レポート

バッテリー利用し50%以上の電力料金節約に成功

2011.06.07

神谷明 氏 / 藤沢市在住、日本IBM元社員

 福島第一原子力発電所事故により、今夏の電力供給に暗雲とのニュースから、蓄電システムを利用することで家庭用電力の節減は出来ないか、と考えました。電力会社から送られてきた5月の電気料金額を見て、予想外の効果にびっくりしました。なんと前月に比べ52%、前年同月に比べ56%も電力料金を安くすることができたのです。少々、手間はかかりましたが、ほかの方にも十分、勧められる試みと考え、報告させていただきます。

1.蓄電システムは前から備えていたのか

 蓄電システムとしては、所有のトヨタ エスティマ ハイブリッドに、未来のエコシステムを先取りするような、動力用ニッケル水素バッテリーの走行後余剰蓄積電力と内蔵インバータを利用した、最大1,500ワット出力の100ボルトコンセントが標準で装備されており、外出時に車内での携帯電話、ビデオカメラやノートパソコンなどの充電に使用し、重宝しておりましたが、停電時に家電製品を動かすことは考えておりませんでした。

2.今回、蓄電システムを備えた理由は

 東日本大震災後の計画停電で当方の居住する藤沢市でも相当な回数で計画停電が行われ、生活、仕事の両面で大変な不便が予想されました。試しに上記の車載コンセントから延長コードで100ボルトをキッチンやリビングルームまで取り込み、大型(500リットル)冷蔵庫、照明、テレビ、ガスストーブ、パソコン、ファクス電話機、無線LANルーターなどを動かしたところ、長時間連続使用できることが分かり、バッテリー+インバータの威力を見直しました。しかし、バッテリーの余剰電力を放電し切ると、再充電のために15分置きに3分間程度自動的にエンジンがアイドリング作動します。また、計画停電のたびに、延長コードを引き込み、車を“ON”状態にしなければならないなどという不便さがあったので、思い切って自家用蓄電システムの設置を計画しました。当初の目的は停電時のバックアップでしたが、おトクな夜間電力を蓄電して昼間の時間帯で使用すると大きな節電効果も期待でき、電気代も大幅に節約できそうなことが分かり、主目的を節電・節約に切り替えました。

3.エネルギー源の選択

 当初は、蓄電用のバッテリーに蓄電するエネルギー源として、定番の太陽光パネルを考慮しましたが、わが家の昼間時間帯(8時から22時)14時間の需要電力約4.7キロワット時をすべて太陽光パネルで補給するには、高価な150ワットパネルを最低4枚必要とし、それだけでも当初の予算金額25万円を超オーバーしてしまうので、太陽光パネルは採用見送りとし、当面は、バッテリー充電器を使用して商用夜間電力で充電することにしました。

4.必要な部品、工事、コスト

a.部品

 必要な部品の点数は多くはありません。DC-ACインバータ、ディープサイクル・バッテリー2個、バッテリー充電器、30アンペアブレーカー、自動充電開始・停止操作用15アンペアプログラマブル・タイマー、それに配線用のケーブル類です。部品の選択に当たっては、負荷容量、使用目的、使用場所などに応じて、信頼性のある販売店に相談しました。

b.工事

 暫定的な設置場所として、子供たちが巣立っていった12畳の広さの子供部屋にし、そこに上記の部材を設置しました。バッテリーは重量が約57キロもあるので、移動・設置は大変でした。DC-ACインバータと2個のバッテリーの間の配線に必要なコード類にはすべて圧着端子が取り付け済みだったので、容易に配線することができました。すべてのケーブルには赤と黒などでプラス端子用・マイナス端子用を明確にし、極性を絶対に間違えないよう細心の注意が必要です。バッテリー充電器には、赤と黒の2本のクリップ付きのケーブルが備わっていて、バッテリー端子にはクリップで接続します。AC 100ボルト出力ケーブルには建物壁内配線用のFケーブルを使用して建物壁取り付け用コンセントに接続し、そこからリールに巻かれた15メートルコード(いわゆる電工ドラム)、延長コードなどで、使用する電気器具にAC100ボルトを供給しておりますが、これらの工事は約2時間程度で済みました。しかし、延長コード類は床をはわせてあり、これにより閉まらなくなったドアもあるような状態なので、近い将来に本システムの最終的な配置場所が決まり次第、専門業者にお願いしてコードを壁内や目立たないところをはわせて、分電盤に接続をお願いする予定です。また、インバータやバッテリー充電器は冷却用ファンからのノイズが気になりますので、最終的には装置全体を金属製のストレッジやラックに納め、屋外に設置するつもりでおります。

c.コスト

 必要な部品、部材は、15Aプログラマブル・タイマーだけは近くの電器店で、その他はインターネットで検索して見つけた地元神奈川県足柄上郡の太陽光発電機器専門店から一括購入し、市販の同様蓄電装置の約半値の38万円で調達することができました。

d.節電効果の実証

 ちょうど本格運転開始し、また、電気料金メニューを、スタンダードな従量電灯Bから、夜間10時間型の“おトクなナイト10”に切り替えてから、1カ月経過した時点で東電の検針があり、“電気ご使用料のお知らせ”が来ました。メニュー変更に伴い、東電からの電気料金請求は、電力使用量および料金ともに、昼間と夜間とに分けられた内訳が記載されており、5月1カ月間の使用量の総計は370キロワット、そのうち昼間67キロワット、夜間303キロワット、また、料金の総計は5,172円で、そのうち基本料金1,219円、昼間料金1,599円、夜間料金2,872円、燃料調達費-529円という内容でした。電気料金総計5,172円という金額は、前年5月分の電気料金が11,686円、本年4月の電気料金が10,743円でしたから、それぞれ約、56%および52%の節約となり、驚異的な節約率です。

 また、電力使用量では、前年同月、先月はそれぞれ、総計507キロワット、461キロワットで、ともに、昼間と夜間の内訳が記載されておりませんので、それぞれの時間帯での使用量は分かりませんが、節約率は前年同月、先月と比較してそれぞれ、約27%、25%と大幅な節約をすることが出来ました。肝心な電力使用量ピークの存在する昼間における電力使用節約率に関しては、以前の従量電灯Bでは内訳が記載されなかったので内訳比較をすることはできませんが、5月の昼間の使用量67キロワットという量は、“最初の80キロワットまで”という昼間時間帯の第1段階料金域上限を大幅に下回っていることを考慮すると、大幅な節約量であったと思われます。

 本蓄電システム導入以降の、昼間の電気料金の削減は本装置の導入により、また、電力使用総量の大幅な減少は、装置の導入によって無駄な電力使用をできるだけ控えようという電力節約志向がより強まったという意識の貢献が大きかったと言えます。今後は、夏場の暑さのピーク時を迎えますが、本システムでエアコンをも稼働することになりますが、高めの温度設定や扇風機を効果的に使用するようにして、昼間の電力使用のピークを乗り切りたいと思います。

5.最後に

 必ずしも数百万円かけて多くの太陽光発電パネルを使用した発電装置を設置しなくても、ここに紹介致しました数十万円程度の自家製または市販による蓄電システムを多くの個人家庭で設置して、割安な夜間電力を昼間での電力使用に回すことにより、個々の家をSmarter Homeに作り替えることができることが証明できました。それによる個々の電力使用節約量は微々たるものですが、このような地道な貢献なくしては、復興までの長い先々、昼間の電力需要ピークによる突然の、あるいは、計画的な大規模停電を防ぐことは不可能であると信じます。また、このような社会貢献に加えて、設置に必要な初期投資は、毎月の大幅な電気料金の節約によって回収されて行くので、決して無駄になることはないと信じます。

 本投稿記事は、蓄電システムの一例であり、使用機器、使用機器設定条件、使用環境、使用条件、電力会社との電気契約条件、などによって節電効果、節約効果は異なります。また、ご使用になる機器類は、それらの取扱説明書に記述された規定範囲内でご使用ください。

ラックに載せた蓄電システム
ラックに載せた蓄電システム
インバータ周囲の入出力配線状況
インバータ周囲の入出力配線状況

関連記事

ページトップへ