ワールド・クラシック・ベースボール(WBC)で、日本人の野球好きにあらためて驚いた。昼間の野球中継を見ていた年齢層がどうだったのか分からないが、これほどの視聴率がとれる番組というのはそうはないはずだ。子どものころの遊びといえば野球、という編集者の世代以上ならWBCに熱中するのはよく分かる。しかし、もっと若い人たちの多くも見ないとこんな高い視聴率は得られない。日本で野球の人気はまだまだ高いということだろう。
それにしてもである。25日から26日にかけて各新聞に一斉に載った社説が、ほとんど同じような書き方だったのが気になった。閉塞感を打ち破るような快挙、という。多くの人がとっくに感じていることを社説欄でさらに念押しするようなものだ。読者と同じ目線で紙面をという姿勢が、各新聞社に徹底してきたということなのだろうか。
野球の記事ならこの人、と敬服する豊田泰光氏はやはり、ひと味違うことを26日の日経新聞スポーツ面のコラム「チェンジアップ」で書いていた。大けがをした村田選手に触れて、この時期に野球選手に目いっぱいのプレーを強いるのがいかに危ういことかを指摘している。
先日、野球部員だった高校の同級生と話した時に、冬の間だけは練習しかやらないので家から通った、と言っていたことを思い出す。ボールを握らず体作りの練習しかせず、練習時間も短かかったからという。交通が不便な村出身なので、冬以外は市内に下宿していたのである。豊田氏の記事と、急に思い出した同級生の言葉から気がついたことは、野球選手というのは、かなり無理な体の使い方をしているのかも、ということである。だから、寒くて体がスムーズに動きにくい冬の間はボールを投げたり、バットを振ったりしないということではないか。3日前のこの欄(3月24日編集だより)で書いたばかりのことを一部、修正した方がよいかもしれない。野球のボールを投げるのは自然の体の動きで、バスケットボールのシュートやパスは自然の動作とは異なる、と書いた個所についてである。
野球のボールを思い切って投げる動作にしても、バットを振る動作にしても、実は特定の体の部分にだけものすごい負荷がかかる。春先、野球をやる状態にまで体がほぐれてなく、ヒートアップもしていない状態で、フル回転してしまうとどうなるか。もっとも負荷がかかる個所が悲鳴を上げてしまう危険がある。豊田氏の言ってることはそういうことではないか、と思いついた次第だ。
考えてみると、バスケットボールもサッカー、ラグビーも冬のスポーツとされている。体がすぐには温まらない冬にやっても野球と違って故障の心配は少ないということだろう。体の動かし方が野球より自然ということではないだろうか。全身の関節や筋肉を野球の選手よりほぼ万遍なく使うからかもしれない。
日本の優勝をスモールベースボールの勝利と書いた記事もあった。多くの米国人大リーガーは、腕っ節の強さにまかせて投げたり、打ったりしてなんとかなってしまう。多くの日本人選手のように体を万遍なく使うことをしていないのでは、と考えると面白い。だから、この時期怖くて目いっぱい動けなかったのだ、と。
小岩井忠道