レビュー

日本は、金貸し立国?

2006.11.14

 13日の夕刊ないし14日朝刊の新聞各紙に、財務省が発表した2006年度上半期の国際収支が報じられている。一面に持ってきたのは日経新聞(13日夕刊)だけだったので、見落とした読者も相当いたかもしれない。

 3半期連続で、所得黒字が貿易黒字を上回った、というのがポイントである。

 国際収支の中で、「モノやサービス、投資を含めた海外との総合的な取引状況を示す」(日経新聞)経常収支は、貿易収支、サービス収支と所得収支から成る。

 日経新聞によると、所得収支とは「日本の企業や投資家が海外から受け取った配当金や利子から支払った分を差し引いたもの」(証券投資収益)に、「現地子会社などが内部留保した分」(直接投資収益)を加えたものをいう。

 貿易収支の方は、2004年下半期から、4半期連続で黒字が縮小しているのに対し、所得収支の黒字は、2005年上半期以来、貿易収支の黒字を上回り続けているということだ。

 「『投資で稼ぐ』鮮明」(日経新聞見出し)、「日本の経済収支構造がこれまでの貿易中心から金融資産による収入へ重心を移しつつあることを示した」(東京新聞13日夕刊、産経新聞14日朝刊)、「日本経済が輸出頼みの『貿易立国』から、海外投資でも稼ぐ『投資立国』に移りつつあることが一段と鮮明になってきた」(読売新聞14日朝刊)。

 原料は海外から輸入しても、価値の高い製品、技術を輸出して稼ぐ。これこそ日本の生きる道−。こうした考えがすっかり頭に染みこんでしまっている人は多いのではないだろうか。しかし、現実は、どんどん変わっているようだ。

 「(日本は)1991年には英国を抜いて世界第一位の海外純資産保有国になりました。…この海外資産運用による海外からの所得が毎年数兆円に増大してきています。… 現在のすう勢からすると、間もなく日本は貿易黒字よりも海外所得の方が多くなる、すなわち『貿易立国』というより『金貸し立国』になりかかっているといっても過言ではありません」

 日本学術会議会員でもある北澤宏一・科学技術振興機構理事が、昨年3月発行の著書「科学技術者のみた日本・経済の夢」の中で、指摘していたことを思い出す。(新聞の引用は東京版から)

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