飛行中の宇宙船内などの微少重力環境下では、受精に影響は見られないものの胚の発育が阻害される恐れがあることを、理化学研究所と広島大学の研究チームが動物実験で確認した。
研究チームは、哺乳(ほにゅう)類が宇宙ステーションや月面基地で子孫をつくることが困難である可能性を示した初めての研究結果だ、と言っている。
地球を周回中の宇宙船や宇宙ステーション内での哺乳類の生殖に関する研究は遅れている。魚類やは虫類と異なり、哺乳類は重力に敏感で交尾をしなくなってしまうためだ。
理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの若山照彦・ゲノム・リプログラミング研究チームリーダーと弓削類・広島大学大学院生体環境適応科学教室教授らが用いたのは、弓削教授と三菱重工が共同開発した3次元重力分散型模擬微小重力装置。地球の重力の千分の1という微小重力下でマウスの精子と卵子を体外受精させ、受精卵の異常の有無、胚にまで培養した時の胚の状態、さらに胚を雌の卵管あるいは子宮に移植し、子の発育にどのような影響が出るかを調べた。雌マウスの飼育だけは通常の重力下で行った。
この結果、受精は正常に行われたものの、胚発生や出産率は通常の重力下の約半分に低下し、微小重力の影響が確かめられた。
実験が行われた地球上の千分の1に相当する重力は、スペースシャトル内と同じで、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」内はさらに1けた小さく、地上の1万分の1という微小重力環境となっている。
人類が宇宙でより広範に活動する可能性を探るためには、「きぼう」などを利用した本格的な繁殖実験に取り組む必要がある、と研究チームは言っている。