レポート

科学のおすすめ本ー 読んでなっとく化学の疑問 -科学の不思議が楽しくわかる-

2010.01.19

立花浩司 / 推薦者/SciencePortal特派員

読んでなっとく化学の疑問 -科学の不思議が楽しくわかる-
 ISBN: 978-4-7741-4096-4
 定 価: 1,480円+税
 監 修: 左巻健男 氏
 編集・執筆: 一色健司 氏
 執 筆: 安藤尚功 氏、池田圭一 氏、大川祐輔 氏、桑島幹 氏、小沼順子 氏、坂根弦太 氏、澁谷亘 氏、谷本泰正 氏、藤村陽 氏、南伸昌 氏
 出 版: 技術評論社
 頁: 224頁
 出版日: 2010年1月10日

本書は、インターネット上のQ&Aサイト「OKWave」の化学カテゴリーに寄せられた投稿をもとに再構成された、『化学の疑問』シリーズの第2弾です。月刊誌「RiKaTan」編集長としておなじみの左巻健男さんが監修者となり、都合11名の方々が、メーリングリストを通じてブラッシュアップしながら編まれたものです。科学書というよりもむしろ一般書として、化学を専門にしない方でも広く読んでいただける内容につくられています。

前半部分では、ふだんの生活の中でふと気づいた疑問、また後半部分では教科書を読んだ中で感じたさまざまな疑問、という章立てがされています。例えば、「酸素は毒!?」「焼き芋とダイオキシン」「純水は体に良くない?」「合理的な洗顔方法」などの疑問は前半に、「におう仕組み」「水が凍る秘密」「熱くない…燃えない…なんで?」などの疑問は後半に掲載されています。ただ、便宜的に章を分けているだけのようですので、百科事典をブラウジングするように、章立てにこだわらず、興味に合わせて自由にページを開いていくと、きっと楽しく読めるものと思います。

『化学の疑問』シリーズのベースとなっている、「OKWave」のようなQ&Aサイトが持続的に成立するためには、(1)世の中の事象に関する疑問を感じても、いまさら聞けない、あるいは聞ける相手が周囲にいないという人たち (2)これまでの経験を生かしたい、困っている人を助けて自分自身もハッピーになりたいという人たち—のバランスが、うまくとれていることが必要不可欠のように思えます。私自身、過去に「OKWave」の仕組みを用いた、科学系のある会社のQ&Aサイトの回答者ボランティアを経験したことがあります。しかし、残念なことに開設から数年でサイト自体が閉鎖されてしまいました。これは、そもそもサイトに質問を寄せてくる件数が少なかったこと、たまに質問を寄せてくる方がおられても、回答者の母集団が少なかったために、ある程度の質を担保した回答が速やかにできる時間に余裕のある人が常に確保できなかったということがあったからだと思います。いくらよいシステムを導入しても、システムを運営していくのは、あくまでも「人」なのです。

この本を読まれて、ウェブのQ&Aサイト自体に興味を持たれたら、ぜひ回答する側に立ってみられることをお勧めします。お互いに知っている知識・情報を持ち寄ることによって、集合知が生まれます。ウィキペディアのようなウェブ百科事典も、多くの方々の利他的行動に基づく集合知によって成り立っています。今までみなさんが蓄積してきた知識や経験が、きっとどこかで活用され、だれかの役に立つと思います。本書は、単に化学の知識を増やすだけではなく、ウェブを通じて情報発信するよいきっかけを与えてくれることでしょう。

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