レポート - 英国大学事情 -

2016年9月号「学士課程留学生の動向と英国の国際的競争力」<英国大学協会UK Higher Education International Unit報告書 「International Undergraduate Students: The UK’s Competitive Advantage」より>

掲載日:2016年9月1日

英国在住約40年のフリーランス・コンサルタント山田直氏が、新しい大学の生き方を求め、イノべーション創出、技術移転などに積極的に取り組む英国の大学と、大学を取り囲む英国社会の最新の動きをレポートします。

2015年12月、英国大学協会(Universities UK)のHigher Education International Unitは、「International Undergraduate Students: The UK’s Competitive Advantagepdfと題する、世界の学士課程留学生の動向と留学生市場における英国の競争力に関する報告書を発表した。その中から、ごく一部を抜粋して紹介する。

1.世界の留学生の在籍動向

* 2012年のOECDデータによると、世界の高等教育機関には約450万名の留学生が在籍している。その数は、2005年に300万名、2011年には440万名と増加傾向にあり、2000年からは約2倍となっている。

【世界の留学生の留学先別比率】2013年
米国 19 % イタリー  2 %
英国 10 オーストリア  2
オーストラリア  6 オランダ  2
フランス  6 南アラビア  2
ドイツ  5 スペイン  1
ロシア  3 韓国  1
日本 3 トルコ  1
カナダ  3 その他のOECD国 10
中国  2 その他のOECD以外の国 20

(OECD 2015 Education at a Glance report)

【学士課程留学生の主要国別在籍数】 2007年-2014年
  2007/08 2010/11 2013/14 2007/08からの増減数 2007/08からの増減率 2007/08の市場占有率 2013/14の市場占有率
英国(EU外から) 104,445 134,220 152,355 47,910 +46 % 16.6 % 17.1 %
オーストラリア 105,469 127,729 120,154 14,685 +14 16.8 13.5
ニュージーランド  38,617 41,881 44,500 5,883 +15  6.1  5.0
米国 243,360 291,439 370,724 127,364 +52 38.7 41.7
カナダ 85,994 108,190 146,340 60,346 +70 13.7 16.4
ドイツ(EU外から)  50,875  49,775  55,825  4,950 +10 8.1 6.3
  合計 627,760 753,234 889,898 261,138 +42 %  

2.英国留学体験の満足度

* 以下の学士課程留学生の体験データは、英国の約100の高等教育機関を含む世界約800の高等教育機関の留学生に対する、International Student Barometer(ISB)インターネット・アンケート調査結果に基づく。紙面の関係により、表の一部を省略・編集して紹介する。

【留学先大学到着後の対応への満足度】 2014年
宿舎施設担当オフィス 88 % 地域のオリエンテーション 86 %
宿舎施設の状態 85 スタッフとのミーティング 91
銀行口座開設 75 その他の友人 90
インターネット・アクセス 80 各種登録手続き 89
財務部の対応 90 ソーシャル活動 85
到着初日の対応 88 勉学の雰囲気 84
正式な歓迎会 89 大学へのオリエンテーション 87
自国の友人 82 歓迎 82
ホスト国の友人 78  
【留学先での学習体験満足度】 2014年
教員の英語 92 % 学習スペース 88 %
試験の採点基準 81 実験室 93
評価 89 語学サポート 91
キャリア・アドバイス 77 多文化的 91
授業コースの内容 90 授業コースの構成 86
クラス・サイズ 88 達成度へのフィードバック 82
専門家による講師 95 質の高いレクチャラー 90
雇用の可能性 82 研究 89
良い教師陣 89 技術 90
オンライン・ライブラリー 91 バーチャル・ラーニング 92
図書館 91 実習体験 74
学習へのサポート 89  
【留学先での生活体験満足度】 2014年
宿泊施設の質 84 % キャンパスの建物 90 %
宿泊施設の経費 59 キャンパスの環境 92
環境に優しい対応 90 ソーシャル活動 84
小遣いや生活費を稼げること 58 安全性 92
経済的サポート 55 自国の友人 84
グッド・コンタクト 78 ソーシャル施設 82
居心地の良い場所 91 スポーツ施設 84
ホスト国のカルチャー 86 外部との交通リンク 84
ホスト国の友人 77 大学内の交通 82
インターネット・アクセス 82 ビザ・アドバイス 88
生活費用 67 祈りの施設 89
その他の友人 89  
【留学先でのサポート・サービスへの満足度】 2014年
宿泊施設担当オフィス 88 % 住居担当アシスタント 92 %
ケータリング 84 国際部の対応 93
カウンセリング 88 ITサポート 93
キャリア・サービス 91 個人チューター 92
身障者へのサポート 91 学生への助言 94
財務部の対応 89 スチューデント・ユニオン 94
祈りの場所の提供 95 クラブ・ソサイエティー 94
ヘルス・センター 88  
【留学体験で重視される事項】 2014年
順位 分野 体験内容 比率 順位 分野 体験内容 比率
1 生活 グッド・コンタクト  31.1 % 11 学習 良い教員 27.6
2 到着 ソーシャル活動 30.8 12 到着 正式な歓迎会 27.5
3 学習 質の良い講師 29.8 13 生活 ソーシャル施設 27.0
4 学習 授業コースの内容 29.6 14 到着 大学オリエンテーション 26.8
5 生活 ソーシャル活動 29.6 15 到着 学習の雰囲気 26.7
6 学習 授業コースの構成 29.6 16 到着 ホスト国の友人 26.6
7 学習 就職可能性 29.3 17 生活 キャンパス環境 26.5
8 生活 居心地の良い場所 27.8 18 学習 専門家による講師 26.2
9 生活 キャンパスの建物 27.8 19 学習 評価 25.8
10 生活 ホスト国のカルチャー 27.7 20 学習 研究 25.7
【留学体験の全体的満足度:2008年からの変化】
  2008年 2010年 2012年 2014年 増減
他の学生に推薦できる 83 % 84 % 84 % 85 % +2 %
全体的な満足度 90 91 89 91 +1
到着時の対応への全体的満足度 87 88 89 90 +3
学習への全体的満足度 87 88 86 88 +2
生活への全体的満足度 86 88 88 87 +1
サポートへの全体的満足度 88 90 91 90 +2

3.留学体験満足度の国際比較

【留学先別の満足度】 2014年 (満点:5)
  英国 オーストラリア カナダ ニュージーランド 米国
他の学生に推薦できる 4.22 4.04 4.10 4.02 4.17
全体的な満足度 3.16 3.03 3.04 3.01 3.10
到着時の対応への全体的満足度 3.12 3.09 3.03 3.02 3.06
学習への全体的満足度 3.08 2.97 3.01 2.9 3.07
生活への全体的満足度 3.07 3.05 3.00 3.02 3.01
サポートへの全体的満足度 3.02 2.96 2.96 2.96 2.99

(ニュージーランドのみ2013年のデータ)

【留学先別の満足度ランキング】 2014年
  英国 オーストラリア カナダ ニュージーランド 米国
他の学生に推薦できる 1位 4位 3位 5位 2位
全体的な満足度  1  4  3  5  2
到着時の対応への全体的満足度  1  2  4  5  3
学習への全体的満足度  1  4  3  5  2
生活への全体的満足度  1  2  5  3  4
サポートへの全体的満足度  1  4  5  3  2

(ニュージーランドのみ2013年のデータ)

4.大学を選択する際の要因

【英国の大学を留学先に選んだ理由】 2014・15年度 (満点:4)
大学の評判 3.46 勉学の費用 3.09
特定の授業コース 3.43 卒業後の就職機会 3.01
将来の年収 3.33 ソーシャル・ライフ 3.01
治安上の安心感 3.31 大学スカラシップ・補助金 2.87
研究の質 3.27 留学中のアルバイトの可能性 2.86
生活のコスト 3.17 ビザの手続き 2.61
ロケーション 3.13 将来的永住 2.60
更なる勉学の機会 3.12 自国・出身地に近い 2.19
【英国の学士課程選択の要因:国籍別】 2014・15年度 (満点:4)
  英国 中国 米国 インド 香港
大学の評判 3.46 3.33 3.39 3.62 3.50
特定の授業コース 3.43 3.24 3.29 3.65 3.37
将来の年収 3.33 3.27 2.96 3.50 3.34
治安上の安心感 3.31 3.50 3.29 3.56 3.54
研究の質 3.27 3.29 3.01 3.41 3.26
生活のコスト 3.17 3.05 3.05 3.24 3.23
ロケーション 3.13 3.01 3.36 3.19 3.15
更なる勉学の機会 3.12 3.22 2.73 3.27 3.18
勉学の費用 3.09 3.07 2.99 3.31 3.23
卒業後の就職機会 3.01 2.84 2.64 3.06 3.02
ソーシャル・ライフ 3.01 2.99 3.06 3.10 3.02
大学スカラシップ・補助金 2.87 2.86 2.61 3.00 2.88
アルバイトの可能性 2.86 2.92 2.51 3.10 2.89
ビザの手続き 2.61 2.90 2.70 3.00 2.82
将来的永住 2.60 2.52 2.41 2.43 2.66
自国・出身地に近い 2.19 2.33 1.71 2.34 2.23

5.留学先の大学を選択するための有効な手段

【留学先の大学を選択するための有効な手段: 国籍別】 2014・15年度
  英国 中国 米国 インド 日本
教育エージェント 26 % 46 % 12 % 51 % 27 %
その大学の卒業生 14 15 13 15 15
高校等の進路助言者 13 10 13 16 11
その大学の学生 19 17 20 16 10
雇用者 2 3 1 1 0
教育フェア 5 5 4 9 7
家族 35 34 37 38 29
友人 34 32 38 28 29
自国政府の助言機関 4 7 2 1 1
ホスト国政府の助言機関 3 3 2 3 1
中立的ウェブサイト 7 5 7 8 6
その大学による宣伝広告 2 4 1 2 0
その大学のスタッフ 8 7 12 9 11
大学訪問 19 11 19 12 25
大学のウェブサイト 38 19 43 40 36
大学ランキング 33 24 18 39 26
その他のメディア 4 6 5 3 3
その大学の入学案内書 24 10 23 28 26
ソーシャル・ネットワーク 13 9 13 14 8
高校等の教師 18 27 23 12 21
【留学先の大学を選択するための有効な手段のランキング: 国籍別】 2014・15年度
  英国 中国 米国 インド 日本
その大学のウェブサイト 1位 6位 1位 2位 1位
家族 2 2 3 4 2
友人 3 3 2 5 2
大学ランキング 4 5 8 3 5
教育エージェント 5 1 13 1 4
その大学の入学案内書 6 11 4 6 5
大学訪問 7 9 7 11 7
その大学の学生 8 7 6 7 12
中・高校等の教師 9 4 5 11 8
その大学の卒業生 10 8 9 9 9
ソーシャル・ネットワーク 11 12 11 10 13
中・高校の進路助言者 12 10 9 8 10
その大学のスタッフ 13 14 12 14 10
中立的ウェブサイト 14 16 14 15 15
教育フェア 15 17 16 13 14
その他のメディア 16 15 15 17 16
自国政府の助言機関 17 13 17 19 17
ホスト国政府の助言機関 18 20 17 16 17
その大学による宣伝広告 19 18 19 18 19
雇用者 20 19 20 19 19

6.留学生市場における主要競合国

【英国の学士課程への進学前に考慮した留学先:国籍別】 2014・15年度
  英国 中国 米国 インド 香港
米国 44 % 65 % - 56 % 44 %
カナダ 19 20 13 % 23 21
オーストラリア 24 24 28 24 42
ドイツ 16 12 11 11 7
ニュージーランド 6 5 11 4 5
その他 19 9 22 19 11
【英国での学士課程コース開始前に滞在していた国】 2014・15年度
留学先 留学した国 自国 その他の国
オーストラリア 32 % 62 % 6 %
カナダ 32 58 9
ニュージーランド 39 57 4
英国 24 67 9
米国 16 77 7

オーストラリア、カナダ、ニュージーランドを学士課程留学先に選んだ学生は、大学進学準備のためのコースを受講するため、留学先の大学がある国に滞在する比率が高い。

 

7.英国の政策立案者と大学への提言

* 持続的な全国的キャンペーン、洗練されたウェブサイトやソーシャル・メディア・ネットワーク等を通じて、英国の大学の持つ重要な競争力である「高い教育の質」に関する広報をより促進すべきである。

* 英国の学士課程進学への意志決定、影響及び進学ルートに関する事例の収集や順番付に対する、より実質的なプロセスを考えるべきである。

* 教育エージェントや教育アドバイザーに、より積極的に接触すべきである。学生の親に影響を与えるには長い時間がかかると思われるが、プロフェッショナル・アドバイザーは、英国の大学が提供する魅力の事例等に、迅速に反応する可能性が高い。

* 学士課程進学を考えている学生は、大学、キャンパス、学科、授業コースが提供できる学習体験の可能性について、明確な実情へのアクセスにますます期待を高めて来ている。英国の最も強い競争力である「教育の質」を、より洗練されたウェブやソーシャル・メディア・ネットワークを利用して、英国の学士課程が提供する真の深さを最も目立たせるようにすべきである。

* 学士課程留学生の大学、経済及びソフト・パワーへの長期的価値を考慮し、留学生が在学中にアルバイトができるようにすると共に、卒業後に英国で就職できる機会を提供する政策を考えるべきである。また、このような経済的価値に加え、留学生が卒業した後の就職機会を増やすと共に、地域社会への融合をも改善することになる。

* 留学生市場における主要な競合国では、大学入学前のパスウェイや学校(筆者注:英語学校や予備校等を指す。)を整備して、多くの留学生を集めるのに成功している。英国でも、このような重要な高等教育へのルートを強化すべきである。

* 英国の大学卒業者の大学院進学、雇用及びキャリアの進捗状況に関する、より包括的なデータの収集方法を検討すべきである。それによって、若い時に高等教育に何年もの投資することへのリターンを提示できるようになる。

8.筆者コメント

* 項目毎に分かれた満足度調査や大学を選択する際の要因調査の結果は、学生が留学先を選択するのに、どのような点を重視しているのかが分かり、参考になると思われる。

* 留学先の大学を決める際に、多くの国で「大学ランキング」よりも「その大学のウェブサイト」「家族」「友人」を最も重要な手段として挙げており、ウェブサイトのより一層の充実が重要である。

* 英国では大学ウェブサイトが最も有効である一方、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランド等では、教育エージェントや教育コンサルタントを重視する傾向がある。

* なお、今回のレポートは学士課程の留学生に焦点が当てられているが、英国の高等教育機関の学士課程と大学院課程に在籍する留学生は、EU域内及びEU域外を含み、2013・14年度では435,000名もおり、これは米国に次ぐ世界第2位の数である。

(参考資料: 英国大学協会UK Higher Education International Unit報告書
International Undergraduate Students: The UK’s Competitive Advantagepdf

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