ナノテクノロジー総合シンポジウム(2007年2月20日、文部科学省ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター 主催)基調講演から
新しい技術にはリスク評価が必要だ。技術が新しければ、リスクも新しい。リスク評価もスペック(構造や性能の表示)の一つとして考えないといけない。性能がよいだけでは、今は通らない−。
このような基本的な考えの下で、ナノ技術のリスク評価・管理に関する研究を進めている。20億円の研究費を投じる。安全を証明するのではなく、どういう使い方をすれば、どういうリスクがあるか、を調べるのが基本的な考え方だ。
ただし、その技術が人類の生存に必要なら一定のリスクは許容されるという考え方が大事。
酸化ニッケル、フラーレン、カーボンナノチューブといった50種類のナノ材料について調べるが、これらの試料をどこまで分散(細かく)して、調べたらいいかという問題がある。ナノ試料の分散は非常に難しく、難しいなら分散しないで調べたらいいではないか、という声もある。しかし、それは適当でないと考えている。
生体内には、生物界面活性剤が存在し、ナノ材料がタンパクなどと結合して生体内で分散、小さくなる可能性が高いからだ。従って、できるだけ試料はできるだけ分散し、有害性を調べる。
フラーレンについて言うと、生体を使った吸入試験は、100ナノメートルくらいの大きさで、試験管内の試験では、10ナノメートルくらいの大きさで、と考えている。
中西準子(なかにし じゅんこ)氏のプロフィール
1961年横浜国立大学工学部卒、67年東京大学大学院工学研究科博士課程修了、93年東京大学環境安全センター教授、95年横浜国立大学大学院教授、2001年産業技術総合研究所・化学物質リスク管理研究センターの発足に伴い初代センター長に就任。現在の研究分野は、リスク評価、リスク管理、環境政策など。