サンゴの多くは緑色の光を発して生育に必要な共生相手の藻類を誘い込んでいる—。こうした興味深い研究成果を基礎生物学研究所と東北大学、産業技術総合研究所の研究グループがこのほど米科学アカデミー紀要電子版に発表した。
研究グループによると、サンゴ礁を形づくり、南の海の生態系の維持に不可欠なサンゴの多くは紫外線や青色光を受けると緑色の蛍光を発する。これは、サンゴが体内に緑色蛍光タンパク質(GFP)があり、紫外線や青色光を吸収することにより緑色に光るためという。これまでGFPがサンゴなどの発光や色彩に関わっていることは知られていたが、GFPの役割はよく分かっていなかった。
研究グループは、このGFPに着目。サンゴの生育に不可欠な共生藻類である「褐虫藻(かっちゅうそう)」が含まれた海水を入れた容器に、生きたサンゴと死んだサンゴを入れて実験した。具体的には容器に青色光を当てて生きたサンゴが10分間緑色に光るようにした。すると、褐虫藻がサンゴの周囲にたくさん集まった。一方光らないサンゴの死骸にはほとんど集まらなかった。また、青色光が当ると緑色に光るGFPと同じように緑色に光る蛍光塗料を塗ったプラスチック片にも多くの褐色藻が集まった。
これらの実験結果から、褐虫藻はサンゴが発する緑色の光に引き寄せられてサンゴの中に取り込まれていくことが分かったという。サンゴは海水温が上昇したりすると褐虫藻が抜けてしまい白化する。こうした状態が短期間だとある程度は回復するが、長く続くとサンゴは死んでしまう。研究グループは、白化後の早い時期に何らかの方法でサンゴが緑色の光を発信する環境をつくればサンゴが回復につながる可能性があるとみて今後も研究を続ける。
GFPは海洋生物学者の故下村脩氏(2018年10月19日死去)がクラゲから発見した。この功績で2008年のノーベル化学賞を受賞している。
研究グループは、基礎生物学研究所環境光生物学研究部門の相原悠介研究員、高橋俊一准教授、皆川純教授のほか東北大学大学院生命科学研究科の丸山真一朗助教、産業技術総合研究所地質情報研究部門の井口亮主任研究員らがメンバー。
関連リンク
- 基礎生物学研究所プレスリリース「サンゴがもつ緑色蛍光タンパク質の働きが明らかに 〜蛍光による共生パートナーの誘引〜」