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国際的に見劣りしない15歳の学習到達度

掲載日:2011年3月10日

経済協力開発機構(OECD)のシュライヒャー事務総長教育政策特別顧問兼教育局指標分析課長が来日、2日、昨年12月に公表されたOECD学習到達度調査(PISA)結果についてさらに詳しく解説するプレスブリーフィングを行った。

この調査結果が公表された時の受け止め方としては、上海、韓国、フィンランド、香港などの成績が日本より上であることを強調する新聞記事もあった。当サイトは、日本の生徒の数学、科学の学力は上位だし、読解力も回復しているとする記事を掲載している(2010年12月8日ニュース「読解力回復 数学、科学上位維持 PISA結果で判明」参照)。

シュライヒャー特別顧問の評価はどうだったか。

PISAは2000年から15歳の生徒を対象に3年おきに実施されている。文章を理解、利用、熟考する能力を問う「読解力」、数学的根拠に基づいて判断できる能力を問う「数学リテラシー」、科学的知識を使用し、証拠に基づく結論を導き出す能力を問う「科学リテラシー」の3分野について試験を行う。気づいていない人も多いかもしれないが、各回の調査では、3分野を同等に扱っていない。1分野を順繰りに重点分野とし、その分野だけは通常より詳しく調査する(設問の数を倍に増やす)。

従って学習到達度の変化を最も的確に見るには、その回の調査で重点分野とされた対象の調査結果を、同じくその分野が重点分野とされていた3回前(9年前)の調査結果と比較するのが適切と言えるだろう。今回、2009年の調査で重点分野だったのは「読解力」だった。シュライヒャー特別顧問の解説は、「科学、数学よりはやや劣るが2000年のレベルと変わっていない。全体像としては大きな変化はなく、日本の教育システムは成功している」ということだった。PISAが大きな話題になったのは前回2006年時の調査で、「科学リテラシー、数学リテラシーに比べ読解力が低下した」とされたからだが、読解力も2000年のレベルに回復したということだ。

読解力の回復を裏付けるもう一つのデータとして同特別顧問が挙げた調査結果に、読書傾向がある。能動的に勉強をしているかどうかを見る指標として、楽しんで本を読んでいるか、読んでいる本はどんな本か、をPISAは重視しているのだ。楽しんで本を読んでいる日本の生徒たちは2000年に45%だったのが、09年には56%まで上がっている。OECDの平均(2000年69%、09年64%)に比べるとまだ低いが、差はだいぶ縮まった。

もう一つ同特別顧問が日本の生徒たちの好ましい傾向としてあげたデータは、どういう本を読んでいるかだった。2000年にコミックを読む生徒の割合は80数%だったのが09年には70%ちょっとまで減っている。一方、小説、物語などのフィクションを読む生徒は2000年に30%未満だったのが、09年には40%を超えるまで増えている。これらはこの9年間で生徒の読解力が上がっていることをうかがわせる結果だ、というのがシュライヒャー特別顧問の見解だった。

また、答えさせる形として選択形式と自由記述形式があるうち、自由記述形式に対する成績が06年に比べ顕著に向上していることも挙げて、日本の教育改革の成果だと評価している。これからの社会で求められる能力は、知識がどれだけあるかよりも、考えてクリエイティブな答を出せるかどうか、だ。自由記述形式の問いに対する成績が3年前2006年の調査よりよくなったのは、これから必要とされる能力が向上していることを示すので好ましい傾向、という。

日本国内ではPISAの結果は、教育政策を批判する材料に使われる場合が多いように見えるが、OECDのPISA担当者の日本に対する評価は決して悪くない、ということのようだ。

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