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目線合わせ相づち打つ対話ロボット開発

2015.01.21

 人とロボットがともに暮らせる社会が到来するだろうか。人のように相手と目線を合わせたり、相づちを打ったりする社会対話ロボットを、大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩(いしぐろ ひろし)教授と吉川雄一郎(よしかわ ゆういちろう)准教授らがロボットメーカーのヴイストン(大阪市)と共同開発した。ロボットは「コミュー」(身長30.4cm、重さ938g)と「ソータ」(身長28.2cm、重さ800g)。カメラ、スピーカー、マイクなどを搭載して、話の内容に応じ、あらかじめ登録した言葉を選んで応答する。人は対話に参加しているような感覚が味わえる。日本科学未来館(東京)で1月20日、実演して公開した。

 人間と対話できるロボットが最近、開発されている。しかし、人と人が対話しているときに抱く自然な対話感は十分に実現していなかった。研究グループは、ロボット同士の対話を人間に見せることを基本に、目線を重視して、より親しげな対話感をかもし出すコミューとソータを作り出した。実演では、女性スタッフが話しかけると、コミューは女性の目を見て、「ロボットと話すのは初めてですか」と聞いた。女性が「初めてです」と答えると、コミューは相づちを打ちながら「緊張しなくて大丈夫だよ。僕らは小さいから、怖がらなくても大丈夫だよ」と語り、和やかな雰囲気を出していた。

 コミューは眼球部、頭部、胴体部からなる豊富な自由度を持っており、多数の小型モーターを頭に組み込んで多様で微妙な視線表現を実現している。ソータは、眼球と腕部の自由度を落とし、よりシンプルにしたが、表情は豊かだ。2体のロボットが対話しながら、時折、参加した人に質問して同意を求め、対話に参加しているように感じさせる。相手の話を最後までじっくり聞くふりもする。「そっか」などと相づちを必ず打ち、相手の人やロボットを無視していないよう、社会的に振る舞う。ソータは、ロボットクリエイターの高橋智隆(たかはし ともたか)さんの親しみやすいデザインを取り入れた。共同開発したヴイストンが7月以降にソータの出荷を計画、10万円以下の価格で販売して年間3000体の生産を見込んでいる。

 石黒浩教授らの研究グループは「一般家庭への普及を目指して、小型化、運動系の静音化を図り、人間の指を巻き込まないように安全なデザインを採用した。今後、対話感の一層の実現のため、“社会的振る舞い”の実装を進めてロボットを成熟させていく。また、コミュニケーションに障がいを持つ子どもたちが通う発達障がい専門クリニックの診察室に導入し、このようなロボットとの対話を用いた療育プログラム開発も検討したい」としている。

社会対話ロボットのコミュー(左)とソータ
写真. 社会対話ロボットのコミュー(左)とソータ
(提供:大阪大学、ヴイストン)

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