レポート - 英国大学事情 -

2014月9年号「HEFCE Revolving Green Fund」

掲載日:2014年9月1日

英国在住約40年のフリーランス・コンサルタント山田直氏が、新しい大学の生き方を求め、イノべーション創出、技術移転などに積極的に取り組む英国の大学と、大学を取り囲む英国社会の最新の動きをレポートします。(毎月初めに更新)

 

イングランド高等教育助成会議(HEFCE)は2014年6月、Revolving Green Fund(RGF)の第4次公募を発表した。この助成ファンドは、イングランド地方の高等教育機関の炭素排出量の削減と、それに伴う経費削減のプロジェクトを助成するため、HEFCEが2008年に始めた助成プログラムである。今回の第4次の助成プログラムは、総額3,400万ポンド(58億円(*1) )の規模となる。

このRGFによる助成の特徴の一つは、公的機関のエネルギー消費の効率化を目的とするために設立された公的金融機関であるSalix Finance Ltd. と提携して、無利子のローン形式を採用しており、大学は一定期間中に分割払いで助成金を返済するシステムにある。

HEFCEは2008年から3回、RGFの公募助成を実施してきており、今後も継続する予定である。そのため、第4次公募を前に外部のコンサルタント企業であるBlue Alumni社に今までのRGFプログラムの評価を委託し、2014年6月にその評価報告書「Evaluation of Rounds 1 to 3 HEFCE’s Revolving Green Fund 」が公表された。

今月号の「英国大学事情」では、HEFCEの資料と当評価報告書を参考にして、Revolving Green Fundの概要を紹介する。



  *1. 1ポンドを170円にて換算

 

【1. 第1次公募(2008・09年度) 】


dot   HEFCEから2,000万ポンド(34億円)、Salix Financeから1,000万ポンド(17億円)、合計3,000万ポンド(51億円)の助成額。
dot   2種類のプログラムがある。一つは1,000万ポンドの助成による大型プロジェクト向けの「Transformational Fund」、もう一方は2,000万ポンドの小型プロジェクト向けの「Institutional Small Projects Fund」。

【Transformational Fund】

3大学のプロジェクトに、合計1,000万ポンド(17億円)が助成された。
  • イースト・アングリア大学
    ノーウィッチ・キャンパスにバイオマス・エネルギー・センターを設置するプロジェクト。イングランド地方で最初のバイオマス・ガス化コジェネレーション(CHP)施設の建設プロジェクト。
  • ハーパー・アダムス・ユニバーシティー・カレッジ
    嫌気性微生物の消化活動を利用し、農場廃棄物や食品廃棄物から再生エネルギーを生産するプロジェクト。
  • ランカスター大学
    電力消費によるCO2排出量の削減、輸入電力への依存の低減、気候変動への世界的脅威や資源枯渇への対応などに取り組むプロジェクト。
※ 上記の3大学は、RGFからの助成金に各大学の自己資金を拠出して、合計910万ポンド(15億4,700万円)の追加投資を行った。

【Institutional Small Projects Fund】

合計57の高等教育機関の小規模プロジェクトが、合計2,000万ポンド(34億円)の助成を受けた。

 

【2. 第2次公募(2011・12年度) 】


dot   合計1,080万ポンド(18億円)が、以下の4つの大型プロジェクトを含む27プロジェクトに配分された。
  • ブラッドフォード大学
    図書館のエネルギー消費を削減するプロジェクト。
  • ダービー大学
    キャンパス内の蛍光灯をLEDに取り換えた上、明かりが必要な時だけ点灯するコントロール装置も取り付けるプロジェクト。
  • エクセター大学
    1960年代にキャンパス内に建造されたCornwall House内部に使用されている建材の改良、電力消費メーターの取り付けや空調施設の改良など、12項目の改修を実施し、エネルギー消費の削減を図るプロジェクト。
  • プリマス大学
    情報通信技術(ICT)と建物のエネルギー管理システム(BEMS)を統合した、世界で初めてのシステムの構築プロジェクト。当プロジェクトの目的は、同大学のエネルギーの消費や行動への意識を変革することにある。

 

【3. 第3次公募(2012・13年度) 】


dot   合計2,000万ポンド(34億円)が43大学に配分され、37の小規模プログラムと、以下のような10件の大規模プロジェクトに活用された。LED照明の採用が一番ポピュラーなプロジェクトであり、その次が配管パイプへの断熱処置であった。このRGF3の助成によって、年間約2万トンのCO2排出量の削減が期待されている。

大学 プロジェクト
Anglia Ruskin 熱分配システムの集中化とCHPシステムの導入
Birmingham CHPガスタービンのアップグレード化
Chester 小規模水力発電
Cranfield 既存の地域暖房へのバイオマス・ボイラーの導入
Liverpool 1950-60年代の建物に使用されている建材などの改修
London Metropolitan 1960年代の建物の改修(二重窓ガラス、LED照明などの導入)
Plymouth 地域暖房のためのCHPと太陽熱発電の統合
Winchester 1960年代の建物の改修(被覆材、窓ガラス、LED照明、太陽電池など)
West of England 建物の改修(建材、太陽電池、ヒート・ポンプ、LED照明などの導入)
York 既存の地域暖房の効率化

 

【4. 第4次公募(2014・15年度) 】


dot   2014年6月、第4次公募が発表された。今回の助成額は、今までで最大の3,400万ポンド(58億円)となった。応募締め切りは2014年10月。
dot  当ファンドは、以下の二つの分野への助成を行う。
  • エネルギー効率化のための小規模プロジェクト
  • 機械設備や建物の改造、新技術の採用、スペースの合理化などの大規模プロジェクト
dot   水利用の管理への関心の高まりと有効な管理で水の使用量を大幅に改善できることから、第4次公募には水利用の削減プロジェクトも含まれることになった。

 

【5. Revolving Green Fundに対する外部評価 】


dot   2014年6月にHEFCEが公表した外部評価報告書「Evaluation of Rounds 1 to 3 HEFCE’s Revolving Green Fund」の中から、一部を抜粋して紹介する。

【評価サマリー】

dot   2005年から2012年にかけて、イングランド地方の高等教育機関はCO2排出量を5%(104,623トン)削減した実績がある。これは高等教育分野が設定した2020年の削減目標値の約12%に相当する。
dot   RGFプロジェクトは、CO2排出量を年間103,000トン削減すると予測されている。これは2020・21年度のCO2削減目標の約12%である。RGFプロジェクトによるCO2排出量の削減量は、高等教育機関が上記のように既に達成した削減量と多少重複する部分もあるが、ほとんどは追加的削減である。
dot   RGFは、高等教育機関による経費の削減とCO2 排出量の削減を支援するため、今までの3回の公募によって合計6,120万ポンド(104億円)の資金助成(ローン)を行ってきた。
dot   今までの3次にわたる公募の全プロジェクトが完了した場合、RGFプロジェクトは年間約1,900万ポンド(32億円)の経費削減が期待されており、高等教育機関はこの節減した資金を教育、研究および知識交流活動などに回すことができるであろう。
dot   2010年度に行われた外部評価時のRGFによるCO2排出量削減予測は45,353トンであったが、現在では103,318トンと大幅に削減予測が改善されている。
dot   RGFに応募経験がある、またはRGFからの助成を受けたことがある高等教育機関は、RGFに全く関わらなかった高等教育機関に比べて、平均で7~10%多くのCO2排出量削減を達成している。
dot   RGFは、大学のシニア・マネージメント層にCO2排出量削減活動への意識を高め、CO2排出量削減プロジェクトの実現に導いたといえる。また、RGFからの助成金に追加して大学自身の資金2,390万ポンド(41億円)の投資ももたらしている。
dot   第3次RGFに応募した高等教育機関の90%が次回のRGFに再度応募したいと回答した。また、全高等教育機関を対象としたアンケート調査では、57%が次回のRGFにおそらく応募すると答え、前回のアンケート調査時の40%から増えている。
dot   第3次RGFに応募した高等教育機関の10%(7大学)が、次回RGFの大規模プロジェクトに応募すると回答した。28%(20大学)は小規模プロジェクトに、30%(21大学)は、両方のプロジェクトに応募したいと答えた。

【今後のRFGに対する高等教育機関からの提案】

dot   広報活動と知識の共有の改善(高等教育分野のエネルギー担当マネージャー間の知識共有の促進)
dot   CO2削減への大学の資金計画を進めるためにも、今後のRFGの継続性に関する、より明確な情報の提供が必要。また、より長い応募期間とプロジェクト実施期間がベター。
dot   助成形態をローンから返済義務のないグラントへの変更。大型プロジェクトに対するより大型の助成。CO2削減をしない高等教育機関への助成金削減などのペナルティーの導入。
dot   多くの高等教育機関に刺激を与えると共に知識を共有するために、より多くのCO2排出量削減策の事例の創出と紹介等。

【サマリー表】

  プロジェクト数 プロジェクト費用 CO2年間削減 年間節減額
公募 アンケート調査に回答を寄せた高等教育機関
第1次 1,412件 £28,001,480
(47億6020万円)
56,562トン £7,888,250
(13億4,100万円)
第1次 55件 £9,127,130
(15億5,160万円)
10,622トン £1,727,318
(2億9,360万円)
第3次 125件 £16,174,527
(27億4,970万円)
17,197トン £3,612,649
(6億1,420万円)
合計 1,592件 £53,303,137
(90億6,150万円)
84,381トン £13,228,217
(22億4,880万円)
  1次から3次までの公募に採用された全プロジェクト
合計 2,104件 £85,106,551
(144億6,800万円)
125,998トン £21,202,251
(36億440億円)
イングランドの全大学に占める割合 76% 63% 67% 62%

 

【6. 筆者コメント 】


dot   このRevolving Green Fundは、大学によるCO2排出量を削減して環境への負荷の軽減を図ると共に、それに伴って生じる経費削減を目指した助成制度である。上記の表のように、第1次から第3次までの全プロジェクトが完了した際には、総費用145億円に対して年間36億円の経費削減が期待されており、費用効果の高い助成制度と感じる。
dot   この助成ファンドは助成金の交付ではなく、無利子のローン形式であり、大学には返却義務があることに特色がある。それにもかかわらず、このRGFには2,100件という多くのプロジェクトが採択されて人気のあるプログラムとなっており、大学自身も2,390万ポンド(41億円)の追加投資を行っているのは注目されよう。これは、各大学がさまざまなCO2排出策を採ることによって、経費も節減できるということを実感しているからであろう。
dot   英国政府は2004年、公的機関でエネルギー効率の改善とCO2排出量の削減を目指すプロジェクトに無利子の資金を貸与する、専門の公的金融機関としてSalix Finance Ltd.を新設した。
dot   多くの公的機関は、エネルギー効率を高めるための新技術の導入がCO2排出慮の削減や経費削減に効果的であることは理解しているが、多くの場合、初期投資額がネックとなっていた。この問題を解決するために、Salix Finance が設立された。
dot   Salix Financeは2004年の設立以来、851の公的機関による12,000件を超えるプロジェクトに総額3億280万ポンド(515億円)の無利子のローンを提供してきた。これらの資金助成は、公的機関に年間8,200万ポンド(140億円)、プロジェクトのライフタイムでは11億3,000万ポンド(1,920億円)の節減をもたらすと推測される。
dot   将来的には、これらのプロジェクトは公的機関によるCO2排出量を年間466,190トン削減し、プロジェクトのライフタイムでは620万トンに上るCO2の削減につながると期待されている。

(参考資料:HRFCE
http://www.hefce.ac.uk/whatwedo/lgm/sd/rgf/
http://www.hefce.ac.uk/media/hefce/content/pubs/indirreports/2014/evaluationofrgfrounds1to3/2014_rgf1to3.pdf pdf
http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2009/news62152.html
http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2014/news87476.html )

 

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