レビュー

原子力発電離れは確実だが

2011.11.25

 東海第二原子力発電所を抱える茨城県民の原子力発電に対する見方はどう変化しているか。茨城大学地域総合研究所が公表した周辺住民の意識調査結果は、日本の原子力研究開発の誕生地とも言える茨城県においても、確実に原子力離れが進んでいることを伺わせる。

 茨城大学地域総合研究所は、日本原電東海第二原発と日本原子力研究開発機構の原子力施設がある東海村と、隣接地域である日立市南部、那珂市、ひたちなか市の住民に対するアンケート結果を公表したのに続き、ひたちなか市、那珂市の南側に位置し、原発、原子力施設からより離れた場所に位置する水戸市住民に対するアンケート結果を新たに公表した。

 水戸市民に対する調査は、7-8月にかけて行われ、回答者は867人、回収率28.9%だった。結果は、東北地方太平洋沖地震以降、運転を停止している東海第二原発について「廃炉に向けて準備し、原子炉の新増設をしない」が34%、「再稼働は凍結し、今後については白紙から議論すべき」が15%だった。

 これは、6-8月に実施された日立市南部、那珂市、ひたちなか市住民1,320人(回収率33.0%)に対する調査結果の数値「廃炉に向けて準備し、原子炉の新増設をしない」32%と、「再稼働は凍結し、今後については白紙から議論すべき」13%を、いずれもわずかながら上回っている。「なるべく早く運転再開した方がよい」は日立市南部、那珂市、ひたちなか市住民の調査では5%だったのが水戸市民では4%に、「老朽化した炉に代わる新型炉を新設」も日立市南部、那珂市、ひたちなか市住民の調査では6%だったのが、水戸市民では4%に、いずれもわずかとはいえさらに少なくなっている。

 営業運転開始から32年たつ東海第二原発に対し「保守・点検を適切に行い慎重に運転しても危険」という回答も、日立市南部、那珂市、ひたちなか市住民で60%、水戸市民で64%に上った。

 茨城大学地域総合研究所は、昨年も同様のアンケートを日立市南部、那珂市、ひたちなか市住民に対し実施している。この時は「保守・点検を適切に行い慎重に運転しても危険」という回答は37%だったから、福島第一原発事故によって、原子力発電に対する見方が茨城県でも大きく変わったのは明らかだ。ちなみに1年前は「保守・点検を適切に行い慎重に運転すれば危険はない」という回答が50%に達していた。

 一方、「原子力関係施設が新たに立地することで雇用機会や新たな産業の創出が期待できる」という問いに対しては、「そう思う」という回答が水戸市民で9%、日立市南部、那珂市、ひたちなか市住民で13%、「どちらかと言えばそう思う」が水戸市民で27%、日立市南部、那珂市、ひたちなか市住民で30%あるのが、目を引く。

 「そう思わない」と「どちらかと言えばそう思わない」を合わせた回答は、水戸市民24%、日立市南部、那珂市、ひたちなか市住民23%だから、雇用、産業創出という面では原子力施設にプラスのイメージを持つ人が多いことを示しているといえそうだ。事実、1年前の調査結果と比べても、雇用、産業創出が期待できるとする答えは、あまり減っていない。

 「日立市、東海村、那珂市、ひたちなか市住民と同様に、水戸市住民も福島原発事故で日常生活上の大きな影響を受け、その結果、県内の原子力発電所をはじめとした原子力施設の安全性について大きな不安をいだくようになったということを示している」

 調査チームはこのようにまとめている。それも妥当だろうが、「なぜ科学技術としての、あるいは地域振興策としての原発が『魅力的』なのか見る必要がある」と開沼 博氏(東京大学大学院 学際情報学府博士課程在籍、福島県出身)が指摘している現実(2011年9月29日オピニオン「3.11以前からの『フクシマ』の目撃者として」参照)も、この調査結果から読み取れないだろうか。

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