンゴルの二十世紀 -社会主義を生きた人びとの証言』(中央公論新社)など著書も多数。NPO法人「モンゴルパートナーシップ研究所」理事も。

ページトップへ