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レポート

対話、体験…にぎわい通じ未来を探る サイエンスアゴラ2026閉幕

2026.09.17

草下健夫 / サイエンスポータル編集部

 あらゆる立場の人が対話や体験を通じ、科学技術と社会をつなぐ国内最大級のイベント「サイエンスアゴラ2026」(アゴラ)が12、13日の2日間にわたり開催された。顔を合わせて語り合い、科学技術の魅力や課題に触れる多彩な100以上の企画が東京・お台場に集結。にぎわいの中で知的好奇心を高め合い、人類や社会の未来を見つめるひとときとなった。

中高生によるブースを含め、科学技術に触れる多彩な企画が実現した「サイエンスアゴラ2026」=12日、東京・お台場のテレコムセンタービル
中高生によるブースを含め、科学技術に触れる多彩な企画が実現した「サイエンスアゴラ2026」=12日、東京・お台場のテレコムセンタービル

カラフルな「タグ」、関心への糸口にも

 アゴラは科学技術振興機構(JST)が主催し、今年で21回を迎えた。例年、お台場で開催したが、コロナ禍を受け2020~23年にはオンライン形式も導入した。24年、完全実地開催が復活。今年もテレコムセンタービルを主な会場として開催した。あくまで筆者の体感だが、例年に比べ開幕後、昼前の早い時間からかなりにぎわったようだ。アゴラがイベントとして定着したのに加え、近隣施設の一般公開などとの相乗効果もあったかもしれない。

(左)開幕直後から多くの人が会場に吸い込まれていった(右)出展者と来場者の熱気に、各階が包まれた
(左)開幕直後から多くの人が会場に吸い込まれていった(右)出展者と来場者の熱気に、各階が包まれた

 今年も「キュレーション」により、ブースの配置などが分かりやすく整えられた。キュレーションとは情報を集め、テーマに沿って編集しながら意味や価値を見いだす作業、といった意味。有識者9人からなる推進委員会が、多彩な企画を参加者の興味関心に応じて価値づけ、分類するキュレーションを進めた。「未来の技術でくらしが変わる」「地球・環境・未来を守る」「いのち・からだ・医療のひみつ」「見て・さわって・楽しく学ぶ」「社会とつながる・世界とつながる」の5つのジャンル分けをした。

 来場者が効果的に過ごせるよう毎年、工夫が凝らされる。今年の新機軸は「インタレストタグ」というシール。キュレーションのジャンルが書かれた5種類のカラフルな「ジャンルシール」が各階で配られた。来場者は関心に応じて好みのものを受け取り、胸などに貼り付けた。何枚でもOK。さらに白紙の「自由記述式シール」もあり、例えば「じっくり学びたい」「気軽に概要を知りたい」など、求める情報の深さや見学スタイルを書く仕掛けだ。

新機軸の「インタレストタグ」。5種類のカラフルなジャンルシールや自由記述式シールが配られた
新機軸の「インタレストタグ」。5種類のカラフルなジャンルシールや自由記述式シールが配られた

 このタグにより、来場者が着眼点を持って会場を回ることや、出展者との対話が深まる効果が期待できた。実際、タグを貼り付けた人をかなり見かけた。特に子供たちはシールが大好きで喜んでいて、たくさん貼ってはしゃぐ姿も。面白半分でも構わないだろう。タグを身につける行為自体が、多彩な分野に関心を持つ糸口になったかもしれない。

 昨年お目見えした「トウガラシマーク」も使われた。各企画の内容の難易度の目安を1~3個のトウガラシのアイコンで示したものだ。来場者はあらかじめレベルの心積もりができたろう。

「面白い問いを持ち帰ってほしい」

 各種のセッションでは医療や食、災害、生物、航空宇宙の課題、科学研究のあり方など多岐にわたるテーマで、発表や議論が活発に繰り広げられた。ブースでは研究機関や学校、有志などの出展者により、実験や観察、ワークショップ、社会課題に関する意見交換といった企画が実現した。研究者や若者が手作りで趣向を凝らしたゲームに、行列ができた。

会場となったテレコムセンタービル。来場者は思い思いに企画を選び、足を運んだ
会場となったテレコムセンタービル。来場者は思い思いに企画を選び、足を運んだ

 セッションではアゴラの意義や、会場での過ごし方に関する声も聞かれた。「科学館や科学イベントは正解を探す場所と捉える方も多いかもしれないが、アゴラは違う。研究者や出展者と話し、『なぜだろう』『私は違う』といった気持ちを持ってほしい。何か面白い問いを持ち帰ってほしい」「『なぜこの研究をやろうと思ったか』と、研究者自身について話を聞くのもよい」などと来場者に呼びかけた。

 科学と市民の関係性を探るテーマでは「科学技術分野で民主主義を機能させるには、専門家が情報を一方通行に伝えるのではなく、市民を技術と社会の共同設計者、パートナーと捉えることが重要だ」「科学イベントで多くの人を集めようとして敷居を下げると、今度は深い議論ができなくなる。その調整が課題だ」「科学技術への関心が高まっても、必ずしも意思決定への市民参加が進むとは限らない。専門家への信頼は、科学コミュニケーションの手法いかんで解決できるとは限らないのでは」といった、深い議論が交わされていた。

 中学や高校による出展が目を引くのもアゴラの特徴だ。今年もSDGs(国連「持続可能な開発目標」)や恐竜の魅力、デジタルの世界、地域防災などユニークな展示が並んだ。昨年に続いて参加した高校1年生の女子生徒は「お子さんが作業している間に、保護者の方にもクイズを出すなど工夫した。予想外の質問があっても、間違ったことを言わないよう気を付けた。緊張するがモチベーションが上がっている」と手応えを語った。

今年も大学生や中高生による、趣向を凝らした出展が光った
今年も大学生や中高生による、趣向を凝らした出展が光った

「人文系も含み、充実した時間」

 会場で感じたことを自由に書き残す掲示板「Share Wall(シェアウォール)」に、今年も多彩なコメントが集まった。「いろいろな研究に本気で取り組む方々に感動した」「大人こそもう一度、理科の勉強を」などなど。イラストもあり、表現を楽しむアゴラの性格がここにも出ていた。人気漫画に出てくる未来の道具を欲しがる内容や、「宇宙で温泉に入ってのんびりしたい」「恐竜と暮らしたい」といった個性派のコメントが読め、眺めると楽しい。年ごとに微妙に傾向が変わっており、今年はAI(人工知能)依存に対する不安の書き込みが目立った。

来場者の思いで埋め尽くされた「Share Wall」
来場者の思いで埋め尽くされた「Share Wall」

 2年目の来場という千葉市の会社員男性(20代)は「自然科学に限らず倫理学などの人文系も含んでおり、質問にも答えてくれて充実した時間を過ごせた。ただ中には子供向けのワークショップだけでなく、大人のために内容の深まりが欲しいと感じるブースもあった」。 都内の塾講師の女性(20代)は「学校の勉強で理科が嫌いだと思っても、本当に科学に興味のない人など、いないのでは。自分で気付いていないだけ。ここに来場する人の多くは、興味を自覚しているだろう。難しいが、来ない人に気付いてもらうことが課題では」と提起した。

 会場に足を運び、研究者や他の来場者と語り合い、時に手足も動かしながら知識や思考を深めていく。どんな気づきや喜びがあるか、実際に来ないと分からない。人が集まって予定調和でない刺激を生むアゴラは、質問すると瞬時に“それっぽい”答えを打ち返す生成AIには、決して真似のできない玉手箱。2日間のにぎわいが、来場者の心に長く、ジワリと効いていくはずだ。

アゴラ会場のテレコムセンタービル(左奥)の近隣では、研究施設などの一般公開や交流イベントが同時に開かれた。日本科学未来館(中央)もアゴラ連携企画を開催した
アゴラ会場のテレコムセンタービル(左奥)の近隣では、研究施設などの一般公開や交流イベントが同時に開かれた。日本科学未来館(中央)もアゴラ連携企画を開催した

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