お茶の水女子大学附属中学校
日:2019年3月29日
学校の授業や科学館、地域での科学教育に、サイエンスウィンドウがどのように活用されているのかを紹介します。
記事をきっかけに科学技術への関心を深める
お茶の水女子大学附属中学校3年菊組の理科の授業。理科教諭の薗部幸枝さんは、「科学技術と人間」の単元で、中学3年間の理科の総まとめとして、私たちの身近なことに科学技術がどのようにかかわっているのかを生徒一人一人が自由にテーマを選び調べたことをまとめて発表する授業を行った。
調べ学習のテーマは興味のあるものから選ぶ
薗部さんはまず身近なことを考えるきっかけとして、「多くの命が一度に失われるのはどのような時ですか?」と生徒たちに問いかけた。生徒たちから「災害」という言葉が出ると、薗部さんは2018年の1年間に国内でどんな災害があったかを尋ねた。生徒たちは地震、台風、豪雨、大雪、噴火と、次々に発言。「このような災害に備えるためには、まず何が起きたかを思い出して、災害を自分ごととするのが大切です」と薗部さん。
気象や大地の学習で学んできたことをこの授業で復習し、それぞれの災害のメカニズムなどを再度確認した。
科学の視点で災害をとらえた後、どのような場面でどのような技術が使われているかを調べる。その入り口のツールとして薗部さんはサイエンスウィンドウを薦めた。バックナンバーには災害に関する記事が多く載せられているので、興味のある記事を選べばテーマが決まりやすいのではと考えたからだ。
生徒たちはタブレットでバックナンバーを開き、テーマを決めると、発表に向けてまとめ上げていった。記事から情報元のサイトを訪問して発展的に学習する生徒もいた。
後日、発表が行われた。4人で班をつくり、班員の前で発表する。話し合って、班の代表を決め、代表はクラス全員の前で発表を行うのだ。
選ばれたテーマはさまざまだ。地震津波観測監視システム、ゲリラ豪雨の予測、災害用ドローンの活躍など。科学技術と私たちのかかわりについて深い学びができたようだ。
授業の流れ
テーマを選定する
サイエンスウィンドウのサイトや冊子を開き、どのような科学技術をテーマにするかを検討。
レポートを作成する
テーマとして選んだ科学技術の記事を読み、他の資料も参考にしながらレポートを作成。
班内で発表する
4人で班をつくり、全員が班員の前で発表。プリントアウトやタブレットを見せて説明する。
クラスで発表する
班の代表が前に出て発表する。生徒たちは感想シートに発表者の内容をまとめ、感想を書く。
理科には発表を通じた「学び合い」が有効
「生徒たちには、災害は身近なことだと感じてもらい、防災・減災のために科学技術が使われていることを知ってほしい。『科学技術と人間』の単元では防災を取り上げたかった」と薗部さんは語る。
科学リテラシーを身に付けるには、今回の授業で実践した「関心のあるテーマを探し、研究し、レポートをまとめ、発表する方法」が有効だという。発表では自分の言葉で説明しなければならないし、生徒たちは級友の発表を真剣に聞く。このお互いを認め合う機会が有効な「学び合い」となるのだ。
「防災・減災に対して科学技術がさまざまなかたちで貢献していることに生徒たちが気づく機会になりました。自分で考えて判断すること、そしてどういうところから情報を得てどのように考えるか、そういう能力を身に付けてほしいと思っています」
生徒たちの感想(ワークシートより)
- 防災や減災の大切さについて再確認できた
- 防災に科学技術を活用すれば人命を守れるし、災害の恐怖を削減できる
- 防災にはさまざまな科学技術が役立っている
- 科学は防災だけでなく、世界のさまざまな問題解決につながるのでは
- 高度な科学技術を持つ人間はすごい
- 防災や減災のためにもっと科学技術が発展するとよい
- 科学技術には無限大の可能性を感じた
サイエンスウィンドウを使った授業の狙い
サイエンスウィンドウは、まさに科学への興味みを開く「窓」です。興味深い内容ばかりだし、説明が簡潔で図解を多用しているので分かりやすく、生徒たちに安心して提供できます。卒業後も身近なことで関心のあることに出合ったら、サイエンスウィンドウを開いてほしいですね。
薗部幸枝(そのべ・ゆきえ)
お茶の水女子大学附属中学校 理科教諭
「Science Window」2017年秋号(10-12月) 特集「気づきの防災」
教育や社会心理学などさまざまな専門分野での防災や減災の取り組みを紹介。「災害予測の最前線」では、津波や気象などの最新の予測技術を解説。
「Science Window」2015年夏号(7-9月) 特集 「自然災害の国に生きる」
日本国土の成り立ちから地震、気象などの観測技術を紹介し、自然と向き合うことで、災害への備えを考えるきっかけとなる記事を掲載。