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配電系統へのサイバー攻撃検知手法開発

掲載日:2015年5月29日

電力配電系統へのサイバー攻撃をいち早く検知できる手法を、東京工業大学の石井秀明(いしい ひであき)准教授らが開発した。

電力網へのサイバー攻撃は大規模停電など社会に大きな影響を与えることから、対策が急がれている。しかし、これまでは発電所から変電所までを結ぶ送電系統への攻撃に対する研究が中心だった。研究チームが変電所から事業所、一般家庭など需要家をつなぐ配電系統に着目したのは、太陽光発電などの再生エネルギーを大量に導入すると、配電系統へのサイバー攻撃の危険性が増すと予想されるため。再生エネルギーによる発電量は昼夜、天候差による変動が激しく、配電系統内の電圧変化も複雑になる。計測データに応じて配電線の接続状態を即時に制御する必要が生じ、電圧センサーや開閉器を多数設置しなければならない。それに伴い計測データや制御指令情報などを即時にやりとりする通信量も増加する結果、通信を狙ったサイバー攻撃の危険性も高まる、という恐れだ。

研究チームは、複雑な電圧の変化を数理的に解析することにより正常な電圧変化をモデル化し、「電圧値が変化する速度が一定値以下」「配電系統内の全地点の電圧値が一定の幅に収まる」など設定した基本条件からそれた場合に攻撃や異常があった、として検知する手法を開発した。太陽光発電に関するこれまで得られた実際のデータを基にしたシミュレーションを行い、検知手法が有効であることも検証した。

太陽光発電システムを設置した需要家が電力会社に電気を売ろうとする際、配電系統の電圧値が高い場合には出力電力を自動的に抑制する保護機能が付加される。配電系統から太陽光発電システム側へ電流が逆に流れるのを防ぐためだ。この仕組みを狙い計測データを改ざんして必要以上に出力を抑制させ、結果として需要家が売電によって得られるはずの利益を減少させる、といったサイバー攻撃が可能になる。こうした攻撃から太陽発電システムの需要家を守らないと、太陽光発電の普及の妨げにもなりかねない。

研究チームが今回、検知手法の有効性を確かめるために使ったのは、配電系統の簡易モデル。今後は、実際の配電系統に近い大規模なシステムへの適応を検討し、さらに現実的な電力系統の制御システムに対するセキュリティ対策の確立を目指したい、と研究チームは言っている。

この研究成果は、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業「CREST」の研究領域「分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論および基盤技術の創出と融合展開」(研究総括:藤田政之東京工業大学教授)から得られた。

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