親子で参加でき、子どもにとっては夏休みの宿題作成の手助けにも、という企画を高校の同窓会が毎夏、企画している。仕事先では取締役。そんな後輩たちが、企画委員として事前の準備や当日の案内役を今回も実にまじめにこなしていた。
今年の見学先は、つくば研究学園都市の産業技術総合研究所と、宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センターだった。筑波宇宙センターでは、数年前訪ねた時にはなかった大きな体育館並の展示室ができている。国際宇宙ステーション・日本実験棟「きぼう」の実物大モデルや、国際的にも貴重な輸送手段となっている宇宙ステーション補給機(HTV)の試験モデル、さらには災害のたびに画像が新聞紙面を飾る陸域観測衛星「だいち」の試験モデルなど、その大きさがまず目を引く。
ロケットが無事、発射され、衛星が軌道に乗ったかどうかだけが、関心のほとんど。国内ではそんな打ち上げ取材の経験しかない元科学記者としては、日本の宇宙開発の進展ぶりにちょっとした感慨を覚えた。
ただ、こうした展示が子どもたちの関心をどれほど引くか、と考えると少々、心許ない。ロケット発射時の映像に合わせて、打ち上げ時の爆音を聞かせる別の見学場所もあるなど、それなりの工夫は理解できる。しかし、動きに乏しいというのが、どうも宇宙関係の展示につきまとう物足りなさのような気がしてならない。動きのない展示では、特に子どもたちがあまり驚かなくなっているのではないか、と思う。
まだ難しいかなとは思ったが、6歳になる孫娘を連れて行った。産総研で見た野菜類が次々に飛び出してくる3D映像が一番、印象に残ったようだ。カボチャが途中で逆さまになったりするのが面白かったらしい。普通見慣れない角度で身近なものを見せられると、特に子どもは意外性を感じるということだろうか。両足を広げ、股(また)の下から後ろを眺めると、天と地が逆になっただけで見慣れた景色がまるで別物のように見える。そんな子どものころの体験を思い出した。
同じ産総研には、地質標本館に日本列島を下(地球内部)から見上げる展示がある。天井を展示に利用する発想もなかなかで、説明担当者の解説も分かりやすい。だが、孫娘の3D映像に対する感想を聞いて考え直した。この展示のアイデアはよいが、肝心の驚きを感じさせないところが物足りない、と。
日本列島周辺で過去に起きた地震の震源の位置を天井から垂れ下がった棒で示している。棒が長いほど震源が地下深部にあることを示す。赤い丸がついているところは、過去に大きな被害を出した地震の発生場所だ。日本列島付近で起きる地震はやみくもに起きているのではない、ということがよく分かってよい。
では、何が物足りないか。地球内部から見上げると、見慣れた日本列島の輪郭がまるで別物のように見える。ここで、まず「ホーッ」と驚かせた方がよいのに決まっている。ところが、そもそも天井が高いため、日本列島の輪郭がはっきりと見えにくいのだ。その上、地震を説明するために何本も垂れ下がった棒が目障りになってしまっている。
ある考えが浮かんだ。日本列島の輪郭は、最初からはるか上に描かれているのではなく、床に描かれているというのはどうだろう。その日本列島の輪郭が、突然、上昇を初め、天井にぴたっと張り付いたらどうだろう。上から眺めるのと下からではえらい感じが違うことが嫌でもよく分かるのではないだろうか。誰もがすんなり飲み込めるわけではない、地震やプレートテクトニクスの説明は、その後でする。大人なら、これだけでもより興味を持って説明員の話を聞いてくれるのではないだろうか。
何のことやら分からなかった孫娘のような子どもたちも、後年、地学を習ったときに、この時の光景をふと思い出して「なるほど、納得!」。
となるかどうかは分からないが…。