欧州宇宙機関(ESA)の人工衛星「GOCE」がエンジン燃料を使い果たし、早ければ来週にも地球に落下する。GOCEは人工衛星のうちでも最も低軌道を周回し、推進エンジンをふかしながら飛ぶ科学衛星で、大気圏突入時には重量約1トンの4分の1ほどが燃え残り、数十個に分裂して地表に到達するかも知れないという。
GOCEは2009年3月にロシアの基地から打ち上げられた。大きさは全長が5.3メートル、直径が約1メートル。地球表面の重力分布を精密に計測するため、できるだけ低高度の、約260キロメートル上空を周回する。この高度は、一般的な人工衛星(高度600-800キロメートル)、さらに高度約400キロメートルの国際宇宙ステーション(ISS)よりもかなり低い。
その高度領域には大気の分子がわずかに存在することから、機体を先細りの八角形にし、2枚の“ひれ”を付けるなどして、空気抵抗を少なくしている。そうしたレーシングカーのような外見から、GOCEは“宇宙のフェラーリ”とも呼ばれているという。
GOCEは、高度を維持するために、イオン推進のエンジンを常に噴射しながら飛んでいる。当初は20カ月間の飛行計画で、その分のエンジン燃料を積んでいたが、大気の空気抵抗を増す方向に働く太陽活動が予想よりも低く、燃料の消費が少なくて済んだため、これまで衛星寿命を延長してきた。
しかし、その燃料も近く枯渇し、GOCEが地球に落下することを、欧州宇宙機関が先月発表した。落下の時期は「10月16、17日の可能性が最も高い」とみられるが、どこで大気圏に突入し、破片がどこに落下するかなどについては、機関の関係部局が常に監視し、解析しているという。
人工衛星の落下の例は、最近では11年9月の米航空宇宙局(NASA)の上層大気調査衛星「ユアーズ(UARS)」、同年10月のドイツのX線観測衛星「ローサット(ROSAT)」があり、昨年1月には、ロシアの火星探査機「フォボス・グルント」が地球周回軌道からの離脱に失敗し、チリ沖に落下した。