サイエンスウィンドウ

Open the Window~サイエンスウィンドウと子どもたち~

2018.07.31

さいたま市立芝原小学校

小学6年生理科 単元:生き物のくらしと環境
小学6年生理科 単元:生き物のくらしと環境

学校の授業や科学館、地域での科学教育に、サイエンスウィンドウがどのように活用されているのかを紹介します。

主体的な学びで生物観察とタブレット学習を両立

サイエンスウィンドウを活用する授業が、さいたま市立芝原小学校教諭 横須賀篤さんにより実施された。

理科室に集まった6年生の児童は2人から4人のグループに分かれ、各グループに1台ずつタブレットが配られた。横須賀さんの指示で、タブレットで検索エンジンの画面を立ち上げ、 検索キーワードとして“Science Window”と入力していく。「小学6年生にもなると家庭で日常的にスマートフォンに触れている子も多いですし、日々の授業でも検索はしているので操作に問題はありません」と横須賀さん。

授業で使うのは、「土と生命」(2014年冬号)の特集記事。土の中にどのような生物が生息しているかを紹介した号だ。

続いて、横須賀さんが近隣の「かかし公園」(見沼氷川公園)の森で採取してきた腐葉土が配られた。それを透明な丸水槽に移し、観察がスタートする。

腐葉土の中にはダンゴムシなどの小さな生き物たちが生息している。それをつかまえてシャーレやトレイに移し、虫眼鏡で観察する。

中にはタブレットでサイエンスウィンドウの画面に見入る子も。土の中に生息するさまざまな生物の写真を見て、「あ、これいた」「この虫いないかな」などと周りの子と話しながら、観察を続けている。

観察が終了するとグループごとの発表でしめくくる。質問は「森の土を観察して分かったこと」「サイエンスウィンドウを利用して分かったこと」の2つ。多くのグループが生物についての感想だったが、「さまざまな虫がいて、それぞれが地球のためになっていることが分かりました」「虫などの生命がいなければ土ができない」といった、サイエンスウィンドウから学んだ内容についての発表も聞かれた。

腐葉土の中にすむ本物の生物の観察とサイエンスウィンドウ誌面での情報収集。子どもたちの自発的な興味関心を引き出せれば、理科の観察授業においてもタブレットの情報を上手に活用できることを、この授業は示してくれた。

授業の流れ

タブレット、生き物を入れる透明なシャーレ、虫眼鏡、ワークシート、土(管理者の許可を得て採取したもの)、透明な丸水槽。

森の土を観察する

土や落ち葉の中の生き物を探していく。ピンセットを使用してもよい。

資料を参照する

サイエンスウィンドウの画面と自分が観察した内容を見比べ、わかったことをワークシートに書く。

感想をまとめ、発表する

観察と資料から得た情報を自分の言葉でまとめ、1名がグループを代表して発表する。


「自分ができる範囲で子どもたちに自然体験をさせたい」と語る横須賀さん。今回の授業ではグループごとに自由に観察し、タブレットを使ってサイエンスウィンドウを資料として活用した。

「観察で感じたことをみんなで話し合い、席を離れてほかのグループとも交流し、タブレットで見た情報についても意見交換をする。一見騒がしく思えても、子どもたちは自分で答えを探す授業の方が、単に講義を聴くよりもずっと学びに対して積極的になるのです。それこそが学校で学ぶ意味だと私は考えています」

横須賀さんの理科教育の基本は「実物を見せること。実物がなければ写真、写真がなければお話でもいい。とにかく情報を与えることが大切です」

サイエンスウィンドウを、子どもたちはどう受け止めたのだろう。横須賀さんに聞くと、「中には専門的な内容もありますが、子どもたちは自分で取捨選択して読んでいたので、十分活用できるでしょう」。心強い言葉が、そう返ってきた。

子どもたちの感想(ワークシートより)

  • ページをめくるだけでたくさんの資料が出てきて驚きました。
  • 「土と生命」を読んで虫や微生物がいなかったら落ち葉が土にならないことも分かりました。
  • 「土と生命」を見て靴の下に思ったより虫がたくさんいるんだなと思いました。
  • 土の中の世界が分かりました。
  • 土の中にはダンゴムシがたくさんいて、落ち葉を返すとたくさんいたので驚きました。
  • 虫のおかげで私たちが生きていることが分かりました。

横須賀さんのサイエンスウィンドウ活用のポイント

  • バックナンバーの特注タイトルの一覧表を自分で作成しています。
  • 実際の現場に行けない「火山」「防災」などの特集は積極的に活用します。
  • 教室の大画面モニターに映し出して見せるのも有効です。

横須賀篤(よこすか・あつし)
さいたま市立芝原小学校理科専任教諭。埼玉大学などが認定するCSTマスター(中核的理科教員指導者)としても活動する。

「Science Window」2014年冬号(1-3月)「土と生命」特集

土壌生物の自然界における働きの重要性や美しさを伝える特集。森の腐葉土層の断面図の写真、小学校6年生の片足の面積にどれくらいの生物がいるかの解説、生物たちのカラフルな写真などを掲載している。森の土壌にさまざまな生物がいることを体感する授業と本特集を組み合わせれば、児童の関心に応じて、知識を深めることができる。

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