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コラム - インタビュー -

第1回「治療から予防へ価値観の転換を」

東京女子医大学長 高倉公朋 氏 | 東京女子医大教授 松岡瑠美子 氏

掲載日:2006年9月12日

「たこつぼ型からトータル医療へ -患者のための医療『統合医科学』とは」

医療に対する関心がますます高まっている。たこつぼ型からトータル、既製服からテーラーメードの医療へ。患者、社会の双方にとって理想的な医療を目指す拠点として国際統合医科学インスティテュート(IREIIMS)が発足した。
この大型プロジェクトを率いる東京女子医大の高倉公朋学長、松岡瑠美子教授に、新しい医療について尋ねた。

- IREIIMSは、昨年度の文部科学省「戦略的研究拠点育成プログラム」通称スーパーCOEとして発足しました。東京女子医大がその中核になったのは、なぜでしょう。また、5年間でどのようなことをされるのでしょうか?

高倉公朋 氏

高倉公朋 氏

門ばかといいますかね、医療の世界も高度化に伴う弊害が目立ってきました。医学、医療の進歩は日進月歩です。各分野が専門化、独立化して、お互いの交流、協力がだんだん薄れてしまっています。

医療が高度化してくると、単に医学を知っているだけでなく、理工学的な知識から人文社会学的な知識も必要になっています。医の倫理などの問題も重要です。医学各分野の専門家の協力ばかりか、理工学、人文社会学という異分野との協力なしには、やっていけません。さらにこれからは産学協同でなければいけませんから、企業との協力も必要です。

もう一つ、漢方など伝統・代替医療、市場にはんらんしている栄養食品との関係も大事です。これらの市場規模は1兆円を超しているといわれています。これが本当に効くのかどうか、科学的に検証されていません。効果がはっきりするなら、西洋医学で行われている医療に加えていく方がよいわけです。

われわれが目指すのは、病気の超早期診断、治療から予防へというパラダイムシフト(価値観の転換)ですが、それにはこうしたいろいろな意味での統合を図らなければできない、ということです。

- なぜ、東京女子医大が名乗りをあげなければ、と考えられましたか?

高倉公朋 氏

高倉公朋 氏

京女子医大は、日本で最初に専門領域センター方式を取り入れた医科大です。心臓病センター、脳神経センターといった臓器別のセンター制度です。頭が痛ければ脳神経センターに来てください。そこには内科の先生もいるし、外科の先生もいます。このように患者さんにとってとてもよい制度なので、ほかの大学もまねするようになりました。

しかし、50年たつと悪い面も出てきました。それぞれのセンターの中はどんどん高度になっているものの、脳神経センターの人間は耳鼻科や産科のことはさっぱり分からない、といった弊害です。

センター制度で日本をリードしてきた東京女子医大が、あらたな統合化によって全体を見られるような仕組みをつくらないと、人の健康は守れない、という考えからです。

(続く)
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高倉公朋 氏
高倉公朋 氏
(たかくら きんとも)

高倉公朋 氏(たかくら きんとも) 氏のプロフィール
専門は脳神経外科。1958年東京大医学部卒。68年国立がんセンター脳神経外科医長。81年東京大医学部教授。92年東京女子医科大教授。97年同学長に就任。東京大名誉教授。国際脳神経外科学会連合名誉会長。米国脳神経外科アカデミー会員。ドイツ脳神経外科学会会員。

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