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「グローバル人材に欠かせない力 -- 2013年の議論のために」

橋本 明子(国際基督教大学(ICU)行政事務部 部長代理)

掲載日:2013年1月11日

日本の閉塞感を打破し、世界で活躍する「グローバル人材」をどう育むのか――。2013年も高等教育関係者と経済界が、活発な議論を交わすことだろう。1953年の創立以来、国際性を使命の一つに掲げ、60年にわたりグローバル人材を育んできた本学にとって、昨夏に一つの節目となるイベントがあった。今年の議論の材料になればと願い、ここに紹介したい。

グローバル人材に欠かせない力 -- 2013年の議論のために
夏休みも終わりに近づいた2012年8月下旬の5日間、本学も加盟するACUCA(アジア・キリスト教大学協会)のスチューデントキャンプがキャンパスで開催され、アジアの8カ国・地域、41大学から100人の学生が集まった。期間中は全員がキャンパス内の教育寮に住み、今回のテーマ「持続可能な社会に向け、若者ができること」について、自国の現状を報告し、課題を挙げ、解決法を探り、それを伝えあった。

グループディスカッションの時間は、たっぷりと準備された。ほとんどの学生が英語を母語としない。しかし、他の学生に聞いてみたいこと、知りたいこと、皆に伝えたいことはたくさんある。自然と誰もが、自分の持てる力を発揮できる場を探していた。英語運用能力の高い学生はプレゼンテーション原稿を準備し、デザインを学ぶ学生はパソコンを持ち出し、訴求力のある資料を作った。煮詰まった議論にユーモアを持ち込んで、空気を和らげる学生もいた。ディスカッション以外の時間には、各国の文化を紹介する時間もあり、学生はプレゼンテーションに音楽を交えるなどして、自国への理解を深めてもらうことに懸命だった。

グローバル人材に欠かせない力 -- 2013年の議論のために
共に考え、寝食を共にし、共に祈る。そのような5日間を過ごし、学生はどう変わったか。最終日前夜のクロージングセレモニーは、参加した誰もの心を熱くした。学生は踊り、歌い、笑い、別れを惜しんだ。会場は「ただこうして、一緒にいることが楽しい」という空気に満ちていた。そして学生は、5日間の議論を集約した「東京アピール」を宣言した。その内容は「私たちは、コミュニケーション、教育、ネットワークを通じて、地球自然環境への気づきを醸成する」というものだ。学生は、目の前にいる友人が暮らす国の現状に気付き、その友人が暮らす自然環境を思いやるようになった。その後も彼らはSNSを駆使してつながっている。旅の途中で友人を訪ねたり、友人の国への留学を決めたりしているという。

グローバル人材に欠かせない力 -- 2013年の議論のために
グローバル人材を育むために、大学職員ができることは、こうして学生が国を超えて実際に出会う場を設けることだと、私も気付いたイベントであった。

最後に、礼拝で、本学の魯恩碩・准教授(専門は宗教学。当時ACUCA事務局長)の語った言葉がある。「この世界で一番のお金持ちは誰でしょう。誰もが知る、世界的企業のCEOかもしれません。では、この世界で一番貧しい人は誰でしょう。考えたことがありますか。皆さん、小さいものに心を配ることを忘れないでください」

世界のために活躍するグローバル人材に欠かすことのできない能力、その一つは、自身の未知に思いをはせる力、つまり、あらゆるものに気付く力なのだろう。

(写真撮影:国際基督教大学 教養学部 アーツ・サイエンス学科 2年 中川 愛)    


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