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文系、医学系志向の学生を原子力に引き寄せるには(上坂 充 氏 / 東京大学大学院 工学系研究科原子力専攻 教授)

2007.06.08

上坂 充 氏 / 東京大学大学院 工学系研究科原子力専攻 教授

原子力総合シンポジウム・パネルディスカッション「エネルギー教育-持続可能な成長基盤の確立に向けた産・官・学一体の取り組み」(2007年5月30日、日本学術会議総合工学委員会 主催)報告から

 慢性的な理科離れの中、クラシカルな理工学を志向する学生の数は、20〜30年前の6、7割ではないか。残りの2割は法律、経済といった文系志向で、1割は医学系志向の学生であると実感する。クラシカルな理工学の重要性や楽しさをアピールしても、原子力分野、ひいては工学部全体の人気回復には寄与しないのでは、と感じている。

 東京大学は大学院に原子力専攻を開校し3年目を迎えた。1学年15〜17人の学生を教育している。司法試験に強く関連する専門職大学院である法科大学院の正確な名称は法曹養成専攻というが、この大学院のみでは将来の法学者の育成ができないため、並行して一般法政専攻を設置し、実務教育と一般研究教育の両方を行っている。

 この形態を参考にして、研究型の一般大学院である原子力国際専攻を原子力専攻に併置した。原子力国際専攻の研究教育分野の3本柱は「先進原子力エネルギー工学」、「先進レーザー・ビーム科学と医学物理」、「原子力社会工学」だ。原子力社会工学には、核不拡散と安全保障、科学技術と社会システム設計が含まれる。この原子力社会工学や医学物理は、法律、経済といった文系志向の学生や医学系志向の学生に有効だろう。原子力という分野をそのような志向の学生に呼びかけるための、現代に合わせた“言語”といえるかもしれない。

 重要なことは、原子力の分野も基盤部分は堅持するものの、他の分野を融合し変わるべきところは拡大改新していくことと考える。

上坂 充(うえさか みつる)氏のプロフィール
1957年生まれ、80年東京大学工学部原子力工学科卒業、85年東京大学大学院工学系研究科原子力工学専門課程博士課程修了、石川島播磨重工業入社、91年東京大学工学部附属原子力工学研究施設助教授、99年同教授、2005年から現職。

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