レポート - 英国大学事情 -

2015年12月号「英国大学協会の組織と活動」

掲載日:2015年12月1日

英国在住約40年のフリーランス・コンサルタント山田直氏が、新しい大学の生き方を求め、イノべーション創出、技術移転などに積極的に取り組む英国の大学と、大学を取り囲む英国社会の最新の動きをレポートします。

今まで「英国大学事情」にて、英国大学協会(Universities UK)による各種の調査報告書を紹介してきたが、今月号では活発な活動を展開しているこの英国大学協会の組織と活動内容の概略を紹介する。

1. 沿革

  • * 1918年、英国の22の大学とカレッジの学長から成る非公式の団体The Committee of Vice-Chancellors and Principals of the Universities of United Kingdom (CVCP) が発足した。
  • * 1960年代に10大学が新設されると共に、10のカレッジも大学に昇格したこともあり、1980年代にはCVCPは47大学を代表する機関に成長した。
  • * 1992年の法改正によって、高等専門学校である多くのポリテクニックが大学に昇格したため、CVCPへの参加校は100を超えた。
  • * 2000年、CVCPは名称をUniversities UKに変更した。現在では英国の133の高等教育機関の学長(Vice-Chancellor又はPrincipal)が参加している。

2. 組織

* Universities UKは非営利の企業組織の形態を採っており、主に会員校からの会費と公的助成金によって運営されている。

【UK Board】

UK Boardのメンバーは会員によって選出され、President、3名のVice-President、Treasurer及びChairs of the Policy Networksの合計24名にて構成される。なお、PresidentにはUK Board メンバーを6名まで指名する権利がある。UK Boardは組織の最も重要な意思決定機関であり、年5回開催される。

【Executive Committee】

UK Boardのサブ・コミッティーであり、President、3名のVice-President及びTreasurerで構成される。Executive Committeeは年4回開催され、日常業務を統括するChief Executiveへの助言や支援等を行う。

【National Councils】

Universities UK内には、自治政府を持つスコットランドとウェールズをカバーする二つの独立したナショナル・カウンシルがあり、それぞれUniversities Scotland、Universities Walesと名付けられている。

【Members’Meetings】

Universities UKの全メンバーは年4回開催されるMembers’ Meetingに招かれ、その内の1回は9月に開かれるMembers’ Annual Conferenceである。

【The President】

PresidentはUniversities UKのメンバーによって選任され、任期は通常2年である。
PresidentはMembers’ Meeting、UK Board及びExecutive Committeeの議長を務める。

【The Chief Executive】

UK Boardによって任命され、Universities UKの運営業務の責任を負い、約120名のスタッフを指揮する。

【Universities UK office】

Universities UKには、以下の4つのグループがある。

  • Communications Group
    英国の大学のための各種キャンペーンを実施すると共に、各大学が実施する全国レベルの高等教育に関するキャンペーンを支援する。又、英国の大学システムに関する情報発信も行う。
  • Policy Group
    エビデンスに基づく分析や政策立案の他、高等教育に影響する広範囲にわたる政策や技術的課題への助言を行う。又、省庁、シンク・タンク、Universities UKのエージェンシーや専門分野グループを含む主要なステークホルダーとの連携を強化する役割を担う。その他、以下に述べる7つのPolicy Networkの運営も行っている。
  • Members Services
    Universities UKのメンバーに高品質なサービスを提供するための戦略の立案を主導すると共に、Executive Committee、UK Board及びMembers’ Meetingの運営事務局を務める。
  • Operations Group
    人事、財務・経理、情報技術を含む、Universities UKのサポート・サービスの全てを担当する。

Policy Networks

  • Universities UKには「学生」「研究」「助成」「イノベーションと成長」「国際」健康教育と研究」及び「長期戦略」の7つのPolicy Networkがあり、各ネットワークの長は最高機関であるUK Boardに直接報告する義務がある。
  • Policy Networkは主に学長によって構成され、必要に応じて専門家が参加する。
    当ネットワークはUniversities UKの政策立案を主導すると共に、大学が存在することの利益を広く社会に訴えるために外部機関との連携活動も行う。又、戦略的アライアンスを構築し、政府機関、専門家団体、産業界、その他の教育関連分野や国際組織との連携を強化する役割も担う。

3. 活動

3-1) 戦略計画

* 5年ごとに戦略計画(Strategic Plan※1)を決め、現在は2013年から2018年の5年間の戦略計画の期間中である。

* この戦略計画には、主に以下が含まれる。

  • 英国の大学分野の将来的課題に影響を与える。
  • 教育、研究とイノベーション、社会への貢献という大学の主要目的を支援する。
  • Universities UKメンバー及び英国の大学分野全体に卓越したサービスを提供する。
  • 有効的で効果的な組織を目指す。

※1 Strategic Plan

3-2) 政策と分析

* Universities UKの「政策・分析チーム」は、高等教育の将来的議題を形成し、それに影響を与えるため、広範囲でオリジナルな政策、研究及び分析プロジェクトを実施する。チームは、政府の政策への提言、広範囲なステークホルダーとの連携、高等教育分野が直面する最も重要な課題に関するエビデンス・ベースの報告書等を通じて、Universities UKの活動に最も有効なインパクトをもたらすことに重点を置いている。

* チームは「Public funding」「Student finance」「Research and innovation」「Immigration」「Health education and research policy 」「Globalisation」「Efficiency and modernisation」「Social mobility」「Regulation」「Security」等、長期と短期の広範囲な調査研究プロジェクトを主導する。

* チームは調査報告書、ブリーフィング、分析、政策ネットワーク・ミーティング、セミナー、カンファレンス、ラウンド・テーブル式討論会等を通じて、Universities UKメンバーや高等教育関係者に重要な政策課題を討議する機会を提供する。

3-3) キャンペーン

* Universities UKではメディア、国会、ブログやツィッター等のソーシャル・メディア等を通じて、メンバーのための各種キャンペーンを実施している。

* 最近のキャンペーンの事例としては、「Back Universities」「Universities for Europe」「Universities Week」「Value of UK universities」等が挙げられる。

3-4) 国会に対する活動

* 100名以上の英国下院議員の小選挙区内には大学が存在している上、地方と国の経済、ビジネス、学生、家族、大学スタッフに関する政策へのインパクトが大きいため、多くの下院議員が高等教育に直接的な関心を持っている。また上院議員の中にも、高等教育に関する専門知識を持つ議員も多い。

* 重要議案の討議に向けての情報提供や、メンバー大学や高等教育分野に影響を与える議案に関する下院・上院議員へのエビデンスやブリーフィングの提供を通じて、大学の利益が代弁されるような活動を行っている。

【All Party Parliamentary University Group (APPG)】

  • All Party Parliamentary University Group(APPG)※2は、国会議員と大学の代表者たちが、高等教育に関する意見交換を通じて相互理解を深めることを目的に、1994年に設立されたグループである。現在では250名を超える超党派の国会議員が参加しており、国会内でも最大のグループの一つに発展した。メンバーは英国の大学の代表者たちと下院・上院議員にて構成される。
  • APPGは国会議員と大学代表者との相互理解を深めるため、定期的に国会内でのスピーカー・ミーティング、ディナー又はブレックファースト・ミーティングを行っている。ゲスト・スピーカーには、高等教育分野又は産業界のリーダーが招待される。

※2 All Party Parliamentary University Group

3-5) イベント

* Universities UKは1年を通して、様々な分野のパートナーと共に多くのイベントを開催している。以下は2015年1月から2015年6月までの半年間に開催されたイベント※3である。

  • 2015年1月
    「Strategic Fundraising for Leaders in Higher Education」
  • 2015年2月
    「Developing your Access Agreement 2016-17」
    「Student Mental Wellbeing : Policy, Practice and Future Directions」
  • 2015年3月
    「4th Annual Efficiency in Higher Education Conference」
    「International Higher Education Forum 2015」
    「Your student financial support model and its contribution to access, retention and success」
    「Powering the knowledge economy : universities cities and innovation」
    「2015 Election Hustings for Higher Education」
  • 2015年6月
    「Implementing the new Prevent statutory duty : understanding expectation and ensuring compliance」
    「Universities UK workshop on implementing the Competition and Market Authority (CMA) advice」
    「Enhancing the international student experience」

※3 Universities UK「Past events

5. 財務

* 以下は、Universities UKの「2014年度Annual Report & Financial Statements※4」より抜粋したものである。

【2014年度収入】単位: ポンド
メンバーシップ会費 6,219,344 (11億8,168万円※5)
助成金及び契約 4,191,968 (7億9,647万円)
カンファレンス 486,486 (9,243万円)
その他 1,616,547 (3億714万円)
合計 12,514,345 (23億7,773万円)
  • 「助成金及び契約」収入の内、最も額が多いトップ3はHEFCEからの約2億2,310万円、Health Education Englandからの1億6,720万円、保健省からの1億1,400万円である。この他、スコットランドやウェールズの高等教育ファンディング・カウンシル、ビジネス・イノベーション・スキルズ省、リサーチ・カウンシルUK、ブリティシュ・カウンシル等、多くの公的機関からも助成金を受けている。
【2014年度支出】単位: ポンド
研究、政策 4,733,288 (8億9,932万円)
ロビー活動等 3,116,473 (5億9,213万円)
情報発信 2,559,074 (4億8,622万円)
カンファレンス 149,407 (2,839万円)
その他 1,081,588 (2億550万円)
合計 11,639,830 (22億1,157万円)
  • 上記の内、人件費は約半分の11億5,480万円である。スタッフ数は平均119名で、その内、ロビー活動等担当は35名、研究・政策担当35名、情報発信担当30名である。

※4 Universities UK「Annual Report And Financial Statements 2014

※5 1ポンドを190円にて換算

6. 筆者コメント

  • * 今まで、「英国大学事情」ではイングランド高等教育ファウンディング・カウンシル(HEFCE)の調査報告書と共に、英国大学協会(Universities UK)の調査報告書を多く取り上げてきた。
  • * 両機関による調査報告書はその内容が多岐にわたり、かつ非常に興味深いためである。
    その上、調査報告書の数が多く、精力的な活動をしていることがうかがえる。今回の「英国大学事情」は、多くの報告書を発表しているUniversities UKがどのような体制でこれだけの活動をしているのかを知りたいと思い立ち、調べてみた結果である。
  • * 収入面では、約24億円の年間収入の内、会費収入が約半分を占めているが、約3分の1が公的機関等からの助成金である。支出面では約半分が人件費である。
  • * スタッフ数は総勢約120名、ロビー活動等の担当者は35名、研究・政策担当者35名、情報発信担当者30名と、かなり体制が充実していると感じた。その上、調査報告書の作成には、必要に応じて外部コンサルタントへの委託もしており、このような充実した体制の下に、多数の興味深い報告書を公表していることが分かった。また、ロビー活動の活発さにも感心した。それだけ、大学の果たす役割を広く社会に発信し、理解を求めることの重要性を認識しているのであろう。

(参考資料 Universities UK)

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