レポート - 英国大学事情 -

2018年3月号「英国高等教育統計資料(2017年版)」<英国大学協会2017年10月「Higher Education in Facts & Figures 2017」より>

掲載日:2018年3月1日

英国在住約40年のフリーランス・コンサルタント山田直氏が、新しい大学の生き方を求め、イノべーション創出、技術移転などに積極的に取り組む英国の大学と、大学を取り囲む英国社会の最新の動きをレポートします。

「英国大学事情2016年第4号」にて、英国大学協会が2015年9月に発表した2013・14年度のデータに基づいた「2015年度・英国大学統計資料」を紹介したが、それから約2年が経つため、同協会が2017年10月に発表した「Higher Education in Facts & Figures 2017から一部を抜粋して、最新版の英国高等教育統計資料を紹介する。

1. ハイライト

* 学士課程学生の14%、大学院学生の38%及びアカデミック・スタッフの29%は外国籍である。

* 英国の大学に対する学生の全般的満足度は84%に達した。

* イングランド地方の大学進学率が伝統的に低い地域において、18歳の若者の大学進学希望者数は過去最高の水準となった。

* 大学の全収入の内、英国政府からの直接助成額は25%を多少下回った。

* 研究収入の16%は海外からもたらされた。

* 大学卒業者の就職率と平均給与額は、非卒業者に比べて高い傾向が続いている。

2. 学生

* 英国は海外諸国から、米国に次いで多くの留学生を呼び寄せている。学士課程では14%の学生、大学院課程では38%の学生が海外からの留学生である。

* 履修形態も多様であり、2015・16年度の学士課程では82%がフルタイム学生であったのに対して、大学院課程では43%がパートタイム学生であった。

【各地方の大学数、学生数及び前年度比増減率】  2015・16年度
  大学数 学生数 学生数増減率(前年比)
イングランド 132校 1,861,345名 +0.9%
スコットランド 19 235,565 +1.3
ウェールズ 10 128,675 -3.2
北アイルランド 5 55,245 -2.1
合計 166校 2,280,830名
【フルタイム・パートタイム別の学士・大学院課程学生数の比率】 2015・16年度
  学士課程 その他の学士課程 修士課程 博士課程 合計
フルタイム 89% 25% 53% 75% 76%
パートタイム 11 75 47 25 24
合計 1,563,900名 183,955名 419,795名 113,175名 2.280.825名

※「その他の学士課程」には、2年間の「ファウンデーション・コース」、フルタイムで1年間のHigher National Certificate(HNC)やHigher National Diploma(HND)コース等を含む。

【学科別学生数:学生数の多い学科順】単位:1万名(概数) 2015・16年度
学科 学部 大学院 学科 学部 大学院
ビジネス(経営学等) 23万名 9.5万名 法律 7万名 2万名
医学関連(看護学等) 22 6 歴史 7 1.5
生物学 18 4 医学・歯学 4.5 2
社会学 17.5 3.5 マスコミ 4 1
アーツ・デザイン 15 2 建築 3 2
工学 12.5 4.5 複合科目 4 若干名
教育 8 8 数学 3.5 0.5
語学 9 2 農学 2 若干名
物理科学(化学含む) 7.5 2 獣医学 0.5 若干名
コンピューター科学 8 1.5
【出身地、履修課程別の学生数】 2015・16年度
  英国出身学生 EU出身学生 EU域外出身学生
学士課程 1,342,770名 77,825名 143,300名
その他の学士課程 166,795 4,275 12,885
修士課程 268,470 30,130 120,710
博士課程 64,285 15,205 33,680
【出身国トップ20別の留学生数と全留学生に対する比率】 2015・16年度
中国 91,215名 21% ギリシャ 9,790名 2%
マレーシア 17,405 4 キプロス 9,140 2
米国 17,115 4 サウジアラビア 8,570 2
インド 16,745 4 スペイン 7,840 2
香港 16,745 4 シンガポール 7,540 2
ナイジェリア 16,100 4 ルーマニア 7,200 2
ドイツ 13,425 3 ブルガリア 6,195 1
フランス 12,525 3 タイ 6,095 1
イタリー 12,135 3 カナダ 5,980 1
アイルランド 10,245 2 ポーランド 5,655 1
【フルタイムの英国人学士課程学生の中途退学率】 2006・07年度は概算
  2006・07年度 2014・15年度
成人学生 14.5% 11.7%
一般学生 7.7 6.2

※ 「成人学生」とは、高校卒業後にすぐに大学には行かずに21歳以降になってから大学に入学した学生を指す。英国の成人学生の40%は30歳以上である。

3. 成果(アウトカム)

* 2017年に実施された全国学生調査(National Student Survey)によると、84%の学生が自分の在籍する大学に全体的には満足していると回答した。近年、学生の大学での体験や大学が与えた卒業生への成果(outcome)に対する国民や政府の関心が高まってきている。

* 学士課程や大学院課程を卒業した英国人卒業生の90%以上は、卒業後6カ月時点において就業しているか、または更なる学業についている。

【学位・資格授与数】 2015・16年度
  フルタイム パートタイム 合計
学士課程     480,570
学士号 367,240 32,580 399.820
2年制ファウンデーション・ディグリー 9,275 5,545 14,820
その他の資格 (HNC, HND等) 37,060 28,870 65,930
大学院課程     282,155
修士号 144,050 69,930 213,980
PGCE (Postgraduate Certificate in Education※) 19,760 1,040 20,800
博士号 22,760 4,615 47,375

※教員を目指す学生のための1年間の大学院教職課程。

【英国及びEU籍学生の卒業後6カ月時点での就職・勉学状況】
  2011・12年度 2015・16年度
英国内での就職 64% 67%
海外での就職 4 4
就職とパートタイムでの勉学 7 6
更なる勉学 14 15
失業中 7 5
その他 4 4
【大卒者の就職率、失業率、平均年俸】概算 2016年
  大学院卒 学士課程卒 非大学卒
ハイ・スキルが必要な職への就職率
21-30歳 59% 59% 14%
16-64 78 67 19
失業率
21-30歳 2.9% 4.6% 7.7%
16-64 2.1 2.9 5.9
平均年俸 (ポンド)
21-30歳 28,000 (420万円※) 25,000 (375万円) 18,000(270万円)
16-64 38,000(570) 32,000(480) 23,000(345)

※当レポートでは1ポンドをすべて150円にて換算。

【全国学生満足度調査による満足率】 2017年
学習のための各種リソース 85% 組織・運営 75%
学習の機会 84 評価とフィードバック 73
全般的満足度 84 学生の声 73
教員からのサポート 80 学生ユニオン 57
学習コミュニティー 77

4. 教職員

* 英国のアカデミック・スタッフの29%は外国籍で、17%は英国以外のEU諸国の出身である。また、英国の大学に在籍するシニア・レクチャラーの約25%と教授の18%が外国籍である。なお、女性は英国のアカデミック・スタッフの45%を占める。

【国籍と職種の比率】 2015・16年度
職種 英国 EEA EU域以外
シニア・レクチャラー 76% 14% 10%
チーム・リーダー 79 13 9
アドミ・スタッフ 90 6 4
教授 82 11 7
シニア・マネージメント 93 4 3

※ EEAはEuropean Economic Area(欧州経済領域)を指し、EU28カ国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインが加盟している。

【機能別のアカデミック・スタッフ数と雇用形態】 概数  2015・16年度
  フルタイム パートタイム
授業+研究 80,000名 18,000名
研究のみ 40,000 8,000
授業のみ 12,000 40,000
授業も研究もしていない 若干名 若干名
【性別・国籍別のアカデミック・スタッフ数の比率】 2015・16年度
男性・英国籍 39% 女性・英国以外のEU国籍 8%
女性・英国籍 32 男性・EU域外国籍 7
男性・英国以外のEU国籍 9 女性・EU域外国籍 5
【性別・職種別の教職員数の比率】 2015・16年度
男性・アカデミック・スタッフ 27% 女性・アカデミック・スタッフ 22%
男性・非アカデミック・スタッフ 19 女性・非アカデミック・スタッフ 32

5. 財務

* 2015・16年度では、大学の収入の54%が授業料以外から来ており、24%が英国政府からの直接的助成であった。また、研究収入の16%は海外からである。

* 大学による支出の55%は教育や研究活動に関連したものであり、それにはアカデミック・スタッフや補助スタッフへの賃金等を含む。

【大学の収入】総収入347億ポンド(5兆2,050億円) 2015・16年度
教育 (英国政府の運営費交付金) 9% 研究 (その他) 8%
教育 (授業料) 46 大学基金・投資収入 2
研究 (英国政府の運営費交付金) 15 その他の収入 20
【教育及び研究による収入の内訳】 2015・16年度
教育収入 研究収入
英国・EUの学部学生からの授業料 49% 英国政府からの助成金 64%
英国・EUの大学院学生からの授業料 6 英国のチャリティー機関からの助成金 15
EU以外の学生からの授業料 23 英国企業からの収入 4
英国政府からの運営費交付金 17 EUからの収入 11
その他の助成金等 5 EU以外からの収入 6
その他の収入 1

* 2015・16年度において、英国の大学には合計で191億ポンド(2兆8,650億円)の教育収入及び78億ポンド(1兆1,700億円)の研究収入があった。

【大学の支出】 2015・16年度
教育・研究 55% 寄宿舎、カンファレンス施設 5%
キャンパスのメンテナンス 11 学生への経済的支援等 4
図書館、IT、博物館 9 学生や教職員のための施設・設備 3
大学運営 7 その他 5

6. 筆者コメント

* 2015・16年度においては、大学の収入の46%が授業料収入であり、総収入の約半分弱と最大の比率を占めている。これは、年間授業料の上限が2012・13年度より3,000ポンド(45万円)から9,000 ポンド(135万円)に大幅に引き上げられたことが影響している。また、授業料の上限規制がないEU域外からの留学生向けの授業料が、非常に高く設定されていることも貢献している。

* 一方、英国政府による教育と研究向けの運営費交付金は、大学の総収入の24%まで低下している。有力大学ではその比率が10%台であり、9%を切っている大学もあると聞いている。したがって、財務的には私立に近づいている大学が出てきているように思える。

* 英国の大学では、学士課程学生の18%、大学院課程の38%がパートタイムの学生であり、働きながら大学に通う学生も多い。また、英国の大学における海外からの留学生数は、学士課程と大学院課程を合わせて約44万名と米国に次いで世界に二番目に多く、学士課程では14%の学生、大学院課程では38%の学生が海外からの留学生である。このように、英国の大学は色々な面で多様性に富んでいると感じる。

サイエンスポータル編集部注:
「英国大学事情」は、十余年にわたり定期的に掲載してきましたが、本稿をもって掲載終了になります。

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