鳥類の祖先とされる恐竜がそもそも翼を持つようになったのは、飛ぶためではなく、求愛や抱卵などの繁殖行動のためであることが、北米大陸で初めて発見された羽毛恐竜の化石を調査した北海道大学総合博物館の小林快次(よしつぐ)准教授とカナダ・カルガリー大学、米国フロリダ大学などの共同研究で分かった。米科学誌「サイエンス」に26日発表した。
研究チームが調べたのは、カナダ・アルバータ州南部で1995年から2009年までに発見された、約7000万年前(白亜紀後期カンパニア期)の「オルニトミムス」というティラノサウルスなどと同じ獣脚類の恐竜3体の化石標本。3体のうち2体は、体長が1.5メートルと3.4メートルで、それぞれの年齢は1歳未満と約5歳の子どもとみられ、羽毛の痕(あと)が周囲に保存されていた。さらに大きな1体は、体長3.6メートル、年齢10歳ほどの成長期を過ぎた成体で、首の部分に羽毛の痕が残り、腕の骨には翼を構成する羽軸の強い「風切り羽」の痕(乳頭突起)があった。
現代の鳥類は、生後1-2週間で翼が生え始めるが、今回のオルニトミムスのような空を飛ばない非鳥類型恐竜の場合は、生後1年以上たってからしっかりと羽が生えた翼を持つようになることが分かった。
これまで翼の起源としては「飛翔や滑空のため」「獲物の捕獲としての道具」「地上を滑走する時のバランスのため」あるいは「繁殖行動」といった4つの説があったが、オルニトミムスは飛翔せず、植物食であり、幼少期から走行性に優れるバランス感覚を持つことから、本来は、異性へのアピール(個体識別のためのディスプレイ)や抱卵などの繁殖行動のために翼が開発されたと考えられるという。