DNAの塩基配列を高速で決定する装置(DNAシーケンサー)として、新しい原理に基づく手法が可能であることを大阪大学の研究チームが実証した。
大阪大学産業科学研究所ナノテクノロジーセンターの川合知二・教授と谷口正輝・准教授らが実証に成功したのは、約1ナノメーターというごく微小な電極間距離を持つ電極により、DNAを構成する核酸塩基分子1個に流れる電流を測定する手法。核酸分子によって異なる電流が計測できたことから、この手法によって核酸塩基分子の種類を1分子単位で見分けられることが確かめられた。
DNAの塩基配列決定は医療や犯罪捜査などで既に大きな役割を果たしており、さらに迅速、高精度の検査を実現するため超高速で低コストのDNAシーケンサー開発が期待されている。
米国立衛生研究所(NIH)はヒトゲノムの全塩基配列解読を1,000ドルで行うことを目指す「1,000ドルゲノムシーケンス」計画を進めている。河合教授らが実証した手法は「1,000ドルゲノムシーケンス」を実現する次々世代DNAシーケンサーの基本原理として期待されているが、1分子を電気計測で識別する技術開発が困難なため、この基本原理を実証した例はなかった。
この研究成果の一部は、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)の研究課題「自己組織化配線法による超高集積分子デバイスの創製」(研究者:谷口正輝・准教授)によって得られた。