レポート

英国大学事情—2015年8月号「大学の教職員と学生の年齢、性別の平等性と多様性」<HEFCE/HESA資料「Equality and Diversity data tables: Staff and student profiles」より>

2015.08.03

山田直 氏 / 英国在住フリーランス・コンサルタント

 英国在住約40年のフリーランス・コンサルタント山田直氏が、新しい大学の生き方を求め、イノべーション創出、技術移転などに積極的に取り組む英国の大学と、大学を取り囲む英国社会の最新の動きをレポートします。(毎月初めに更新)

 2015年5月、イングランド高等教育ファンディング・カウンシル(HEFCE)は、高等教育統計局(Higher Education Statistic Agency:HESA)の資料を基に、イングランド地方の大学の教職員と学生の平等性と多様性に関する調査資料「Equality and Diversity data tables: Staff and student profiles」※1 を発表した。

 この調査資料では、教職員や学生の年齢グループ、性別、人種等に関するデータが公開されているが、その中から教職員と学生の年齢と性別に関するデータのみを抜粋・編集して紹介する。なお、これらのデータは、HEFCEが所管するイングランド地方の大学のデータのみで、スコットランド地方等の大学のデータは含まれていない。

※1http://www.hefce.ac.uk/data/Year/2015/eddata/Title,104183,en.html

1. 教職員の年齢グループ別データ

【筆者注】1992年はポリテクニックと呼ばれた多くの高等専門学校が大学に昇格した年であり、「Pre92」とは1992年以前に設立された高等教育機関、「Post92」は1992年以降に大学に昇格または新設された高等教育機関を指す。

2. 教職員の性別データ

3. 学生の年齢グループ別データ

【筆者注】

  • 「成人学生」とはmature studentの和訳である。イングランド地方の学士課程は通常3年であるため、21歳までに学士課程を卒業する学生が多い。また、英国では、Gap Yearと称して、高校卒業後、すぐに大学に進学せずに1年間ほどボランティア活動や旅行をする若者もいる。「成人学生」の約40% が30歳以上で、仕事や家族を持っている者や勤務先の奨学金によって勉学に励んでいる者もいる。なお、2012・13年度および2013・14年度には学生数が減少傾向にあるが、一時的に授業料の大幅値上げが影響したものと思われ、現在は回復基調にある。
  • 継続教育カレッジ(further education college)は、卒業時にHigher National Diploma等のアカデミックまたは職業に関連した資格証書であるディプロマを授与している。また、1年間の大学院教職課程も提供しており、初等中等学校の教員を目指す学生にはPostgraduate Diploma in Education (PGDE)や大学教員を目指す者にはPostgraduate Certificate in Higher Education という資格も与えている。

4. 学生の性別データ

5. 筆者コメント

  • 2013・14年度において、若手アカデミック・スタッフ数の比率が多い学問分野のトップ5は、「化学・材料」、「スポーツ科学」、「物理・天文学」、「地球、海洋環境科学」、「心理学」である。「化学・材料」では30歳以下のアカデミック・スタッフ数が20% 、39歳以下では57% 、「スポーツ科学」では30歳以下が20% 、39歳以下が56% 、「物理・天文学」では30歳以下が17% 、39歳以下が53% とアカデミック・スタッフの若年化が進んでいるようである。
  • 2013・14年度において、女性のアカデミック・スタッフ数の多い学問分野のトップ5は、「看護学」、「現代言語(欧州)」、「教育学」、「心理学」「現代言語(極東、アジア、アフリカ)」である。「看護学」では71% 、「現代言語(欧州)」66% 、「教育学」63% 、「心理学」63% 、「現代言語(極東、アジア、アフリカ)」58% が女性アカデミック・スタッフである。
  • 2013・14年度において、イングランド地方の大学学長の19% 、教授職の23% 、上級専門職であるマネージャーやディレクターの56% が女性であるのは興味深い。女性の社会進出を後押しする世論も強く、今後、これらの比率は少しずつ増えていく可能性がある。
  • 2013・14年度において、英国・EU出身のフルタイム学士課程学生の55% 、大学院課程学生の58% が女子学生であり、近年、この傾向が継続している。

(参考資料 HEFCE/HESA)
http://www.hefce.ac.uk/data/Year/2015/eddata/Title,104183,en.html

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