ハイライト

海洋利用の科学技術知識と海洋産業の広がりで海外と大きな差(難波直愛 氏 / 三菱重工業株式会社 特別顧問)

2007.02.20

難波直愛 氏 / 三菱重工業株式会社 特別顧問

研究報告会(2007年2月14日、海洋研究開発機構 主催)特別講演から

 日本の海洋産業の統計はあまりないが、財団法人産業研究所などの試算によると、海洋産業の約50%は公共投資であり、漁業関係を除くと約60%が公共投資となる。生物資源を除く海洋資源利用に関する事業規模は非常に小さく、出遅れている。

 海外では、海洋資源利用の分野の事業規模が拡大し、水産資源利用分野に匹敵する規模に発展している。海底石油・ガス利用事業が先導していると思うが、海洋利用分野に関する関心の広がり、関連する科学技術分野での知識と関連産業の広がりに大きな差が生じている可能性がある。

 昭和40〜50年代にかけて、日本の産業界も期待を持って海洋に関連する研究開発に取り組み、事業化への挑戦意欲も高い時期があった。現状を見ると、新しい分野への進出が乏しく、活力があるとは言えないと思う。

 産業界からすると、ある程度の事業規模と継続性を持って事業戦略が描けないと、産業界独自で活力を持って推進することは難しい。

 この時期に第3期科学技術基本計画が決定され、国家基幹技術として「海洋地球観測探査システム」の推進が決まり、また戦略重点課題として、「次世代海洋探査技術」と「外洋上プラットフォーム技術」、最優先課題として、「『ちきゅう』による世界最高の深海底ライザー掘削技術」が選定された意義は大きい。

 国としての海洋政策をより強化するために海洋基本法の制定と組織づくりの提言がまとめられ、具体的に前進する気運にあると聞いた。期待している。

難波直愛(なんば なおちか)氏のプロフィール
1962年三菱重工業入社、神戸造船所長、船舶・海洋事業本部長、取締役副社長を経て、2003年から現職。同年5月から05年5月まで船舶海洋工学会会長。第3期科学技術基本計画の策定作業にもかかわる。04年からテクノオーシャン・ネットワーク会長も。

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