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がん10年生存率は58% 大規模調査で初集計

2016.01.20

 国立がん研究センターは20日、がんと診断された患者が10年後に生存している割合を示す「10年生存率」は全体で58.2%だったと、詳しいデータを公表した。10年という長い期間の生存率を大規模データに基づいて算出したのは初めて。同じ分析対象での「5年生存率」との比較では、胃がんや大腸がんは、ほぼ横ばいだった一方、乳がんや肝臓がんなどは10年生存率の方が目立って低く、これらのがんは長期にわたって経過観察が必要であることを示した。

 大規模データは「全国がん(成人病)センター協議会」(「全がん協」)の協力で得られた。10年生存率の分析対象は、1999〜2002年に「全がん協」加盟の16施設でがんの診療を始めた約3万5千症例。同じ時期の同じ分析対象による5年生存率は63.1%で、10年生存率より5ポイント近く低かったが大差ではなかった。しかし、乳がんや肝臓がんは5年以降も生存率が低下する傾向にあった。

 部位別の5年生存率と10年生存率の比較では、 胃がんは70.9%から69.0%、大腸がんは72.1%から69.8%と、いずれもわずかに低下しただけだったが、肝臓がんは32.2%から15.3%に、また乳がんも88.7%から80.4%へと大きく下がった。これらの数字は、胃がんや大腸がんの生存率は5年前後で低下に歯止めがかかるが、乳がんや肝臓がんでは長期間にわたり生存率が一定の割合で下がり続けることを示している。

 進行度と生存率との関係のデータ分析では、早期の「病期1」は、がん全体の5年生存率90.1%に対し、10年生存率も86.3%、と大差はなかった。しかし、筋肉層を超えて浸潤し始める「病期2」ではそれぞれ76.3%と69.6%、リンパ節に転移する「病期3」では46.0%と39.2%、さらに他臓器転移などがある進行がんの「病期4」では17.4%と12.2%で、10年生存率になると、目立って低くなる。

 5年後、10年後の両方を見ての生存率では、乳がんはマンモグラフィー検診の普及などにより10年生存率でも80.4%と高い。前立腺がんも、腫瘍マーカーの普及で早期発見が可能になり、「 病期1 」でがんが見つかったケースでは生存率は10年近くまででほぼ100%。一方、肝臓がんと膵臓(すいぞう)がんの生存率は時間の経過とともに目立って低下する。これらのがんが「難治がん」であることをあらためて示し、今後の診断、治療法の進歩が望まれる分析結果になった。

 全国がん(成人病)センター協議会ホームページでは、2004年から07年に診断治療を行った最新の5年生存率も公開。それによると、がん全体で68.8%。「1999?2002年」の63.1%より上がっていた。がん治療は年々進歩しており、分析データはまだないものの、「現時点の推定10年生存率」は今回公表された数字よりも高くなっている、と期待される。

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