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【コラム】ジェンダー平等がもたらすより良い社会《佐々木成江さんインタビュー》

2022.09.29

 SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)17ゴールのうち、日本において達成度が低いのが「ジェンダー平等」。男女の格差を比べた世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数」でも、2022年時点で日本は146カ国中116位と低迷している。今年度開設されたお茶の水女子大学ジェンダード・イノベーション研究所で性差の研究から社会変革を推進する佐々木成江特任教授に、このゴール実現のヒントを聞いた。

専門の分子生物学にも「オス目線」の偏りがありました(佐々木さん提供)
専門の分子生物学にも「オス目線」の偏りがありました(佐々木さん提供)

佐々木さん:
 オスのデータが一般化される生物学ーー。「ジェンダード・イノベーション」に関連して2019年にこの指摘を知った時、ショックを受けました。実験では、性周期などでデータがぶれやすいメスよりオスを使った方がいいという「常識」を私も疑わず、生命の真理を追究する科学者でありながら、オス目線に加担していたことを猛省しました。

 ジェンダード・イノベーションは、性差の視点を積極的に研究に取り入れることで科学技術の卓越性が高まるというスタンフォード大学のロンダ・シービンガー博士が提唱した考え方です。そして、同時に男女を含めあらゆる人が見過ごされない社会にもつながります。例えば医学では、睡眠導入剤ゾルピデムの服用8時間後に居眠り運転をする女性の割合が男性の5倍多いことが判明し、2013年に米国で用量を半分にした女性用が登場しました。女性に多いイメージの骨粗しょう症など、男性で見逃されて重症化してしまう病気にも目が向くようになりました。

ジェンダード・イノベーションへの関心は高まっています(福井での講演)(佐々木さん提供)
ジェンダード・イノベーションへの関心は高まっています(福井での講演)(佐々木さん提供)

 ジェンダー平等は、経済発展につながるという「実利」もあります。日本も男女の労働時間格差がOECD平均まで改善すればGDPが最大15%向上すると試算されています。ただ、日本の意識改革はゆっくりで、WEFのレポートによれば欧米はおよそ60年でジェンダー平等に達しますが、日本を含む東アジア・大西洋地域では168年もかかります。女性参画を進める中でマジョリティー向けの制度の問題が可視化されることは、社会的マイノリティーである女性だけではなく他のマイノリティーにも生じている問題解決にもつながります。

 まず女性参画を進めることを「練習問題」に、固定概念にとらわれず多様性を尊重するハイ・パフォーマンスな社会の実現に向かっていければと思います。

佐々木 成江(ささき なりえ)

佐々木 成江(ささき なりえ)
お茶の水女子大学ジェンダード・イノベーション研究所 特任教授。
東京大学大学院理系研究科博士課程修了。名古屋大学男女共同参画室特任准教授、お茶の水女子大学ヒューマンライフイノベーション研究所准教授および学長補佐などを経て、2022年より現職。専門は分子生物学で、ミトコンドリアDNA機能発現制御機構の解明に取り組む。

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