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観察法のイロハのイ 日本の夏の風物詩 金魚

2018.07.31

江戸錦(左)と桜錦(右) (画像提供/川田洋之助)
江戸錦(左)と桜錦(右) (画像提供/川田洋之助)

祭りの出店で見かける金魚すくいは、日本の夏の風物詩。水の中を涼しそうに泳ぎ回る金魚の姿は、真夏の暑さを忘れさせてくれるものだ。金魚博士として親しまれている岡本信明さんに、金魚の魅力や、付き合い方について話を聞いた。

達人に聞きたいコト

私たちの身近にいる金魚ですが、その祖先をたどっていくと、約1700年前の中国(晋の時代)で発見された赤色の中国フナ(ジイ)に行きつきます。この魚が人の手によって交配が繰り返され、今日まで育てられてきました。その結果、金魚はとても人に慣れる魚になりました。

最近は、水族館やカフェなどでも、金魚を観賞する機会が増えましたが、その魅力を実感するには、飼ってみるのが一番です。

元気な金魚の見つけ方を教えて!

金魚はお店で買うのでも、金魚すくいですくうのでも、大丈夫。泳いでいる姿を見て、自分がかわいいなと思う金魚を見つけてみましょう。活発に泳いでいれば元気な証拠。泳ぎ方がおかしかったり、水面付近や水槽の底などであまり動かずにいたりするのは調子の悪い証拠です。

同じ水槽の中に調子の悪そうな金魚がいる場合は要注意。元気そうでも、既に病気に感染しているかもしれません。色がくすんでいる場合や、白い膜をかぶったように見える場合はやめて、色つやの良いものを選びましょう。

元気な金魚の探し方

元気な金魚は、動きが活発なので、まずは水の中をしっかりと泳いでいるかどうかをチェックする。金魚は種類が豊富なので、色柄、体型など、自分の好みにあったかわいいものを選んでいこう。

透明感があって、輝いているものを選ぶ。傷やくもりがある場合は要注意。

えら

両側のえらをしっかりと開いて呼吸している。片側だけでも開かないときは病気の疑いがある。

ひれ

ぴんと張っていて、きれいかどうか。裂けたり、折れたりしているものは選ばない。

傷がついていたり、うろこがはがれていない、全体的にきれいなものを選ぶ。白色や赤色の斑点が出ているものは病気かも。

金魚の品種はどうやって見分けるの?

金魚の大きな魅力の1つはバラエティの豊かさです。現在、私たちが目にする金魚には、たくさんの品種があり、それぞれ色柄、尾、目などに特徴をもっています。金魚が日本に最初にやってきたのは約500年前。それ以降も、中国で改良されたいろいろな品種が幾度となく日本にやってきました。

現在、日本で飼われている代表的な品種は約30種類あります。さらに、愛好家が繁殖させ、新たな品種にしようとしているものを加えるともっと多くなります。同じ仲間とはとても思えぬほど形や色柄が違う金魚の間でも交配(繁殖)することができます。実は、すべての金魚は生き物としては「Carassius auratus」(カラッシウス・アウラトゥス)という学名を持った、たった1種類の魚なのです。

日本でよく見られる金魚は、体型によって「和金タイプ」、「琉金タイプ」、「らんちゅうタイプ」、「オランダ獅子頭タイプ」の4つに分けることができます。和金タイプは、体が細長くてフナに近い金魚です。それに対して琉金タイプの体は丸い形で、長めの尾とひれを持っています。らんちゅうタイプは卵形の体で、背びれがありません。オランダ獅子頭タイプは、尾やひれが長めで、頭や顔にこぶが発達します。

※学名は学問上で、生き物に付ける世界共通の名称のこと

金魚と仲良く過ごすにはどうしたらいいの?

金魚は、長い年月をかけて人に慣れ親しんできたので、ほかの魚より格段に飼いやすいです。エアポンプやろ過装置などがなくても、1~2尾であれば、どんぶりや鉢が1つあれば飼うことができます。

この飼育方法は手軽ですし、金魚との距離が近くなるのでお勧めです。その代わり、毎日水替えやふんを取り除くことが基本です。自分の生活リズムに合った世話の計画を立てましょう。

大型の水槽で飼う場合は、金魚の数が多くても水替えを毎日しなくていい代わりに、ろ過装置などを入れて、金魚が水の中に出すふんやおしっこなどを取り除く必要があります。また、ろ過装置を使っていて、水が透明に見えていても、水質は少しずつ変わっていってしまいます。最低限、月に1回は水替えをするようにしましょう。

また、金魚は飼い始めて1~2週間程度で死んでしまうことがよくあります。特に、金魚すくいの金魚は、強いストレスを受けて免疫力が落ちています。金魚を家に迎えて2週間くらいは真水ではなく、0.5%の塩水で静かに飼ってあげましょう。0.5%の塩水は、塩分の濃さが金魚の体液に近いため金魚の体調回復に適しており、飼い始めに死んでしまうことを少なくすることができます。


分かるかな?金魚の違い

和金タイプ

室町時代に中国からやってきた最初の金魚の特徴を今も残している。日本で一番古いので、和金という名前がついた。体が細長く、すばやく泳ぎ回る。金魚すくいでおなじみの赤い金魚の小赤も和金タイプに入る。体が丈夫で、初心者にも飼いやすい。

琉金タイプ

小さな頭に丸みのある体をもつ。長い尾ひれをなびかせ、優雅に泳ぐ姿が人気だ。泳ぎはあまり得意ではないので、すばやく泳ぐ品種とは一緒に飼わない方がいい。江戸時代に中国から琉球を経て輸入されたことから、その名が付いたといわれている。

オランダ獅子頭タイプ

頭部に大きなこぶをもち、体ががっしりとしている。体型は細長く成長するものと丸っこいものと2つのタイプに分かれる。かなり大きくなる素質があるので、大きな水槽や池でゆとりをもって育てるのがお勧め。オランダという名をもつが、江戸時代に中国から輸入された

らんちゅうタイプ

体型は背びれのない卵形。頭部にこぶが発達し、それぞれのひれは短め。和金の変異で、背びれのなくなった「マルコ」という品種を改良したもの。江戸時代終盤から明治にかけて、現在に近い形になった。愛好家が多く、品評会が盛んにおこなわれている。

金魚画像提供/川田洋之助
金魚画像提供/川田洋之助

金魚ともっと仲良く過ごすために

水から出したり移動させたりすることは、金魚にとって大きなストレスとなる。初めて家に迎えた日から2週間くらいは、真水ではなく0.5%の塩水で静かに飼おう。そうすることで、金魚の体調を回復させることができる。

金魚を飼う水は水道水で十分だが、バケツなどに1日汲んでおいて、塩素を抜いてから使う。浄水器や市販の中和剤を使って、塩素を抜く方法でも大丈夫。水を替えるときは、一度にすべて替えるのではなく、もとの水を少し残して新しい水を足すようにしよう。

えさ

えさは1日2〜3回に分けて、数分で食べきる量を与える。えさの与えすぎは、水の汚れや病気などを引き起こすので要注意。毎日こまめに観察して、ストローをスポイトのように使ってふんを取り除いたり、水の色やにおいなどをチェックする習慣をつけておくと、病気やトラブルを予防することができる。

岡本信明(おかもと・のぶあき)
学校法人トキワ松学園(東京目黒)理事長・横浜美術大学学長。1951年生まれ。専門は魚類病態生理学・魚類遺伝生理学。主に魚を病気から守るための研究をおこなってきた。2012年から2016年3月まで東京海洋大学学長を務める。著書は『どんぶり金魚の楽しみ方 世界で一番身近な金魚の飼育法』(共著、池田書店)、『金魚KINGYO ジャパノロジー・コレクション』(共著、角川ソフィア文庫)など多数。

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