総額2,700億円の研究支援基金とともに補正予算で大きな関心を集めている695億円の地域産学官共同研究拠点整備事業費をどのように地域発イノベーション創出に生かすか、事業推進方策を検討する「産学官イノベーション創出拠点推進委員会」の初会合が18日、行われた。
同委員会には、新たに始まる「地域産学官拠点整備事業」の基本方針のほか、最大で都道府県各1カ所ずつ新たに設けられることになるとみられる産学官イノベーション創出拠点の公募要領を7月末までにまとめる役目が与えられている。
有馬朗人委員長をはじめ25人の委員会メンバーは、知事、地方の大学の現・前学長、企業経営者、地方に多くの出先機関を持つ独立行政法人役員、ブロック・地方紙幹部などからなっている。広範囲の意見を取り入れたいという事業実施機関、科学技術振興機構の思惑とともに、地方の関心の深さを示していると言ええそうだ。ただし、委員から出された意見、質問はさまざま。産学官イノベーション創出拠点各地域の活性化にこの予算をいかに効果的に使うかについては、まだ各地域とも明確な構想を持ち得ていないように見える。
科学技術振興機構によると、機構は建物・研究設備の建設・製作を担い建物の所有者となる。他方、地域は拠点整備事業の構想・計画の立案、土地の提供と拠点の運用責任を持つ。
「既存の施設がいろいろある。これらを統合するという形は可能か」という質問が元大学総長の委員から出た。「施設については増築も可能」というのが科学技術振興機構の答えで、既存の施設の活用も事業の目的、条件を満たしさえすれば認められることになりそうだ。
別の地方大学学長からは「地域活性化ということでは多様な価値観を取り入れてほしい」という要望が出た。これは地元にこれぞという企業がなく地域における産学連携が進んでいないという事情によるもののようで、こうした事情を抱えるのはこの地域に限らない可能性があるとみられる。
このほか県知事あるいは知事代理などから施設・設備をつくるだけでなくその後必要になる負担についても支援してほしいと要望が強く出された。これに対する科学技術振興機構の説明は「運用経費については地域の負担。建物・設備を作ってから何をするかは地域に任せている」。一方、北澤宏一・科学技術振興機構理事長は「地域からの提案によっては機構として応援も考える」と答えている。運用費負担の問題は、この先も引き続き地方から強い要望として出されそうだ。
運用費に加え、地域には人がいないという発言があった。産学官をとりまとめる人材の育成や確保というこれまでにもしばしば指摘されていた課題が、拠点の運用費確保とともにこの事業を機にあらためて大きな問題となるとみられる。
科学技術振興機構が示した拠点整備のスケジュール案によると、今年度に各県1件、数億円から最大30億円の提案を公募、審査を経て年内に設計を完了、来年度遅くても再来年度までに拠点を建設、2011年度以降に運営開始となっている。