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「どーして夏は暑いの?」
「どーしてテレビは映るの?」
「どーしてあたしはパパと似ているの?」
子どもの口から飛び出す”どーして?” 大人であれば「そんなことは当たり前」と流してしまうような素朴な疑問。漠然とは知っているが、いざ答えようとすると、うまく説明できなくて困る疑問。 本書では、そんな子どもの疑問を親子の会話形式で解説していく。
対象とする分野は幅広く、天文・地学、電気通信、電気・磁気、食品化学、人体、天文、物理、化学、遺伝など多岐にわたる。「ロケットの発射台が種子島に設置されているわけ」「インフルエンザワクチンの製造に時間がかかる理由」「地上波デジタルテレビへの移行の意味」など、バラエティーに富んだ理科の常識がギュッと収められている。一章が30ページ程度なので、隙間時間をつかって、理科を楽しむことができる。
さらに、一人の父親として参考になるのは、本書内での親子のやり取りだ。
きっかけは日常のちょっとした疑問から。ひとつを解決すると、子どものさらなる“どーして?“が飛び出す。子どもの”どーして?”をうまく引き出しているのは、実は、父親の絶妙な返しである。子どもの疑問にしっかり回答しながらも、解説の中でプラスアルファの関連情報を提供し、子どもに新たな気づきを与えている。その結果、回答と疑問が連鎖して、次々と”どーして?”の対象が広がっていくのである。
例えば、金属がピカピカに光るのはなぜか?という疑問には、まず、目が色を認識する仕組みの説明。次に、光の正体である電磁波や、光を反射する金属の原子構造の解説。そして、鉄を含む血液の話につながり、最終的に動脈と静脈がなぜ色が違ってみえるのかまで話が及ぶ。
繰り返される二人のやり取りによって、ひとつひとつは関連がないようにみえる理科の公式や原理が、パズルのように組み合わさって、答えを描き出していくため、子どもの興味の世界は自然と広がっていく。
また、解説に使われている図や表は、どこか教科書で見た覚えのあるものも多い。あのころ暗記するだけで味気のなかった理科の法則も、こうした文脈の流れにのせることによって、彩りのある活きた情報として役立てることができるのだ。
本書は、”父親として知っておきたい理科の常識”を身につけると同時に、”子どもへの理科の伝え方”も学べる一冊である。普段は「ネットで調べろ」とついつい言ってしまう父親も、一度、目を通してはいかがだろうか? 好奇心あふれる子どもの”どーして?”を大事にするために。