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次世代の科学者を育てる「グローバルサイエンスキャンパス」 第3回 全国受講生研究発表会を開催

科学技術振興機構 理数学習推進部長 大槻 肇 氏

掲載日:2016年11月4日

9月18・19日、一橋大学一橋講堂にて「グローバルサイエンスキャンパス平成28年度全国受講生研究発表会」を開催した。高校生ら100名が日ごろの研究成果を披露し、仲間との交流の輪も生まれたようだ。

全国1,200名の高校生らが受講する理系人材育成のためのプログラム

科学技術振興機構(JST)理数学習推進部は、2014(平成26)年度より、国際的に活躍できる科学技術系人材の育成を目的に、全国の大学などと連携して「グローバルサイエンスキャンパス(GSC)」事業を展開している。

この事業では、卓越した意欲・能力を持つ高校生らを対象に、国際的な活動を含む高度で体系的な理数教育プログラムを提供することにより、さらなる才能育成を図ることを目的としている。全国15大学が多様なプログラムを実施し、約1,200名が受講している。

GSC全国受講生研究発表会は、プログラムに参加する高校生たちが集合する一大イベント。今年で3回目となる発表会には、15大学の受講生を代表して約100名が参加し、GSCプログラムの下で個人・グループで取り組んできた研究成果を発表した。

開会に際して挨拶したJSTの安藤慶明(あんどう よしあき)総括担当理事は、「皆さんのような科学と学問が大好きな人たちこそ、将来の日本をリードする人材に育ってほしい。その過程で大切なことは、“挑戦”と“輪”だと思う。この発表会にも全力で挑戦して、科学研究で重要な良い輪・ネットワークをつくる機会にしてほしい」と呼びかけた。

これからの科学者に必要な力を育成、その成果は?

写真1 ポスターの発表風景
写真 ポスターの発表風景

研究発表は時間を区切ったポスター形式で行われ、総勢52名の大学教員などが審査にあたった。研究内容の専門的水準に加え、科学的探究能力の獲得度合い、研究の意義や社会的貢献などについて適切にアピールする能力など、次世代の科学者に求められるスキルを評価した。

北海道大学で受講した高校2年の鈴木光(すずき ひかる)さんは、4人で行ったグループ研究の成果を発表した。生徒自身が研究テーマの設定から行えると聞き、プログラムに参加している仲間と議論。衛星画像解析によるインドネシアの森林火災発生地域の予測をテーマに選んだ。

写真2 「インドネシアの森林火災発生地域の予測に向けた衛星画像解析」のテーマで発表する鈴木光さん
写真 「インドネシアの森林火災発生地域の予測に向けた衛星画像解析」のテーマで発表する鈴木光さん

「研究者たちが、実際にどういう思考回路を経てテーマを設定し、研究を進めていくのかを、講義ではなく五感を使って体験できたことが一番の収穫。科学研究に必要となる論理的思考が身についた」と振り返った。

指導を担当した高橋幸弘(たかはし ゆきひろ)北海道大学理学部地球惑星科学科教授は、「人類が直面している地球規模の課題は沢山あり、そういった課題には従来のわれわれのやり方では解けない問題が多く存在する。そのような課題は、彼(高校生)らの新しい視点がなければ乗り越えられない。私たち大学側が特に意識したのは、彼らに前倒しで大学の研究室に入って体験してもらうことではなく、高校生ならではの新しい視点で問題解決に臨むということであり、われわれに欠けていたものを彼らに達成して欲しいという気持ちで指導している」と指導方針を説明する。

研究レベルとプレゼン能力の向上を評価

発表会2日目、さらに交流を深める場として、午前中は科学分野における先進的な話題をもとに6つのグループに分け、アカデミックセミナーを実施した。受講生、指導教員は各自の希望コースに参加し、聴講だけに留まらず、立場を越えて活発な意見交換を行った。続くランチミーティングでは、昼食を取りながら、受講生同士、指導教員同士がそれぞれのテーブルで自己紹介をした後、前日のポスター発表の様子や研究テーマ、指導の感想などを語り合った。

写真 アカデミックセミナーの討論風景(2点とも) 写真 アカデミックセミナーの討論風景(2点とも)
写真 アカデミックセミナーの討論風景(2点とも)
写真 ランチミーティングの風景(左)、優秀賞受賞者の記念撮影(右) 写真 ランチミーティングの風景(左)、優秀賞受賞者の記念撮影(右)
写真 ランチミーティングの風景(左)、優秀賞受賞者の記念撮影(右)

発表会の最後には、全53件から選ばれた優秀賞16件に対して表彰を行った。表彰された受講生は、全員が一言ずつ、受賞の喜びや審査の厳しさなどの感想を語った。その一人、宇都宮大学で受講した高校2年の星野成美(ほしの なるみ)さんは、GSCプログラムについて、「高校の授業では味わえない、答えのない問題に立ち向かう面白さを感じた」と振り返った。同じく高校2年で筑波大学受講生の田渕宏太朗(たぶち こうたろう)さんは今回の発表会の成果を、「他大学の先生方から、厳しいけれど嬉しい指摘をたくさんいただいた。今後の研究の改善につなげたい」と語った。

写真 感想を語る星野成美さん(左)、感想を語る田渕宏太朗さん(右) 写真 ランチミーティングの風景(左)、優秀賞受賞者の記念撮影(右)
写真 感想を語る星野成美さん(左)、感想を語る田渕宏太朗さん(右)
写真 力強くGSC受講生へエールを送る坂口謙吾 推進委員長
写真 力強くGSC受講生へエールを送る坂口謙吾 推進委員長

グローバルサイエンスキャンパス推進委員会委員長の坂口謙吾(さかぐち けんご)東京理科大学嘱託教授は、本研究発表会の総評で、「GSCも3年目を迎え、受講生の研究内容とプレゼンテーション力が確実に向上している」と述べた。また、参加した受講生に対しては、「皆さんはGSCプログラムを通じて、研究手法はもちろん、自分の力で考えやってみるという研究者としての基本姿勢を身につけてきたので、今後さらにレベルアップしていくはず。プログラムの卒業生が、将来一流の研究者になってくれることを期待している」と激励した。

優秀賞に選ばれた発表者の数名は、来る11月5日JST主催のサイエンスアゴラ2016で、研究者や起業家の方々との討論会「高校生×イノベーター トークセッション"Road to INNOVATION"~JSTグローバルサイエンスキャンパス~」に参加し、さらなる研鑽を積むことになる。

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