レポート - 小中高レポート -

「こども環境サミット札幌」

SciencePortal特派員 成田優美

掲載日:2008年7月22日

世界各地から102人のこどもたちが集まり、地球環境を学び、開催テーマ「地球の未来へ、いま、僕たち私たちにできること」を宣言にまとめました。メイン会場のモエレ沼公園 ガラスのピラミッドで行なわれたプログラムの一部を紹介します。

  参加者:小学校5年生から中学校3年生(海外10カ国40人、国内62人)と引率の先生方

6月27日

アトリウムで開会式。実行委員長の上田文雄札幌市長は「未来の地球の主役、こどもの力の結集」を願って激励。環境省北海道地方環境事務所長 浅野能昭氏も「ほかの国の友だちと仲よくなり、議論するのは意義あること」とあいさつ、参加者が紹介されました。上田市長の開会宣言後イベントホールに移動、基調講演者、野口健氏の活動をDVDで見て、暴風雪のなかでごみを掘り出す緊迫した様子やキャンプの残骸の映像にみな真剣な表情でした。

    レクチャータイム:野口 健 氏(アルピニスト)


    野口氏は、エベレストの清掃活動を始めたきっかけや過酷な自然環境のもとで危険と闘いながら続けてきた葛藤を、こどもたちにも分かりやすく話しました。登山隊のお国柄によってごみの処理に差があることから日本における環境教育を痛感、「野口健・環境学校」の開設につながったようです。
    そして地球温暖化の影響が顕著なヒマラヤ周辺で、氷河湖が溶けた大洪水の被害に直面し、国境のない環境問題に苦悩、いろいろなところで周知に努めました。そのかいあって第1回アジア・太平洋水サミットで発言、洞爺湖サミットに引き継がれて専門家による氷河の調査が始まったそうです。

      基調講演 野口 健 氏(アルピニスト)「人が集まればできる

    ワークショップ1:海外と国内6都市の計16グループが画像を交えてレポートを発表

    オーストラリア:  電力の80%を埋蔵量の多い国内の石炭で供給。19,000人が石炭会社で働き、生産量の75%を輸出、うち日本に42%。オーストラリアが排出する温暖化ガスの大半は石炭。太陽熱(集光)や風力などの自然エネルギーを開発。排出権取引を検討。
    北九州市:  光化学スモッグが問題。4年前から環境学習を積極的に始めた。「もったいないプロジェクト」では空き缶などをリサイクル。バザーでユニセフに募金。川や公園を定期清掃。多くの人々にアピールする活動を心がける。
    中国:  瀋陽市を通るフンへ川は水質汚染が深刻だったが、住民の努力と合成洗剤に対する規則や企業の取り組みによって改善が進んだ。さらに下水渠(げすいきょ)を造り工業排水対策が講じられ、水質は大きく向上。美しい景観と生きものがよみがえった。
    ドイツ:  ミュンヘンの学校では熱帯雨林を守るために紙を分別して校内でのみ再使用。冷暖房や電化製品を節約。車通勤をやめ自転車や公共交通を使う。水を賢く使う。一人の小さな行いも集まれば大きなことができる。
    広島市:  「交通と環境」学習で、水素自動車の環境に配慮した技術に驚いた。交通すごろくも印象に残り、自転車やバスを利用することにした。人、自然、地球、そして何かを大切に思う気持ちが私たちの未来を作っていく。
    インド:  私たち生徒の最も大きな課題は母なる大地を守り、破壊をやめて効果的な対策を作ること。学校ではキャンパスを緑いっぱいにした。日常的にごみを減らし有機栽培をしている。アースデイにはキャンドルで盛大に祝い、エコの啓発をする。
    京都市:  6月に開催された京都ジュニア環境サミットを説明。昔から自然をうまく利用している京都の良さを残してほしい。近くの山で飼育しているチョウ、オオムラサキを紹介。もったいない精神の実践。水を大切に、電気・ガスなどのムダ使いをしない。
    フィリピン:  国内の環境問題は、ごみの不法投棄や処分施設の不足。違法な森林伐採による多様な生物の減少、土石流の人的被害。大気と工場排水、川の汚染。フィリピンは世界の温室効果ガス全排出量の0.3%にすぎないが資源を活用し植林をする。自然は生命と希望を与えてくれる。
    韓国:  テジョン(太田市)は、交通と科学技術の都市。韓国のサラリーマンは通勤に健康や環境によい自転車を多く利用する。樹木は大切、積極的に植林している。
    川崎市:  枡形中学校の活動。1年生は施設見学、2年生は日本科学未来館で科学とイノベーション、3年生は企業などで環境の取り組みを学ぶ。研究者・専門家を迎えワークショップ。スローガンも作る。学習後は校内の消費電力量が減少。『黒く染めるな青い地球 ~エコも積もれば森になる』
    ロシア:  ノボシビルスクのあるシベリアは面積が広い。大きな問題は大気汚染と酸性雨、工場排水による水の汚染、ごみ、生態系への影響、石油やガスの採掘と湿地の保護。開市115周年を記念し、同数の植樹を予定。
    仙台市:  光害とは目的以外に漏れてしまう光、必要以上に強すぎる光のこと。市内の中学生が調べた環境マップでは星が見えにくくなっている。人工衛星がとらえた夜の地球画像では米国北東部、ヨーロッパ、中国東部、日本が明るい地域。仙台の七夕祭りの象徴、天の川の見える街を視点に「夜空に優しいまちは地球にも優しいまち」をめざす。
    シンガポール:  国土は札幌の半分、人口密度は世界3番目。水の使用量急増に対し絶対量が不足 (1)海外から輸入 (2)フィルターで海水を真水化 (3)雨水の貯水池で国内必要量の半分を賄う (4)下水リサイクルのニューウォーターは飲用可能で世界的に高い評価。法律や教育によるムダ防止も大切。
    タイ:  交通・輸送関係の環境問題が最多。CO2発生の75%を車が占める。森林伐採が食物連鎖に影響し生態系を破壊。工場排水の有機物を魚が食べ、最終的に毒になる。汚水処理をする装置を作ってバイオガスに利用。植林は大事だ。
    札幌市:  2005年度の市の家庭ごみは49万トンで札幌ドームの約3杯分、処理費用が約37,000円/トン。市民一人当り1日 717グラム排出。清掃工場の新設は560億円必要で埋立地もいっぱい。ごみの重量組成は生ごみが29%、プラスチック15%、食べ残しをせず、ごみを減らそう。
    米国:  今の環境問題の多くは人々の誤った選択が原因。車の利用、肥料の使いすぎ、農業の荒廃。世界中に影響が広がり、飢餓、病気、資源をめぐる戦争で多くの人々や幼い子が亡くなっている。科学技術や医療、役に立つ分野を学ぶこと。水と電気を節約、地産地消。


    ワークショップ2:小林三樹・藤女子大学 教授(衛生工学、都市環境工学、地球環境)


    小林教授は、各国の環境問題の特性や現状を写真やデータを基に科学的な見地から解説。翌日のワークショップに備え、各地代表の発表からキーワードをあげて講評、10グループに分かれて、明日行う論議の進め方と総括メッセージに向けての指導を行った。


6月29日:宣言セレモニー


鴨下一郎環境大臣を拍手で迎え、橋本聖子氏と日本のオリンピックメダリスト7人が紹介されました。母国語で書かれたメッセージフラッグの入場・掲揚に続いて「宣言書手交式」、参加者の代表2人がステージで宣言書 を発表しました。“二酸化炭素の排出減、緑・水・エネルギーを大切に、ごみの減少” などを行動目標にしています。
受け取った鴨下環境大臣は、「大人たちと一緒に頑張りましょう。国に帰ったらこのことを大いに伝えてもらいたい。102人のメッセージが友情でつながっている証しとなり、皆さんの財産になるように心から祈っております」とエールを送りました。フィナーレは「ストップ!温暖化こどもメッセージリレー」。アスリートの方々と各地の代表がメッセージを読み上げて大臣から青いシールをもらい、大きな赤い地球儀にはっていきました。日本最大のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」が予測する温暖化が進んだ地球を表わしています。洞爺湖サミット初日の7月7日、大倉山ジャンプ場から世界中にメッセージが発信されました。

 こども環境サミット札幌」サイト

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