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【コラム】燃料デブリの取り出しに挑む《岩渕美咲さんインタビュー》

2022.09.22

 SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の5番目のゴールであるジェンダー平等実現を目指すとき、ロボティックスなどの技術の進展が重要な鍵となる。昨今、過酷な環境のために女性の進出が遅れていた分野でも、先端技術を用いて活躍する実例が増えている。そのうちの1人、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉での最大の難関、燃料デブリ取り出しに挑む岩渕美咲さんに聞いた。

チームで前例のない難題に挑んでいます(岩渕さん提供)
チームで前例のない難題に挑んでいます(岩渕さん提供)

岩渕さん:
 福島第一原発2号機の格納容器の底部に、原子炉の燃料が溶け落ちて固まった燃料デブリがあります。それを遠隔操作の「ロボットアーム」で取り出すという世界でも前例のない作業が廃炉に向けては不可欠になります。人が入れない場所でロボットアームがスムーズに作業できるための準備作業を全て担うのが、やはり遠隔操作となる「双腕マニピュレータ」です。人の腕の動きと連動するこの腕型装置の操縦者の1人として、私は日々訓練を積んでいます。

画面を見ながらの遠隔操作は空間認識能力が求められます(岩渕さん提供)
画面を見ながらの遠隔操作は空間認識能力が求められます(岩渕さん提供)

 当初は力加減が分からず、訓練で掴んだペンの先を潰してしまうこともありましたが、今は電動ドライバーを操れるまでになりました。私たちは2チーム合計9人のグループで、女性は私1人です。双腕マニピュレータで重い物を持つこともあれば、細かい作業や長時間集中力が必要な作業もあります。正直なところ、女性だから有利・不利とはあまり感じていません。各メンバーが得意な作業を担当してチームとしてできればいいので、多様性はミッション遂行のポイントかも知れません。

 11年前、16歳だった私は福島県の楢葉町(ならはまち)でのびのびと暮らしていました。それが突然、家も地域コミュニティーも消えてしまいました。それまで将来のことなんて考えていませんでしたが、少しずつ日常を取り戻し、地元が新しい街づくりに果敢に取り組むさまをずっと見てきて、私も貢献したいと思うようになりました。楢葉町というふるさとのおかげで今の私があります。

 2023年度後半を目途に本番の作業が始まる予定となっていますが、廃炉作業は今後も30年程度続きます。この先、国内外の最新の知見を絶えず学び、より安全に着実に作業を進めていくためにできる限りを尽くし、次世代に引き継ぐ覚悟はできています。

岩渕 美咲(いわぶち みさき)

岩渕 美咲(いわぶち みさき)
東京電力 福島第一原子力発電所 燃料デブリ取り出しプログラム部 遠隔オペレーションPJグループ。
福島大学を卒業後、東京電力HDに入社。福島第一原子力発電所 建設・運用・保守センター運用部(5・6号当直)などを経て2021年より現職。

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