サイエンスクリップ

途上国の理科・科学、科学技術水準の現状と課題ー 第6回「理科・数学教育を通じて日本が求められている国際貢献」

2008.08.22

 このコーナーでは、途上国の科学技術の水準や、理科教育における現状および今後の課題について、青年海外協力隊に理科教師として参加した4人の体験談も交えながら、6回シリーズでご紹介しています。なお、青年海外協力隊事業は、「開発途上地域の住民を対象として当該開発途上地域の経済および社会の発展または復興に協力することを目的とする国民などの協力活動を促進し、および助長する」ことを目的に、国際協力機構(JICA)によって実施されています。

目で見て分かる実験は生徒に人気
目で見て分かる実験は生徒に人気

 戦後60有余年、無の状態から今日に至るまで、わが国の科学技術の進歩・発展は、国際的にも高く評価されている。途上国が日本の理数科・技術教育を学び、頼るゆえんである。国の発展は教育の発展とともにあるといても過言ではないと考えるが、わが国の教育は、戦後始まったわけではなく、日本の歴史とともに智恵や技術の伝承が技術を伴ったものづくり国として発展してきたと言えよう。

 今、理科・数学教育を通じて日本が求められている国際貢献を考えた時、今後の方向性として、理数科教育に関しては、当然、理科・数学教育における教科内容としての国際社会に通用する基本的な単位、法則等々をはじめ、学習内容の理解と定着が必然である。しかし、それ以上に重要なことは、現地の教員が自国の子どもたちにしっかりと理数科教育を行うことができるようになることである。教育に関しては、日々の蓄積がいつか花咲くことを考えると、日本がやるべき理科・数学教育を通しての途上国への支援は、日本の教育内容や方法を 押し付けるのではなく、それぞれの国の歴史を踏まえた人間協力に基づいた支援を行うことではなかろうか。

 派遣前に行う理数科教師の研修で必ず伝えていることがある。「理科あるいは数学という教科を通して人間育成をする。それが理数科教育である」と・・・。派遣隊員の活動は、共に働いた現地の教員や教え育てた子どもたちが、いつかその国を担い、将来日本はもちろんのこと国際的な交流・発展に貢献するものと思う。

 国際協力機構(JICA)ではボランテイア活動として、青年海外協力隊(20歳〜39歳)とシニア海外ボランテイア(40歳〜69歳)の理数科教師を派遣している。

協力隊員から真剣に学ぶ生徒たち
協力隊員から真剣に学ぶ生徒たち

 もちろん、理科や数学の教員免許状を有していることは最も望ましい。しかし、特に免許を有していなくとも心から子どもを愛し、子どもたちに伝えたい心があれば、日本での理科や数学の学習経験を生かしたボランテイア活動ができるものでもあり、その門戸は広い。

 このようなことからも理科や数学の教科指導を通したボランテイア活動に関心がある若者、そしてシニア層の積極的な応募(参加)を期待するのである。

 あなたを待っている途上国の子どもたちのために・・・。「ボランテイア活動は、与えることよりも学ぶことのほうが多かった」と言った帰国隊員がいるように、たった2年間の体験とはいえ、あなたの生き方に計り知れない素晴らしい可能性を与えてくれることは間違いない。

青年海外協力隊に参加しませんか?

 青年海外協力隊は1965年に発足以来、累計3万人以上の方々が参加。
そのうち2000人以上の方々が約40カ国で理数科教師隊員として活躍してきました。

あなたの支援を待つ子どもたち
あなたの支援を待つ子どもたち

 活動期間は原則2年。この間、様々な経験を通じて語学力や指導力といった能力の向上はもちろん、自分自身の価値観・世界観が変わり、内面的にも大きく成長するチャンスです。

 1カ月以上から参加できる「短期ボランティア」派遣制度や現在お仕事されている方が、「休職」などの形で職場に身分を残したまま参加できる「現職参加」制度もあります。
ご関心のある方はぜひご応募ください。

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