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パーキンソン病のiPS細胞バンク設立 病態、治療研究への貢献期待

2016.02.23

 順天堂大学と慶應義塾大学の研究グループがこのほど、神経難病のパーキンソン病患者数千人から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製、保存する世界に例のない「iPS細胞バンク」を設立することを決めた。難病病態研究と再生医療研究が連携する初の試みで、このバンクができれば、現在根本的な治療法がないパーキンソン病の詳しい仕組みや治療薬の研究に貢献すると期待されている。

 順天堂大医学部脳神経内科、同大大学院医学研究科ゲノム・再生医療センターと慶應大医学部生理学教室の研究者で構成される研究グループは、患者の血液細胞から作製したiPS細胞を使い、効率良く神経細胞を成長させる技術の開発に成功した。これまでは皮膚線維芽細胞から神経細胞を作っていたが、血液細胞を使う新技術により患者の負担も採血だけで済むようになる、という。

 この研究グループは、2012年に日本で初めてパーキンソン病の患者からiPS細胞を作製し、病態メカニズムを再現することに成功している。しかし、そのiPS細胞は、皮膚の組織をメスで切り取る皮膚生検によって採取していたので患者の負担も大きかった。

 順天堂大医学部付属の順天堂医院には国内医療機関としては最も多くのパーキンソン病患者が通院し治療している。計画では、同医院に通う3千人以上の患者に協力してもらい、iPS細胞を作製、保存するバンクを順天堂大内に設立する。既に100人以上の血液を集めており、4月以降本格的にバンク事業を進める。

 パーキンソン病は、50?60代に発症することが多く、手足の震えや筋肉のこわばりなどの症状が徐々に進行する神経難病。患者は全国で推定約15万人。加齢も危険因子で、社会の高齢化とともに患者は増加すると予想されている。最近では再生医療の成果を生かした病態、治療研究が進んでいるが根本的な治療法はまだない。

 この研究は、科学技術振興機構(JST)から日本医療研究開発機構(AMED)に引き継がれた「再生医療実現拠点ネットワークプログラム・疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」の一環として行われた。

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