レポート

科学のおすすめ本ー 読んでなっとく物理の疑問 -科学の不思議が楽しくわかる-

2010.02.08

深澤直人 / 推薦者/SciencePortal特派員

読んでなっとく物理の疑問 -科学の不思議が楽しくわかる-
 ISBN: 978-4-7741-4097-1
 定 価: 1,480円+税
 監 修: 左巻健男 氏
 編集・執筆: 高橋善樹 氏
 執 筆: 池田圭一 氏、一色健司 氏、浮田裕 氏、桑嶋幹 氏、十河秀敏 氏、田中岳彦 氏、常見俊直 氏、露本伊佐男 氏、寺園淳也 氏、西原浩 氏、藤村陽 氏、船田優 氏、松原郁哉 氏、南伸昌 氏、山口道麿 氏、山下芳樹 氏
 出 版: 技術評論社
 頁: 224頁
 出版日: 2010年1月10日

本書は、Q&Aサイト「OKWavea」に寄せられた質問をベースとして、物理に関連のある質問から読者の関心の高いと思われる事柄を集めて16名の執筆者が回答を試みた本です。本書で扱う質問は一般の人が直接OKWaveにぶつけた疑問の中から選ばれており、多くの人の関心を引く質問が多いように思います。それでも、書籍の名前が多少硬い感もいなめず、幅広い層に受け入れられる本とはならないかもしれません。ちなみに、化学に関しては姉妹書「読んでなっとく化学の疑問-科学の不思議が楽しくわかる-(監修:左巻健男、出版社:技術評論者)」が出版されています。

本書は現時点でほぼ確実に明らかとなった事実を解説する本ではありません。序文にあるとおり、『「そういう回答をするのか」と、回答を楽しめる』本なのです。そもそも、一般の人の感じる疑問の大半は今の科学では明確に回答を与えることができないのです。むしろ、そのことを認識してもらいたい、既知のことから未知の疑問へと回答するそのプロセスをみんなで共有することが大事である、と執筆者らは考えているのではないでしょうか。そこに科学の楽しさがあるように思います。なので、読者の方には是非自分でも回答を作ってみることをオススメします。そして、10年後にでももういちど本書を読み返したときに、その回答が変わっているのか吟味してみるという楽しみ方もあると思います。科学の知識は日々更新されているのですから。

本書の構成は2章構成となっており合わせて約60問の疑問がありますが、基本的にはお互い独立していますので興味のあるものから読めますし、1つの回答あたり3,4ページと分量も多くなく読みやすいです。第1章は「宇宙空間で感じる不思議」というタイトルとなっています。宇宙に関する質問が内容の半分を占めるということは、一般の人の宇宙に関する興味の高さを示しています。確かに無重力状態の宇宙空間は非日常的な空間ですから、「宇宙でオナラをするとどうなる?」「無重力での炎はどんなかたち?」など疑問は尽きません。この章には宇宙に関することだけでなく、タイムマシンに関係する質問もあるので、興味を持つ方も多いと思います。第2章は「教科書で感じる不思議」と銘打っていますので、勝手に「高校の」教科書レベルの話だと思い込んで読んでしまいましたが、そんなことはありません。質問の大半は大学教養課程程度の内容が含まれていますし、「透明人間は可能ですか?」の回答などに見られるように最先端の研究結果を紹介する場面もあります。

最後に問題点を挙げるとすれば、本書で扱われた質問とそれに対応するWebページのリンクが不十分なことです。本書巻末にリンク先一覧が箇条書きされていますが、どの質問と対応するかが示されていません。本書の楽しみ方として、執筆者が考える回答だけでなく、Web上で行われた議論を実際に比較してみるのも面白いと思いますが、その際に対応するリンクがわからないと不便に感じると思いますし、活用できないのであれば掲載する意味がないでしょう。

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